【動画公開】イントロダクション

筑波大学計算科学研究センターでは、ハードウエアからソフトウエア、アルゴリズム、プログラミングの研究を行う計算機科学、データやメディア処理の研究を行う情報科学、計算を用いて物理・生命・地球環境といった科学の研究を行う計算科学、多様な研究者が分野を超えて協同で研究を行っています。
こうした8つの研究部門の研究テーマについて紹介する動画を制作し、YouTubeチャネルにて公開しました。

光合成を止(や)めた藻類の100年の謎解く全ゲノム解読に成功

―「植物-(ひく)光合成=動物」ではない―

2022年4月26日

国立大学法人 京都大学
国立大学法人 筑波大学
独立行政法人 国立科学博物館
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所

概要

光合成は光エネルギーを利用して生きていくことができるため便利だろうと考えられていますが、実際には進化の過程で光合成を止めた「元」植物や「元」藻類が数多く生息しています。また、それらの多くは光合成をしない葉緑体を維持したままです。

京都大学大学院農学研究科 神川龍馬 准教授、筑波大学計算科学計算センター 中山卓郎 助教、国立科学博物館動物研究部 谷藤吾朗 研究主幹、国立遺伝学研究所 中村保一 教授らの共同研究グループは、地球全体の光合成の約20%に貢献すると言われる珪藻の中で、光合成を止めた種の全ゲノム解読に成功しました。この種は光合成をしない代わりに環境中に溶存する栄養分を吸収して生育していますが、その詳細なメカニズムはわかっていませんでした。本研究では全ゲノム解読に加え、機能している遺伝子を網羅的に検出するトランスクリプトーム解析や生化学実験などを用いた多角的な研究により、本種が光合成を止めた後も葉緑体での物質生産を維持しつつ、周りの養分を効率よく獲得するための能力を増大させていることが明らかとなりました。これは一般的な植物や藻類とも、そして動物とも異なる能力をもつことを意味します。光合成を止めた本種の全ゲノム解読は地球上で起きてきた生物進化の一面を解き明かすとともに、生物にとって光合成とは何かをひも解く鍵となることが期待されます。

本成果は、2022年4月29日(現地時刻)に米国の国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載されます。

 

光合成を止(や)めた珪藻のゲノムから明らかになった細胞機能。葉緑体内で物質生産をしながらエネルギー源などは外部から得る(右)。光合成する珪藻(左)のエネルギー源は光であり、植物同様葉緑体内で様々な物質を産生する・シリカは珪藻の細胞壁の主成分。

 

プレスリリース全文はこちら

Proposal of two new eukaryotic groups: Pancryptista and the CAM clade

April 15, 2022
JAMSTEC
University of Tsukuba

 

1. Key Points

◆ Based on large-scale molecular phylogenetic analysis of major eukaryotes and protists with uncertain taxonomic affiliation, “Pancryptista” has been proposed as a new, large, eukaryotic group.

◆ Pancryptista is a sister group of Archaeplastida *1, which consists of organisms with double-membrane-bound chloroplasts. They are collectively called as the “CAM clade”, a new mega-scale eukaryotic group.

◆ The monophyly*2 of Archaeplastia was rarely reconstructed, because of the specific evolutionary signal of some members of Pancryptista.

2. Overview

Akinori Yabuki (Senior Researcher, Deep-Sea Biodiversity Research Group, Marine Biodiversity and Environmental Assessment Research Center, Research Institute for Global Change, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology), after collaboration with Euki Yazaki (Special Researcher, Institute of Physical and Chemical Research) and Yuji Inagaki (Professor, University of Tsukuba), has performed large-scale molecular phylogenetic analysis of major eukaryotes and protists with uncertain taxonomic affiliation and has proposed a new, large, eukaryotic group.

Eukaryotes are organisms whose cells contain structures such as nuclei and mitochondria. They constitute the taxon Eukaryota, which includes multicellular eukaryotes (e.g., humans). Eukaryotes evolved approximately 2.1 billion years ago, and through evolution, they have branched into various lineages. Research is focusing on the taxa that branched off during the relatively early stages of evolution in an attempt to unravel many uncertainties regarding the evolution of eukaryotes, especially with respect to the groups that formed during the early stages of evolution.

In this study we focused on Microheliella maris, a species that has not yet been positioned phylogenetically within Eukaryota despite being formally described in 2012. This study is expected to offer valuable information about the early stages of eukaryotic evolution. The goal of the study was to elucidate the phylogenetic positioning of M. maris and to assess the relationship with closely related lineages.

The results found that M. maris is related to Cryptista and it is proposed that Cryptista and M. maris should be combined to form a new large group called Pancryptista. In addition, it was turned out that Pancryptista is a sister group of Archaeplastida. They should be collectively called as CAM-clade, as a new mega-scale eukaryotic group. Further, by accurate evaluation and analysis of a phylogenetic signal possessed by M. maris and other early-diverging lineages, it was confirmed for the first time that Archaeplastida is monophyletic. Based on various data, Archaeplastida was previously believed to have a single origin, but its monophyly has been rarely demonstrated by previous molecular phylogenetics.

It is anticipated that the eukaryotic phylogenetic divergence and relationships proposed in this study will serve as fundamental data for understanding how eukaryotes evolved and diverged in response to a range of environmental changes.

The findings of this study were presented in Open Biology on April 13 (Japan time).

