HPCI推進室

計算基礎科学連携拠点による計算科学推進体制の構築

室長 藏増 嘉伸 教授

HPCI計画と計算基礎科学連携拠点形成の歴史

革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)は、2010年代初めに、スーパーコンピュータ「京」を中核とし、多様なユーザーニーズに応える革新的な計算環境を実現するHPCIを構築するとともに、その利用を推進することを目指すものとして計画されました。その具体的な当初目標の一つとして、HPCIを用いた画期的成果を創出するとともに、主要分野において計算科学推進体制を構築すること、が掲げられました。2011年度から2015年度までの5年間推進されたHPCI戦略プログラムでは、スーパーコンピュータ「京」の計算機資源を必要とし、かつ社会的・学術的に大きなブレークスルーが期待できる分野(戦略分野)として5つの分野が選定され、その5番目である「分野5:物質と宇宙の起源と構造」は、素粒子・原子核・宇宙物理を中心とした基礎物理の分野でした。分野5の研究開発を牽引する機関(戦略機関)は、筑波大学計算科学研究センター・高エネルギー加速器研究機構・国立天文台を中心とする共同研究組織である計算基礎科学連携拠点(JICFuS:Joint Institute for Computational Fundamental Science)が担い、計算科学の成果創出と体制構築を推進しました。スーパーコンピュータ「京」は2019年8月に運用を停止しましたが、その後も、計算基礎科学連携拠点は基礎物理分野における計算科学推進の役割を担っています。

新たなスーパーコンピュータ「富岳」と今後のHPCIの利活用

2014年度以降、スーパーコンピュータ「京」の後継として、ポスト「京」(2019年5月に正式名称が「富岳」と決定)の研究開発プロジェクトが推進され、それに伴い、「ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題に関するアプリケーション開発・研究開発」として9つの重点課題が選定され、その中の重点課題9「宇宙の基本法則と進化の解明」は、HPCI戦略プログラム分野5における研究開発を発展させたものであり、実施機関として筑波大学計算科学研究センターと7つの分担機関が選ばれました。また、重点課題7「次世代の産業を支える新機能デバイス・高性能材料の創成」においても、筑波大学計算科学研究センターが分担機関として参画しました。さらに重点課題とは別に、ポスト「京」で新たに取り組むチャレンジングな課題として4つの萌芽的課題が選定され、その中の萌芽的課題1「基礎科学のフロンティア – 極限への挑戦」と萌芽的課題3「太陽系外惑星(第二の地球)の誕生と太陽系内惑星環境変動の解明」においても本センターは分担機関として参画しました。以上のような準備期間を経て、スーパーコンピュータ「富岳」は2021年3月から共用が開始され、現在は一般利用研究課題とともに早期の戦略的利活用を目指した成果創出加速プログラムが推進されています。本戦略室では、今後も継続して「富岳」およびHPCIの利活用に向けたアプリケーション開発・研究開発を推進するとともに、科学成果の創出を目指します。また、素粒子・原子核・宇宙物理おける分野の枠を越えた勉強会や研究会を開催し、基礎物理学分野の計算科学の発展を推進していきます。

(最終更新日:2021.5.25)