分子進化分野

研究部門主任

稲垣 祐司 (筑波大学計算科学研究センター 教授)

1995年に名古屋大学理学部で博士(理学)を取得。1996-1997年、奨励研究員として(株)JT生命誌研究館にて勤務。その後、日本学術振興会海外特別研究員としてカナダ・ダルハウジー大学へ2年間派遣され(1998-2000年)、引き続き同大学で博士研究員として4年間勤務(2001-2004年)。2004年4月に長浜バイオ大学講師として帰国、2005年8月筑波大学に助教授として着任。

メンバー

研究分野の概要

真核生物における大系統群間の系統解析

真核生物は6つ程度の主要系統群に分けることができると提唱されています。我々はそれぞれの主要系統群が本当に単系統なのか、またグループ間の近縁関係はどのようなものなのかを、複数遺伝子配列を用いた分子系統解析を用いて推測しています。また偏りの少ない推測を行うため、系統解析の方法についても研究しています。

研究紹介

①分野の説明

真核生物における大系統群間の系統解析:真核生物は6つ程度の主要系統群に分けることができると提唱されています。我々はそれぞれの主要系統群が本当に単系統なのか、またグループ間の近縁関係はどのようなものなのかを、複数遺伝子配列を用いた分子系統解析を用いて推測しています。また偏りの少ない推測を行うため、系統解析の方法についても研究しています。

地球上には多種多様な生物が生息しています。たとえば、我々ヒトは背骨を持ち、自らの体を動かし、食物(他の生物)を摂取することにより生きています。またヒトの体は、たくさんの細胞から構成されています。一方、植物の体は、ヒトと同じように多数の細胞でできていますが、その生き方はヒトとは大きく異なります。植物は自ら動くことなく、食物を食べる必要はありません。代わりに、光エネルギーをもとに光合成を行って生きています。その他にも、日頃実感することはありませんが、地球上には肉眼では見ることのできない莫大な数の生物種が存在します。そのような生物は、多種多様な外見を持ち、その生活様式も多様です。これら地球上のすべての生物は、たった1つの原始的生物から長い時間をかけ、現在の姿まで進化してきました。我々の研究グループは、地球上に現在生息している生物種の中でもとくに細胞に核をもつ生物、すなわち「真核生物」に焦点を当て、真核生物の主要系統群がどのような進化関係にあるのか、つまり真核生物進化の道筋の解明を目指しています。またこの系統樹をどんどん遡り、最も原始的な真核生物はどんな細胞であったのか、どんな遺伝子をもっていたのか、などの疑問を解決したいと考えています。

bio1図1 真核生物の主要系統群

②研究トピックスと成果

我々は、現存生物種の遺伝子(DNA)塩基配列やタンパク質アミノ酸配列のデータに基づく分子系統解析を用いて、真核生物の系統関係を推測しています。特に、真核生物の進化における各種の問題を解明するため、様々な自然環境からこれまで研究されていない「新しい」生物の単離も行っています。これらの真核生物から次世代シークエンス技術を用い、大規模な遺伝子・ゲノム情報を獲得して、分子系統解析を行っています。

分子系統解析には最尤法による統計学的処理が必要なため、コンピュータを使用します。塩基配列やアミノ酸配列の中には、過去に起きた進化のイベントに対応した「シグナル」と、進化の過程で蓄積したランダムな変化(いわゆるノイズ)が共存しています。困ったことに、配列中のノイズの量は時間とともに増加しますが、シグナルの量は逆に減少します。したがって、遠い過去に分岐したと思われる主要な真核生物系統群の関係を精度よく推測するためには、大量の配列データを解析する必要があります。我々は次世代シークエンスデータを用いた複数の遺伝子情報を含む巨大データを取り扱うため、スーパーコンピュータによる解析を行っています。

bio2図2 自然環境から単離され、現在研究されている「新しい」真核生物

関連リンク:微生物分子進化研究室

(最終更新日:2019.12.10)