Title: The closest lineage of Archaeplastida is revealed by phylogenomics analyses that include Microheliella maris.
Authors: Euki Yazaki1, Akinori Yabuki2, Ayaka Imaizumi3, Keitaro Kume4, Tetsuo Hashimoto5, 6, and Yuji Inagaki6, 7
Affiliation:
1. RIKEN iTHEMS
2. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology
3. College of Biological Sciences, University of Tsukuba
4. Faculty of Medicine, University of Tsukuba
5. Faculty of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba
6. Graduate School of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba
7. Center for Computational Sciences, University of Tsukuba
DOI: https://doi.org/10.1098/rsob.210376

 

【Supplemental information】
*1: Archaeplastida
A taxon composed of (i) green plants, including algae such as Chlorella, and land plants; (ii) red plants, including algae such as Neopyropia tenera (Japanese nori seaweed), and the related predatory flagellates; and (iii) glaucophytes. The common ancestor of Archaeplastida is believed to have obtained chloroplasts by endosymbiosis of cyanobacteria.
*2: Monophyly
This refers to all species that have diverged from a single common ancestor.

 

Contacts:

(For this study)
Akinori Yabuki, Senior Researcher, Research Institute for Global Change (RIGC), Marine Biodiversity and Environmental Assessment Research Center (BioEnv), Deep-Sea Biodiversity Research Group (DeepBio), JAMSTEC
(For press release)
Press Office, Marine Science and Technology Strategy Department, JAMSTEC
Bureau of Public Relations and Strategy Center for Computational Sciences, University of Tsukuba

 

JAMSTEC web page

科学技術週間に合わせた動画公開 [4/24まで]

筑波大学では、例年「キッズユニバーシティ」と題した一般公開を行なっておりますが、本年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、対面での一般公開は行わず、動画の配信を行います。
本学の様々な研究を紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
計算科学研究センターからも動画を掲載しています。


録画配信期間:令和4年4月18日(月)~4月24日(日)

https://scpj.tsukuba.ac.jp/news/220317.php

学生インタビュー vol.5公開

計算科学研究センター(CCS)所属教員が指導する研究室の学生へのインタビュー「CCSで学ぶ」に「vol.5 工藤 玄己さん(関連部門:生命科学研究部門 生命機能情報分野)」を公開しました。

「研究者に聞く – CCSで学ぶ」

「vol.5 工藤 玄己さん(関連部門:生命科学研究部門 生命機能情報分野)」

【CCSで学ぶ】 工藤 玄己さん

工藤 玄己(Genki KUDO)さん

 

理工情報生命学術院 数理物質科学研究群 物理学学位プログラム 生命物理研究室 博士前期課程
生命物理研究室 2年

 

(内容は、2022年3月取材当時のものです。)


工藤さんは、筑波大学 理工学群 物理学類在籍時に生命物理研究室に入り、重田育照 教授の指導のもとで研究を続けています。

今の研究室に進んだ理由

物理学がすごく得意、というわけではなくて、むしろ化学であったり生物学であったりというものの融合した分野にすごく興味がありました。今所属している生命物理研究室は、生物の機能を担う「タンパク質」などについて、量子論や古典力学に基づく計算をすることで、分子や原子のレベルで生体の反応の仕組みを解き明かそうとしている研究室なので、自分の興味とも非常にあっていると思って選びました。

 

どんな研究をしているの?

スーパーコンピュータを使いながら、薬を作る創薬研究というものをおこなっています。創薬研究というと、実験で試験管とかを使いながらやるイメージが強いと思うのですが、私の場合はコンピュータを使ったシミュレーションで創薬研究をしています。具体的にいうと、薬はタンパク質にくっつくことで作用するのですが、薬がどこの部位にくっつくのかを予測するようなソフトウェアについて、その精度を上げるための研究をしています。

研究風景 

こんなところが面白い!

今は医学の研究室と共同研究をおこなっています。筑波大学だといろいろな専門の方がいて、一緒にコラボレーションできるのが非常に魅力的だと感じています。また、日々いろいろな研究をしていて、少しずつでも新たな発見ができるというのはすごく魅力的ですね。

 

高校ではどんな勉強をしていたの?

基礎的な勉強を重視していました。応用問題を解くことも大事だと思うのですが、基礎的なことを100%理解することを大事にしていました。

 

メッセージ

大学に入ると、高校にはいなかったような人に出会えたりとか、自分で独り立ちして生活することになったりとか、自分の視野がすごく広がります。それを楽しみに、頑張ってください。

 

【CCSで学ぶ】一覧に戻る

 

↓ インタビュー動画もあります。

真核生物の新たな系統分類群「パンクリプチスタ」と「CAMクレード」を提唱

2022年4月15日

国立研究開発法人海洋研究開発機構
国立大学法人筑波大学

発表のポイント

  • 分類不明であった原生生物などの大規模分子系統解析から、真核生物の新規巨大生物群“パンクリプチスタ”を提唱した。
  • パンクリプチスタは、二重膜の葉緑体を持つ巨大生物群(=一次植物*1)の姉妹群であり、これら2つの生物群を合わせてメガ生物群“CAMクレード”と呼称することを提唱した。
  • 過去の研究で一次植物が単系統*2群を形成しなかった原因は、一部のパンクリプチスタが持つ特異な進化シグナルにあることを分子系統学的に解明した。


