沿革

筑波大学は、計算科学の発展に少なからぬ役割を果たしてきました。1970年代末から1980年代なかばにかけて、科学技術計算用並列計算機 PACS/PAXシリーズを開発・製作し、原子炉中での中性子拡散などの具体的計算に用いられたことは、学術研究として世界的に先駆的な業績です。さらにメーカーとの連携により商品化がされたことは、産学連携の先鞭を付けるものでした。続くシリーズ5 台目のQCDPAXは、科学研究費特別推進研究(予算総額3億円)により開発・製作を行い、完成当時(1989年)世界最高速に類する性能を実現し、素粒子物理学の研究に10年間にわたって用いられました。

これらの業績を基礎として、1992年には物理学の研究に適した超並列計算機CP-PACSの開発プロジェクトが「学術の新たな展開のためのプログラム」の研究課題「専用並列計算機による場の物理の研究」(予算総額22億円)として認められました。同時に、筑波大学計算物理学研究センターが設置されました。同センターでは1992年から5年をかけてCP-PACSを開発・製作しました。 同機は1996年11月の完成時点に614GFLOPSを達成し、世界のスーパーコンピュータトップ500リストの第1位を占めました。

計算物理学研究センターでCP-PACSを完成後8年にわたって稼動し、素粒子の強い相互作用の基礎理論であるQCDに基づく素粒子と基本粒子クォークの性質の解明、量子力学第一原理に基づく固体水素の相構造の解明、宇宙輻射と物質の相互作用を取り入れた宇宙の階層構造形成のシミュレーションなど、基礎物理学諸分野において世界的な業績を挙げました。

また1997年度~2001年度には、日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業「計算科学」分野のプロジェクト「次世代超並列計算機開発」を実施しました。同プロジェクトでは、複合的な計算の高速処理を可能とする新たな計算機アーキテクチャ HMCS(異機種融合型計算機システム)を提案すると同時に、8.6TFLOPSの高い性能を持つ実用システムを構築し、宇宙物理学における銀河形成シミュレーションに新たな発展をもたらしました。

筑波大学計算科学研究センターは、2004年4月1日に設置されました。計算物理学分野における以上の成果を基礎として、計算科学の方法により、より幅広く科学の諸領域の研究の推進を図ることを目的としています。

計算物理学研究センター10年の歩み(2002年7月)

1992年 4月1日 新プログラム研究「専用並列計算機による「場の物理」の研究」(CP-PACSプロジェクト)開始、5カ年計画
1992年 4月10日 計算物理学研究センター設置
1992年 7月3日 計算物理学研究センター開所式
1993年 8月26日 計算機棟竣工
1994年 3月1日 フロント計算機システム第一期レンタル開始
1995年 3月1日 フロント計算機システム第二期レンタル開始
1995年 3月30日 センター研究棟竣工
1995年 4月1日 卓越した研究拠点(COE)指定
1996年 3月25日 超並列計算機CP-PACS(1024PU)完成、設置
1996年 9月18日 CP-PACS(2048PU)完成、設置
1996年 11月18日 「世界のスーパーコンピュータトップ500」リストでCP-PACSの第1位認定
1997年 3月31日 新プログラム研究(CP-PACSプロジェクト)終了
1997年 4月1日 未来開拓研究「次世代超並列計算機の開発」開始(5カ年計画)
1998年 3月1日 フロント計算機システム第三期レンタル開始
CP-PACS全国共同利用「大規模数値シミュレーションプロジェクト」開始
2002年 2月21日~22日 「計算科学の展望-計算物理学研究センター10周年シンポジウム-」開催
2002年 3月1日 フロント計算機システム第四期レンタル開始
2002年 3月31日 未来開拓研究「次世代超並列計算機の開発」終了
2002年 4月1日 計算物理学研究センターを組織拡充の上、新たな10年時限の活動を開始
2004年 4月1日 計算物理学研究センターを改組拡充し、計算科学研究センターを設置
2004年 6月10日~11日 計算科学研究センター発足記念式典/発足シンポジウム開催
2005年 2月16日~17日 第1回「計算科学による新たな知の発見・統合・創出」シンポジウム開催(以降毎年開催)
2005年 4月1日 高性能超並列クラスタ「PACS-CS」プロジェクト開始(3カ年計画)
2007年 4月1日 学際共同利用プログラム開始
2010年 4月1日

計算科学研究センターの5研究部門を7研究部門に改組拡充
共同利用・共同研究拠点「先端学際計算科学共同研究拠点」に認定

2010年 5月6日~7日 第1回「学際計算科学による新たな知の発見・統合・創出」シンポジウム開催(以降毎年開催)
2011年 4月1日 密結合並列演算加速機構実証システム「HA-PACS」プロジェクト開始(3カ年計画)
2012年 2月1日 密結合並列演算加速機構実証システム「HA-PACS」稼働開始
2012年 9月7日 計算科学研究センター設立20周年記念シンポジウム
第3回「学際計算科学による新たな知の発見・統合・創出」シンポジウム開催
2013年 3月1日 東京大学との協定に基づき「最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)」を設置
2013年 7月24日 最先端共同HPC基盤施設発足記念シンポジウム開催
2013年 11月1日 「HA-PACS」にTCA部を拡張。「HA-PACS/TCA」は同月、世界のスパコン省エネランキングGreen500の第3位に認定
2014年 4月15日 「COMA(PACS-IX)」の運用を開始
2015年 4月1日 計算科学研究センターの7研究部門を8研究部門に改組拡充
2016年 11月 最先端共同HPC基盤施設のスーパーコンピュータ Oakforest-PACS がTop500で国内最高性能(世界第6位)に認定
2016年 12月1日、2日 最先端共同HPC基盤施設としてOakforest-PACS 運用開始に関する合同記者会見、運用開始記念式典を開催
2016年 12月 新棟竣工
2017年 10月10日~11日 計算科学研究センター25周年記念シンポジウムおよび第9回「学際計算科学による新たな知の発見・統合・創出」シンポジウム開催
2018年 10月15日~16日 第10回「学際計算科学による新たな知の発見・統合・創出」シンポジウム(CCS International Symposium 2018)開催 (以降、使用言語英語の国際会議として毎年開催)
2019年 4月 多重複合型演算加速スーパーコンピュータCygnus運用開始
学際共同利用プログラム英語化・国際化