研究部門主任
日下 博幸(筑波大学計算科学研究センター 教授)
博士(理学)。1997年筑波大学大学院修士課程修了。1997年(財)電力中央研究所研究員。2002年-2004年アメリカ大気研究センター(NCAR)に滞在しWRFモデルプロジェクトに参加。2006年筑波大学講師、2011年同准教授、2016年同教授。ヒートアイランド現象、フェーン現象、おろし風、富士山の笠雲・吊るし雲などの日本各地の身近な気象を研究している。そのほか、熱中症予測、風力発電量予測、将来の地域気候予測などの応用研究も行っている。スーパーコンピュータと野外観測の二刀流のめずらしい気象学者である。 |
研究分野の概要
地球環境研究部門では、大気科学を中心とする地球環境の総合的理解と将来予測を目指した研究を行っています。地球規模の大気現象から都市気候など小さなスケールの現象までを対象に、先端的計算機システムを用いた様々な数値計算シミュレーションを行います。
研究紹介
①分野の説明
地球環境研究部門では、地球規模から都市規模までの気候や気象に関わる研究を、全球雲解像モデル「NICAM」や、領域気象モデル「WRF」などを組み合わせて総合的に企画推進しています。 研究部門には、センター専属教員4名のほか、学内外に共同研究員がいます。専属教員は、地球規模の大気科学を専門とする田中博教授(地球環境科学専攻)と、都市気候や山岳気象などの身近な気象を専門とする日下博幸教授(地球環境科学専攻)、アンサンブル予報を用いた気象予測精度の向上を目指した松枝未遠助教、都市気象を専門とするドアン・グアン・ヴァン助教です。 学内共同研究者として、気候システムを専門とする植田宏昭教授(持続環境学専攻)がおり、研究協力を行っています。
②研究トピックと成果
全球雲解像モデルNICAM(Nonhydrostatic ICosahedral Atmospheric Model)は、東京大学気候システム研究センター (CCSR)と海洋研究開発機構(JAMSTEC)により共同開発された次世代型の大気大循環モデルです。JCAHPC(筑波大学計算科学研究センターと東京大学情報基盤センターによる最先端共同HPC基盤施設)のOakforest-PACSに移植され、重要な研究ツールとして役立てられています。我々はNICAMを用いて、熱帯低気圧である台風やハリケーン、温帯低気圧、北極低気圧、ブロッキング高気圧、北極振動、成層圏突然昇温などを対象に研究を行っています。
動画:2008年台風13号(Sinlaku)とハリケーン(Ike)の2つが同時に発達している。
領域気象モデルWRF(Weather Research and Forecasting)は、米国の大気研究センター (NCAR)、環境予測センター (NCEP)、海洋大気局(NOAA)、空軍気象局(AFWA)により共同開発され、一般に公開された汎用性の高い数値モデルです。我々はWRFを用いて、都市のヒートアイランド現象、ゲリラ豪雨、フェーン現象、山岳にできる笠雲・吊るし雲などの身近な気象の未解決問題に挑戦しています。また、社会のニーズにこたえるべく、地球温暖化と都市気候、熱中症の将来予測などの研究も行っています。
さらには、都市街区内の気温や風の分布を再現できる世界最高レベルの空間分解能を持つ都市気象モデル(LESモデル)を本センターの高性能計算システム研究部門と共同で開発しています。
図3 東京駅周辺の表面温度分布。黒色は建物。左図は本センターで開発したLESモデルによるシミュレーション結果で、右図は東京都環境科学研究所によるヘリコプター観測の結果。
動画: 2010年4月4日、アイスランドにあるEyjafjallajokull火山が噴火し、その影響でヨーロッパの多くの国際空港が約1週間閉鎖となった。航空機を火山灰から救う目的で1990年のアラスカRedoubt火山噴火の際に開発されたリアルタイム火山灰追跡モデルPUFFを用いて、アイスランド火山灰の輸送拡散モデルを実行し、その粒子の3次元的な運動をGoogle Earthに乗せたアニメーションを作成した。噴火開始から48時間までの火山灰の広がりを3時間間隔で再現したものである。(作成:邉見萌乃、天笠俊之、田中 博)
筑波山プロジェクト
筑波山(標高877m)は関東平野の孤立峰です。筑波山プロジェクトはこの山頂にて気象観測を行い、上空の気温・湿度等の気象データを継続的に記録・公開することで、研究・教育活動に役立て、社会に貢献することを目的としたプロジェクトです。
(最終更新日:2019.12.10)