2.概要

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和 裕幸、以下「JAMSTEC」という。)地球環境部門 海洋生物環境影響研究センター 深海生物多様性研究グループの矢吹 彬憲 主任研究員は、理化学研究所 矢﨑 裕規 特別研究員・筑波大学 稲垣 祐司 教授らと共同で、分類不明であった原生生物などの大規模分子系統解析を行い、真核生物の新たな巨大生物群を提唱しました。
 真核生物は細胞内に核やミトコンドリアなどの構造を有する生物で、我々ヒト(=多細胞性の真核生物)などを含む超巨大生物群です。真核生物はおよそ21億年前に誕生し、多様な系統へと枝分かれ進化してきました。この真核生物の進化、特に初期にどのようなグループが誕生・形成されたのか、については未だ多くの謎が残っており、それを解明するためのアプローチの1つとして真核生物進化の比較的初期に独立・分岐した生物に着目した研究が行われています。
 本研究では、2012年に新種記載されながらも真核生物内での系統学的位置がわかっておらず、真核生物の初期進化に関する重要な知見を持つと考えられていたMicroheliella marisに着目し、その系統学的位置の解明と近縁系統との関係の理解を目的とした解析を実施しました。
 その結果、M. marisクリプチスタと呼ばれる分類群の派生初期に分岐した近縁種であることが明らかとなり、これらをまとめて新規巨大生物群“パンクリプチスタ”と呼称することを提唱しました。また、M. marisや他の初期分岐系統が持つ系統シグナルを正しく評価し解析することで、これまで様々な知見から単一起源と考えられながらも分子系統学的にはその単系統が復元されていなかった一次植物が、単系統であることも世界で初めて確認しました。
 本研究で示された真核生物の系統分岐関係は、様々な地球環境変動の中で真核生物がどのように分岐し進化してきたのかを理解するための基盤的情報として活用されることが期待されます。
 本成果は、「Open Biology」に4月13日付け(日本時間)で掲載される予定です。

タイトル:The closest lineage of Archaeplastida is revealed by phylogenomics analyses that include Microheliella maris.

著者: 矢﨑 裕規1, 矢吹 彬憲2, 今泉 彩香3, 久米 慶太郎4, 橋本 哲男5, 6, 稲垣 祐司6, 7.

  1. 国立研究開発法人 理化学研究所 数理創造プログラム
  2. 国立研究開発法人 海洋研究開発機構 地球環境部門
  3. 筑波大学 生命環境学群 生物学類
  4. 筑波大学 医学医療系
  5. 筑波大学 生命環境系
  6. 筑波大学 生命環境科学研究科 生物科学専攻
  7. 筑波大学 計算科学研究センター
図:今回の解析で明らかとなった真核生物系統の概要

 

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Associate Professor NAKAYAMA Takuro receives the Young Scientists’ Prize

The “Commendation for Science and Technology by the Minister of Education, Culture, Sports, Science and Technology”, from the science ministry MEXT, recognizes individuals who have produced outstanding results in research, development, and promotion of public understanding of science and technology.

This year’s awardees were announced on 8 April, and Associate Professor NAKAYAMA Takuro, belonging to CCS was selected for the Young Scientists’ Prize.

The award ceremony will take place on 20 April at MEXT and online.

【受賞】中山卓郎助教が令和4年文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞

生命科学研究部門の中山 卓郎助教が令和4年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞されました。

受賞業績名:微生物共生性シアノバクテリ アの進化と多様性に関する研究

表彰式は4月20日に文部科学省3階 講堂及びオンラインで開催され、後日その様子がYouTubeに掲載される予定です。

 

関連URL(文部科学省 令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者等の決定について)https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00989.html

 

 

【動画公開】計算メディカルサイエンス 研究紹介3&4

筑波大学計算科学研究センターでは、最先端の計算科学を医学と連携させる新たな取組みとして「医計連携」を創出する「計算メディカルサイエンス事業」を推進しています。

本動画では、計算メディカルサイエンス事業の4つのプロジェクトチームのうち、(3) 3D Surgical Vision および (4) 計算光バイオイメージングについて、その研究の内容と最新の成果を紹介しています。

 

『3D Surgical Vision 』プロジェクトチーム

 

『計算光バイオイメージング』プロジェクトチーム

第11回JCAHPCセミナー (OFP運用終了記念シンポジウム)「ありがとうOFP:京から富岳への狭間で咲いた大輪の花」

最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC: Joint Center for Advanced High Performance Computing)筑波大学計算科学研究センター東京大学情報基盤センターが共同で2013年に設立しました。 JCAHPCでは国内最大級の計算性能を有するOakforest-PACSシステム(OFP)を設計、導入し、2016年10月より共同で運用を開始して以来、最先端の計算科学を推進し、我が国と世界の学術及び科学技術の振興に寄与してまいりました。 JCAHPCはHPCIシステム構成機関として「新型コロナウイルス感染症対応HPCI臨時公募課題」 に計算資源を提供し、新型コロナウイルス感染症に関する研究推進に貢献しました。 OFPは運用開始直後の2016年11月のTOP500で「京」を上回り,国内最高性能を達成し,更に2019年8月末の「京」運用停止後,2021年3月に「富岳」が正式に稼働を開始するまでの約1年半の間,実質的にNational Flagship Systemとしての役割を果たしました。

