生命機能情報分野

研究部門主任

shigeta 重田 育照 (筑波大学計算科学研究センター 教授)

理学博士。2000年大阪大学大学院理学研究科修了。2000年より日本学術振興会研究員、2004年東京大学助手、2007年筑波大講師、2008年兵庫県立大准教授、2010年大阪大学准教授を経て、2014年より計算科学研究センター教授。専門は、理論生物物理学。

メンバー

研究分野の概要

生体高分子のコンピュータシミュレーション:立体構造や電子構造が、生物機能とどのように関係しているのか?

我々のグループでは、重要な生物機能を担う「タンパク質」や「DNA」「RNA」などを対象に、コンピュータシミュレーション技術や理論解析法を開発し適用することによって、生命科学の理論研究を進めています。研究の目的は、生体機能高分子が担う“生物機能のしくみ”を明らかにすることです。そのために、以下の2つのアプローチが重要です。

①生体機能高分子の立体構造および電子構造のダイナミクスと生体反応機構
分子・原子および電子レベルの研究です。様々な生体反応のしくみを、立体構造と電子構造の変化に基づいて解明します。

②生体機能高分子の相互作用ネットワークシステムとその反応ダイナミクス
生命情報システムレベルの研究です。生体反応が数多く、しかも複雑に組み合わされた相互作用ネットワーク全体を、1つのシステムとして解析します。

これら2つのアプローチを融合することにより、生命をさらに深く理解することをめざしています。

研究紹介

①分野の説明

生命現象はタンパク質、核酸、脂質、糖類などの生体内分子によって駆動される一連の化学反応によって支配されています。そのため、生命現象の根本的分子メカニズムは化学反応に伴う電子状態変化と原子の空間配置を探索することで明らかにできます。生命機能情報分野では、量子論に基づく第一原理計算や古典(統計)力学に基づく分子動力学計算などの計算科学的手法を駆使して、生体内分子に内在する動的な構造-機能相関を明らかにし、生命現象の本質を捉える研究を行っています。

②研究トピック

  • (1) 分子動力学計算タンパク質の構造変化の解析(タンパク質の折 りたたみ経路解析)
  • (2) ハイブリッドQM/MM法によるタンパク質の反応解析(ニトリ ルヒドラターゼ、光化学系IIなど)
  • (3) 星間空間でのアミノ酸生成機構、L体過剰生成起源の解明(グリ シン、アラニン生成など)

③現在までの成果

(1) タンパク質の構造変化を効率的に誘起するサンプリング手法を開発し、タンパク質の折りたたみ、ドメイン運動、誘導適合過程、多量体形成過程など、タンパク質機能において極めて重要な構造変化過程を抽出する方法を開発しています。本手法は超並列環境に極めて適した手法であり、計算学研究センターのスーパーコンピュータを用いて計算を実行しています。

図1 トリプトファンケージの折りたたみシミュレーション

 

(2) 光化学系IIはマンガン、カルシウム、酸素原子で構成される極めて特徴的な反応活性中心を持っており、光エネルギーを利用して多段階の化学反応で水分子から酸素分子を生成しています。我々は、本反応(水分解反応)での構造・電子・プロトン移動変化についてハイブリッドQM/MM法を用いて明らかにしてきました。

図2 光化学系IIの全体構造と活性中心構造

 

(3) 生命を構成する生体内分子のいくつかは隕石中で発見されていることから、星間空間に生命起源が存在する可能性があります。我々は高精度第一原理計算手法を用いて、アミノ酸合成・分解の様々な反応経路を網羅的に解析しています。宇宙物理研究部門と協力し、生命起源につながる分子進化過程について研究を行っています。

図3 星間空間での分子進化とアミノ酸生成

 

生命物理研究室

(最終更新日:2017.3.14)