宇宙物理研究部門

研究部門主任

大須賀 健(おおすが けん) 筑波大学計算科学研究センター 教授

博士(理学)。2001年筑波大学大学院物理学研究科物理学専攻修了。2001年日本学術振興会特別研究員(京都大学/パリ天文台)、2004年立教大学助手、2007年理化学研究所基礎科学特別研究員、2008年国立天文台助教を経て、2018年より現職。専門は理論宇宙物理学。輻射磁気流体力学シミュレーションを駆使し、ブラックホール降着流やジェット、巨大ブラックホールの形成過程を研究している。

メンバー

研究分野の概要

我々は、宇宙最初の星や銀河の誕生、それらが放つ光の特性、銀河・銀河団や大規模構造の形成進化、ブラックホールの形成進化と銀河中心核活動などを、基礎物理学から理解することを目指しています。そのために、解析的研究やスーパーコンピュータを利用した大規模数値シミュレーションを駆使して研究を行っています。

研究紹介

①分野の説明

宇宙は、今から約138億年前に“ビッグバン”によって誕生したと考えられています。その後、宇宙は膨張を続け、灼熱の状態から徐々に温度と密度が下がってきました。宇宙に初めて水素原子が誕生したのはビッグバンから約38万年後(宇宙の晴れ上がり)です。その頃の宇宙の温度は約3,000 Kで、星や銀河はなく、10万分の1ほどのわずかな密度の濃淡があっただけであることがわかっています。

一方、最近になって、ビッグバンから6億年経った頃の宇宙に、生まれたての銀河がたくさん見つかってきました。これは、宇宙誕生後38万年から6億年の間に、宇宙が銀河形成という大きな変化を遂げたことを物語っています。しかしながら、どのように銀河が誕生したのかは謎に包まれています。

その後、宇宙はさらに膨張と進化を続け、大規模な構造を作っていきます。このような銀河の形成と宇宙の進化は、宇宙に普遍的に存在すると考えられているダークマター(暗黒物質)が鍵を握っていると考えられています。

宇宙の歴史
図1 宇宙の歴史

②研究トピックス

宇宙物理分野では、宇宙最初の星や銀河の誕生、それらが放つ光の特性、銀河や銀河団の形成進化、ブラックホールの形成進化と銀河中心核活動、そして星・惑星系形成などについて、基礎物理学から理解することを目指しています。研究の特色は、輻射輸送方程式や相対論的輻射流体力学方程式を扱うことにより、物質と光の相互作用を忠実に採り入れていることと、多成分多体からなる天体の形成進化において互いの重力の相互作用を忠実に採り入れていることです。研究手法としては、解析的研究やコンピュータでの演算をはじめとして、計算科学研究センターのスーパーコンピュータを利用した大規模数値シミュレーションを用いています。

③現在までの成果

図2は、一般相対論的輻射磁気流体力学シミュレーションで解明されたブラックホールを取り巻く降着円盤と、そこから吹き出すジェットを示しています。ブラックホールの強力な重力に引きつけられた物質は、降着円盤を形成し、徐々にブラックホールに吸い込まれます。降着円盤内部では重力エネルギーが解放され、大量の光子が発生します。そして、ブラックホールの重力をも凌ぐ光の力で、円盤の一部の物質がジェットとして噴出することが明らかになりました。

図2 ブラックホール周囲の降着円盤とジェット

図3は、初期宇宙の銀河の形成を、高精度な宇宙論的流体シミュレーションによって描き出したものです。銀河形成期には大規模なフィラメント構造に沿ってガスが銀河に降着し、爆発的な星形成が起こります。その後は、超新星爆発の影響によって銀河のガスは排出され、星形成はすぐに止まる事が分かりました。初期宇宙の銀河の星形成史は、このような活発な星形成と抑制を繰り返しながら間欠的に進む事が明らかになりました。

図3 初期宇宙の銀河形成シミュレーション

関連リンク:宇宙物理理論研究室 FIRSTプロジェクト

(最終更新日:2019.12.10)