さて,OFPも2022年3月31日を以て運用を終了いたします。本セミナーではJCAHPC設立,及びその準備段階からの10年あまりを振り返るとともに,将来へ向けた展望も紹介いたします。 JCAHPCを構成する筑波大・東大センター教員とそのOBの他,OFPと同じIntel Xeon Phi搭載システムを運用する北大・京大センター教員の皆様,OFPのヘビーユーザーの皆様からの講演も予定しております。OFP後継機(OFP-II),筑波大・東大各センターとしての将来計画の他,次世代先端的計算基盤の開発に向けたコミュニティ活動であるNGACI(Next-Generation Advanced Computing Infrastructure)についてもご紹介いただきます。

皆様とともに,OFPの功績を振り返り,日本と世界のHPCの将来へ向けた議論ができればと考えております。
オンラインではありますが,是非とも多くの皆様にご参加いただきたく,よろしくお願いいたします。

第11回JCAHPCセミナー

日時:2022 年 5 月 27 日(金)(13 : 00 〜 17 : 50)
形態:オンライン
主催:最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)
共催:筑波大学計算科学研究センター,東京大学情報基盤センター
参加費:無料,「事前参加登録」をお願いいたします。

参加申込

申込フォーム

※必ず事前登録をお願いいたします(セミナーの前日まで受け付けます)

プログラム

【第1部】開会
 座長:田浦健次朗(東京大学情報基盤センター/JCAHPC)

13:00 – 13:05 開会
13:05 – 13:20 来賓等挨拶(ビデオレター)

【第2部】OFP概要
 座長:建部修見(筑波大学計算科学研究センター/JCAHPC)

13:20 – 13:40 佐藤三久(理化学研究所計算科学研究センター)
JCAHPC設立と理念
13:40 – 14:00 朴泰祐(筑波大学計算科学研究センター/JCAHPC)
OFPの概要と導入について
14:00 – 14:15 深沢圭一郎(京都大学学術情報メディアセンター)
Camphor2:OFPと同じXeon Phi KNLを搭載し,OFPより少し長く運用される
京都大学スパコン
14:15 – 14:30 岩下武史(北海道大学情報基盤センター)
北大スパコン Polaire ー設計思想と活用研究ー
14:30 – 14:45 (ディスカッション)

【第3部】OFPによる成果
 座長:高橋大介(筑波大学計算科学研究センター/JCAHPC)

14:55 – 15:15 中島研吾(東京大学情報基盤センター/JCAHPC)
Oakforest-PACSによる研究成果の概要
15:15 – 15:35 三好建正(理化学研究所計算科学研究センター)
世界初リアルタイム30秒更新ゲリラ豪雨予測実験
15:35 – 15:55 井戸村泰宏(日本原子力研究開発機構(JAEA))
Oakforest-PACSにおける大規模CFD解析向け省通信型行列解法の開発

【第4部】次の一手
 座長:中村宏(東京大学情報基盤センター/JCAHPC)

16:05 – 16:25 朴泰祐(筑波大学計算科学研究センター/JCAHPC)
筑波大学におけるビッグメモリスーパーコンピュータの導入
16:25 – 16:45 中島研吾(東京大学情報基盤センター/JCAHPC)
東京大学情報基盤センターの現状と今後の計画
16:45 – 17:05 近藤正章(慶應義塾大学/理化学研究所計算科学研究センター)
次世代先端的計算基盤の開発に向けたNGACIでの取り組み
17:05 – 17:25 塙敏博(東京大学情報基盤センター/JCAHPC)
Oakforest-PACS IIに向けて
17:25 – 17:40 中村宏(東京大学情報基盤センター/JCAHPC)
(ディスカッション)
17:40 – 17:45 石川裕(国立情報学研究所(NII))
OFP運用終了に当たって
17:45 – 中村宏(東京大学情報基盤センター/JCAHPC)
閉会あいさつ

 

本セミナーの問い合わせ先

東京大学 情報基盤センター

中島研吾(幹事)
E-mail:nakajima@cc.u-tokyo.ac.jp
(”@”を半角にしてからお送りください。)

 

2021 CCS-EPCC Workshop

Date: March 30th (Wed) – 31st (Thu), 2022 5:00pm-9:00pm(JST)/9:00am-1:00pm(BST)
Venue: Online

DAY-1 (March 30th)

JST BST Talk title Presenter
17:00-17:20 9:00-9:20 Tsukuba overview Taisuke Boku
17:20-17:40 9:20-9:40 Big Memory Supercomputer Cygnus-BD and Parallel Persistent Memory File System Osamu Tatebe
(Div. of High-Performance Computing Systems)
17:40-18:05 9:40-10:05 Investigating DAOS for HPC storage Adrian Jackson
18:05-18:30 10:05-10:30 Quarkonium spectral functions from lattice QCD Hiroshi Ohno
(Div. of Particle Physics)
18:30-18:40

10:30-10:40

Break  
18:40-19:05 10:40-11:05 Quantum computing at EPCC Oliver Brown
19:05-19:30 11:05-11:30 Computational Approach to the Mechanism of Proton Conduction Materials Yuta Hori
(Div. of Life Sciences)
19:30-19:40 11:30-11:40 MONC and FFTE: refactoring and optimisations  Juan Rodriguez Herrera 
19:40-19:55 11:40-11:55 Simulation and Machine Learning Integration 

Anna Roubickova
(SiMLInt, Physics)

19:55-20:20 11:55-12:20 Developments and applications of DFT+RISM hybrid simulation for electrochemistry Minoru Otani

DAY-2 (March 31st)

JST BST Talk title Presenter
17:00-17:25 9:00-9:25 EPCC and the UK Exascale Program Mark Parsons
17:25-17:50 9:25-9:50 Identification of a new normal in city-scale extreme precipitation under warmer climate regimes Quang-Van DOAN
(Div. of Global Environmental Science)
17:50-18:00 9:50-10:00 ASiMoV-CCS: a new code for CFD & combustion Michele Weiland
18:00-18:15 10:00-10:15   Counting Goldbach partitions fast:
Vectorising and distributing number-theoretic transforms on Arm-based
supercomputers
Ricardo Jesus
18:15-18:40 10:15-10:40 Vlasov Simulation of Cosmological Relic Neutrinos on Supercomputer Fugaku Kohji Yoshikawa
(Div. of Astrophysics)
18:40-18:50 10:40-10:50 Break  
18:50-19:15 10:50-11:15 Vipera: RISC-V computing and micro kernels Maurice Jamieson
19:15-19:40 11:15-11:40 Real-Time Analytics Over Out-of-Order Data Streams By Incremental Sliding-Window Aggregation Savong Bou
(Div. of Computational Informatics)
19:40-20:05 11:40-12:05 Morpheus: a library for efficient runtime switching of sparse matrix storage formats Chris Stylianou
20:05-20:30 12:05-12:30 Open discussions

2021 CCS-EPCC Workshop

Date: March 30th (Wed) – 31st (Thu), 2022 5:00pm-9:00pm(JST)/9:00am-1:00pm(BST)
Venue: Online

DAY-1 (March 30th)

JST BST Talk title Presenter
17:00-17:20 9:00-9:20 Tsukuba overview Taisuke Boku
17:20-17:40 9:20-9:40 Big Memory Supercomputer Cygnus-BD and Parallel Persistent Memory File System Osamu Tatebe
(Div. of High-Performance Computing Systems)
17:40-18:05 9:40-10:05 Investigating DAOS for HPC storage Adrian Jackson
18:05-18:30 10:05-10:30 Quarkonium spectral functions from lattice QCD Hiroshi Ohno
(Div. of Particle Physics)
18:30-18:40

10:30-10:40

Break  
18:40-19:05 10:40-11:05 Quantum computing at EPCC Oliver Brown
19:05-19:30 11:05-11:30 Computational Approach to the Mechanism of Proton Conduction Materials Yuta Hori
(Div. of Life Sciences)
19:30-19:40 11:30-11:40 MONC and FFTE: refactoring and optimisations  Juan Rodriguez Herrera 
19:40-19:55 11:40-11:55 Simulation and Machine Learning Integration 

Anna Roubickova
(SiMLInt, Physics)

19:55-20:20 11:55-12:20 Developments and applications of DFT+RISM hybrid simulation for electrochemistry Minoru Otani

DAY-2 (March 31st)

JST BST Talk title Presenter
17:00-17:25 9:00-9:25 EPCC and the UK Exascale Program Mark Parsons
17:25-17:50 9:25-9:50 Identification of a new normal in city-scale extreme precipitation under warmer climate regimes Quang-Van DOAN
(Div. of Global Environmental Science)
17:50-18:00 9:50-10:00 ASiMoV-CCS: a new code for CFD & combustion Michele Weiland
18:00-18:15 10:00-10:15 Counting Goldbach partitions fast:
Vectorising and distributing number-theoretic transforms on Arm-based
supercomputers
Ricardo Jesus
18:15-18:40 10:15-10:40 Vlasov Simulation of Cosmological Relic Neutrinos on Supercomputer Fugaku Kohji Yoshikawa
(Div. of Astrophysics)
18:40-18:50 10:40-10:50 Break  
18:50-19:15 10:50-11:15 Vipera: RISC-V computing and micro kernels Maurice Jamieson
19:15-19:40 11:15-11:40 Real-Time Analytics Over Out-of-Order Data Streams By Incremental Sliding-Window Aggregation Savong Bou
(Div. of Computational Informatics)
19:40-20:05 11:40-12:05 Morpheus: a library for efficient runtime switching of sparse matrix storage formats Chris Stylianou
20:05-20:30 12:05-12:30 Open discussions

【受賞】藤田助教が情報処理学会の山下記念研究賞を受賞

高性能計算システム研究部門の藤田 典久助教が、情報処理学会の山下記念研究賞を受賞しました。

山下記念研究賞は、情報処理学会の研究会および研究会主催シンポジウムにおける研究発表のうちから特に優秀な論文を選び、その発表者に贈られるものです。授賞式は3月3日にオンラインで開催されました。

受賞タイトル:スーパーコンピュータCygnus上におけるFPGA間パイプライン通信の性能評価

関連URL:https://www.ipsj.or.jp/award/yamashita2021.html (外部リンク)

2022年度一般利用の募集

筑波大学計算科学研究センターでは、東京大学情報基盤センターが運用する高性能メニーコア クラスタ Wisteria-O(A64FX、ピーク性能25.9 PFLOPS)及び筑波大学計算科学研究センターが運用するGPU, FPGA混載型クラスタCygnus(V100、ピーク性能2.3 PFLOPS)の2台のスーパーコ ンピュータについて、各システムにおいて20%(Wisteria-Oについては筑波大割当分の20%)を目安とした計算機資源を全国共同利用機関として有償の一般利用に供することといたします。
2022 年度(2022年4月1日から2023年3月31日まで)の一般利用を募集しますので、希望される方は以下のページを確認の上、ご応募下さい。

一般利用

 

CCS Reports! No.4 「円周率探求は数世界に築くバベルの塔」公開

計算科学研究センター(CCS)に所属する教員・研究員へのインタビューを通して、一般の方へわかりやすく計算科学研究センターの取り組みを紹介する「CCS Reports!」に高橋大介先生の「Vol.4 円周率探求は数世界に築くバベルの塔」を公開しました。

「CCS Reports!」

「Vol.4 円周率探求は数世界に築くバベルの塔

円周率探求は数世界に築くバベルの塔

高橋大介 教授

高性能計算システム研究部門

皆さんは、π=パイの日」をご存知でしょうか?

巷では、ホワイトデーとなっている「3月14日」です。この日は、なんとあのアインシュタイン博士の誕生日でもあります。そんな円周率の日に公開となる今回の記事は、π=3.14‥にまつわるお話がテーマです。

高橋大介教授は、高性能計算システム研究部門の研究者です。先生は、2009年に当時のスーパーコンピュータを用いて、円周率の小数点以下の桁数で世界記録を樹立されたスゴい方なんです。

先生が円周率に興味をもったのが、中学1年生のとき。当時、図書館で偶然出会った「πの話」(野崎昭弘著、岩波書店)という本が先生のπ探求への扉を開いたのです。図1

図1:高橋先生がπ探求のきっかけとなった「πの話」(野崎昭弘著、岩波書店)

(2022.03.14 公開  文責:高水裕一 ※2022.5.23 一部加筆修正を行いました)

 

素数239にπへと続く道がある

πは超越数」ということを聞いたことがあるでしょうか。これは代数方程式の解にならない数のことです。たとえば、√2は小数点以下が無限に続きますが、x^2-2=0という方程式の解になっているので、超越数ではありません。ネイピアの数 eも円周率と同じ超越数ですが、無限に続く桁を計算で算出する際、円周率はeよりもさらに奥が深く、別次元の難しさがあるのです。

もっとも簡単に円周率を求めるためには、Tan関数を用いることです。角度として45度、つまりπ/4を代入すると1になるので、これを逆に解いた逆関数であるArctan関数を用いて求まります。

具体的には、π=4 Arctan(1) と表されます。しかしこれを級数展開(注1 を用いて計算すると、実はうまく答えが収束しません。円周率のより高い桁数を求めるために、これは効率が悪いのです。そこで、もう少し効率のよい形として次のArctanを用いた「マチンの公式」が知られています。図2

図2:マチンの円周率を求める公式

ここで注目すべきは、5 と239という2つの素数(注2 です。

これらが分母にあることで、級数展開の収束が各段によくなります。この公式は、似たような別のバージョンがいくつかありますが、独立には4つしかないことが証明されています。239という素数も、加法定理といった規則に乗っ取った裏の深い意味があるのです。なんでもいい数にみえて、実は奥深い数たちなのです。239という素数は、無限に続くπという未踏の階段へ昇っていくための魔法の入り口のようなものなのです。

高橋先生が約2.6兆桁の世界記録樹立!

人類が、πを求める歴史は実に古く、何と紀元前2000年の旧約聖書、7章23節には、ソロモン王の装飾品として円周率の記述が登場します。そこには、周に渡した縄の長さは、直径に対しておよそ3倍とあります。つまりπ=3と書かれていたのです。円形は完全を象徴するもので、古代から人類の高い関心事だということです。

人類の科学の発展とともに、その桁数は、π=3.141592・・と飛躍的に伸びていきます。数学の発展も大事なのですが、それを実行するための計算機の進歩も同時に重要となります。スーパーコンピュータとよばれる大規模計算機が発展してきたことが、円周率を何兆桁以上も計算できるようになった大きな契機といえます。図3は、年代と桁数の伸びを図示したものです。そんな長い歴史の中には、円周率を求めるだけで一生を終えた学者も少なくありません。

 

図3:年代ごとの円周率の桁数の伸び

たとえば、ルドルフは正多角形を用いて、近似的に円周率を計算するやり方で、35桁まで求めました。結果だけ聞くと一瞬ですが、なんと一生涯を費やして、約461京角の多角形で計算したというのですから、気が遠くなります。これに近い37桁までの計算によって、宇宙全体を原子サイズの高精度で測ることに対応しています。つまりこの桁数まで得られれば、宇宙の大きさを半径とする仮想的な円周を、水素原子ほどの高精度で求めることに相当しているのです。一生涯をかけて宇宙全体を高精度で見渡したという壮大なスケールをきくと、なんともロマンを掻き立てられます。このような一生涯パターンの逸話は枚挙にいとまがないほど、円周率というのは学者の人生を狂わすほどの強い魅力があるのです。

まだ見ぬ未踏の頂きを求めて、古代人類が天空へと続くバベルの塔を建設したように、円周率探求は、まさに数世界の頂きを目指す、文明史そのものだといえます。

そんな数々の桁数探求の中、高橋先生は、2009年に円周率の世界記録を樹立します。その桁数はなんと、約2兆5769億というとんでもないもの。その輝かしい記録を出した業績について、すこし触れてみましょう。

使った公式は、「Gauss‐Legendreの公式と高速乗算法」というものです。Arctanの公式が抱える問題として、掛け算の計算部分に時間がかかりすぎるという大きな問題が知られていました。皆さんが普通に行う掛け算の方法、いわゆる「ひっ算」のような方法では、計算時間が桁数の上昇につれてあまりに長くかかってしまうのです。そこで掛け算の計算アルゴリズムとして、「高速乗算法」というのがカギになります。これにより、計算するべき乗算の回数が飛躍的に減少されます。ここに「高速フーリエ変換」という手法を加味すると、さらに高速化が進み、先生はこの手法で約2.6兆桁を約30時間で計算することに成功します。円周率を求める過程で得た、この高速フーリエ変換の手法は、他の計算科学で大いに役立ち、後年これが大きな副産物となります。

計算方法であるソフトだけでなく、計算するためのマシンの性能、つまりハード面も重要です。先生は2009年に、「T2K筑波」というスーパーコンピュータを用いて計算を実行しました。これは筑波大学、東京大学、京都大学が共同で開発・運用したマシンで、当時は世界第20位の計算機としてランクインし、2014年に運用が終了したものです。先生の業績で大事な点は、スパコンを並列処理として円周率を計算させたという点です。T2K筑波では640ノードを並列に用いて計算しました。この並列処理による円周率の計算として、1997年に先生は、「HITACHI SR2201」というマシンを用いて、前進となる研究を行っていました。このマシンは、筑波大学計算科学研究センターのPACSシリーズという歴代のスパコンに位置する「CP-PACS」というマシンの商用機だそうです。円周率の探求は、センターのスパコンの歴史とも大きく関係していたのです。当センターのスパコンの歴史はこちらに

 

超人的な2つのπ公式!

ここで現代の桁数最高記録をご紹介します。それは2021年の約62兆8318億というもので、スイスの研究チームが達成しました(2022年2月現在の最高桁数)。その少し前の2019年には筑波大学の卒業生(岩尾エマはるか さん)が達成した約31兆桁があります。先生は在学中、この方とも面識があったそうです。

しかしこれら近年の記録、実はこれまでのスゴさからすると、すこし方向が違うのです。2019年の記録は、Google社となっています。一見、大規模プロジェクトで大型の計算機を使って・・と想像してしまいますが、実はすでに発表されているプログラムが使われています。本来はこのプログラムを作成することが一番大変なことです。先生は、インタビューで「世界でも数人じゃないかな、それを書ける人は。」とカッコよく語っておりました。かくいう高橋先生もそのスゴイ一人なのですが、2019年の記録に使われたプログラムはYeeさんという方が作成した「Y-Cruncher(=Yeeが嚙み砕くの意味)」というプログラムでした。これをダウンロードして実行しているのですが、実はスパコンのような大規模マシンも用いていません。その分、日数をかけて計算したもので、2010年以降の円周率の記録は全て、このプログラムの恩恵だといえます。もちろん実行するのにも、いろいろな工夫は必要で、凄くないわけでは決してありません。2019年の記録では、Google Cloud Platform というクラウド上のコンピュータでプログラム(y-cruncher)を高速に動かすためのさまざまな工夫がなされています。

話は、このプログラムで用いられている公式のスゴさに移りましょう。

2つの超人的な円周率の公式をご紹介します。1つは、「ラマヌジャンの公式」、もう一つは、「チュドノフスキーの公式」というものです。ラマヌジャンという数学者、皆さんご存知でしょうか。神に祈って未知の数式を導いたり、自分で証明する術をもたない異色の数学者といった、まるで映画のような設定を地でいく数学界の魔法使いのような異次元の天才なのです。彼を描いた映画「奇蹟がくれた数式」をぜひご覧ください。

彼が1914年に導いた公式が図4上段にあります。こんな形、一体どうやって思いついたのか、当時の学者たち誰一人として理解できませんでした。後に、彼の死後この公式が正しいことが証明され、チュドノフスキーの公式は1989年にその異なるバージョンとして発表されます。

ラマヌジャンの公式では、約8桁ごとに正確な円周率が計算できるのに対して、チュドノフスキーの公式は約14桁ごとに正確な値が導けるので、現代ではこちらのほうが用いられており、Yeeのプログラムでも採用されています。彼らは兄弟で数学者であり、なんと円周率を求めるために自宅のアパートに手作りのスパコンを設置して、約80億桁まで求めたということです。こちらも負けず劣らず、すごい逸話の兄弟ですね。高橋先生は、このラマヌジャンの公式のスゴさを次のように語っていました。

図4:ラマヌジャンの公式を書く高橋先生

「この公式は、彼が地球にいなかったらきっと誰も導くことができなかった奇蹟の数式では」と。この公式から、後に数学世界では、「テータ関数」という概念が生まれます。楕円関数やモジュラー形式という数学とも関連するもので、πを求まる公式としてだけでなく、新しい数学の領域が開かれたのです。彼がいなくては誰も発見できなかった幻の扉だといえます。とくに先生が注目しているのが「素数1103」です。前に登場した239のように、これにも深い意味がある素数のようですが、常人の理解をはるかに超えています。πへと続くこの神秘的な扉の数、「239と1103」をどこか頭の片隅にいれてもらえれば、あなたも超越数πへ近づけるかもしれません。

誰でも横に線を引いて、数直線を描くことはできます。その3と4の数値の間には必ずπが存在しています。しかし存在はしていても、1点そこにたどり着くことができない摩訶不思議な数。なんともロマンに満ちた存在ではないでしょうか。

最後に先生は、「ぜひまた世界記録に挑みたい」と意気込みを熱く語っていました。既存のプログラムを用いるのではなく、スパコンを用いた並列処理による記録達成を目指す新しいプログラムを作成したいとか。現代の最高峰マシンである、「富岳」を用いても、前述のArctanの公式だけでは、約62兆桁までの計算で100年以上もかかってしまうのです。いかに効率のよい公式を用いるか、そしていかに効率よく分散させてスパコンに計算させられるかが、今後の飛躍にとって大きなカギとなるのです。

πは実は、超越数であるということ以外、その正体が未だにほとんど分かっていません。乱数性、つまり完全にランダムに数字が登場するのかどうかさえ、まだ証明なされていません。円周率の中には、8が13桁も続くようなものや、再び314159265358という円周率が小数点以下に登場するものもあります。πの中πは、まるでマトリョーシカのようです。まだまだ奥が深い数列や、魅惑的な数列がその中に登場してくるでしょう。それが円周率なのです。

円周率の桁数は文明進歩の尺度の一つであると言われています。旧約聖書以前から続くこの高いバベルの塔がいったいどこまで続くのか、今後の人類の発展とともに期待したいところですね。

用語

1)級数展開: ある関数を無限に続く級数で近似的に計算すること。テイラー展開ともいう。

2)素数:1とその数自身以外に約数がない正の整数のこと

 

さらに詳しく知りたい人へ

高橋先生HP

高橋大介,”円周率世界記録更新-2兆5769億8037万桁への道”,情報処理, Vol. 50, No. 12, pp. 1228-1234 (2009).

 

在学生向け Cygnus見学会

※ 17日の回、参加者の皆様へ 3月16日の夜に大きな地震と停電が発生しましたが、Cygnusの見学は問題なく行える状態であることを確認しました。本日は予定通り開催いたします。

以下の日程で、在学生向けに筑波大学計算科学研究センターのスーパーコンピュータCygnusの見学会を開催します。

日程: 3月16 / 17日 14:00- / 15:00- (各回 40分程度)
場所: 筑波大学計算科学研究センター (バス停「第一エリア前」下車 徒歩1分)
参加費: 無料 
対象: 21年度本学在学生 (定員各回6名 先着順)
申込締切: 3月15日(締切延長)
参加申し込みフォーム: https://forms.gle/p98pndLGA4ZarpJbA(外部リンク)

コロナ禍の状況を踏まえ、各回の定員を6名としています。
参加申込された方は、体調に留意してマスク着用の上ご参加ください。
風邪様症状がある場合には参加をご遠慮ください。

計算科学研究センターの紹介、Cygnusの見学、質疑応答を予定しています。

計算科学研究センター玄関前集合とします。玄関は施錠されていますので、時間厳守でお願いします。
当日の欠席連絡、その他お問合せは pr[at]ccs.tsukuba.ac.jp ([at]→@) までご連絡ください。

 

Cygnusの解説付きツアー動画もあります。

 

Your lunchtime walks in the summer could be making you less productive

Researchers from the University of Tsukuba find that a brief walk outside on a hot day impairs cognitive performance

Tsukuba, Japan—Studies have shown that being in a hot environment reduces cognitive performance, whereas a brief walk enhances cognition. But what happens when you go for a brief walk on a hot summer’s day, as so many students and office workers do during lunch or an afternoon break? Turns out, you might be better off avoiding the heat.

In a study published this month in Building and Environment, researchers from the University of Tsukuba discovered that just 15 minutes of walking outside on a hot day impaired cognitive performance, and this was most striking in men who don’t get enough sleep.

Those who work or study in urban heat islands, such as large cities in Japan, generally have the convenience of air-conditioning indoors over the summer months, which largely counters the negative impact of heat on learning and productivity. However, brief exposure to hot environments during commuting or breaks is inevitable, and whether such exposure affects cognition has not been known. “Previous experiments have used specialized climate chambers to test these effects. However, outdoor thermal environment differs significantly from indoor thermal environments in terms of radiation and wind,” says senior author Professor Hiroyuki Kusaka. “Radiation and wind have significant effects on thermal perception. Therefore, in order to assess the effects of outdoor heat stress on cognitive performance, experiments should be conducted in real outdoor environments.”

Researchers simulated a real-world scenario during the Japanese summer in which workers or students leave an air-conditioned indoor environment to walk or have a break in a hot outdoor urban environment. Ninety-six students completed a simple arithmetic test in an air-conditioned room before either staying indoors, walking outside, or resting outside for 15 minutes. They then returned indoors to complete a second arithmetic test, and any changes in performance were measured. Walking in a hot outdoor environment impaired cognitive performance; however, it was not simply the exposure to the hot environment that impaired cognition. Rather, it was the combination of walking and being outside in the summer heat that had impacted cognitive performance. Furthermore, this effect was more pronounced in people, specifically men, who were sleep deprived, having slept less than 5 hours.

“Japanese office workers and students, especially men, need to be aware of this situation as they work and study,” says Kusaka. The team hopes that their findings will help guide ways to improve productivity and learning in workers and students in Japan, and perhaps even further afield as the impact of climate change moves to the forefront.

 

Funding and acknowledgements

This research was in part supported by the Social Implementation Program on Climate Change Adaptation Technology by Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT), Japan. This research was performed by the Environment Research and Technology Development Fund JPMEERF20192005 of the Environmental Restoration and Conservation Agency of Japan.

 

Original Paper

The article, “Effect of walking in heat-stressful outdoor environments in an urban setting on cognitive performance indoors,” was published in Building and Environment at DOI: 10.1016/j.buildenv.2022.108893

 

Correspondence

Professor KUSAKA Hiroyuki
Center for Computational Sciences, University of Tsukuba