量子物性研究部門

研究部門主任

大谷 実 (筑波大学計算科学研究センター 教授)

博士(理学)。2000年大阪大学大学院基礎工学研究科修了。2000年より日本学術振興会研究員、2001年筑波大学助手、2003年東京大学助手、2008年産業技術総合研究所研究員、2009年主任研究員、2010年研究グループ長を経て、2021年より計算科学研究センター教授。専門は計算物質科学。

メンバー

研究分野の概要

世の中には超電導体、絶縁体、金属など多くの異なる性質を有する物質があります。我々は、ミクロの世界の基礎方程式であるシュレディンガー方程式を、大型計算機を使って解くことにより、多様な物質の性質の解明、予言、そして新しい性質をもつ物質のデザインを行っています。

研究紹介

①分野の説明

我々の周囲に存在している物質は原子から成り立っており、原子は原子核と電子で構成されています。これらの物質は、その組成や構造により様々な性質を示し、それらの利用が今日の科学技術を支えています。本部門では、多様な物質をクーロン相互作用により結合した量子多体系と捉え、計算機を用いて量子力学的な運動方程式を解きます。そして、物質のさまざまな性質の解明や新たな機能を持つ物質の探索により、次世代の技術の基盤となる知見を得ることを目指します。

②研究トピックスと成果

●光と物質の相互作用

光は物質の性質を精密に測定する手段を与えてきました。最近の光科学では、高強度で非常に短いパルス光を用いることにより、電子の超高速運動に対する実時間測定や、光による電子運動の操作が行われています。我々は時間依存密度汎関数理論をはじめとする第一原理計算手法に基づく計算により、光と物質の相互作用の解明に取り組んでいます。

●実時間・実空間計算法を用いた光科学第一原理シミュレーション法の開発

最近の光科学では、光と物質の相互作用を電子のミクロなダイナミクスから出発して記述する、新しいシミュレーション法が求められています。我々は、超並列計算に適した実空間法や実時間法を用いた密度汎関数理論に基づく第一原理計算コードSALMON (Scalable Ab-initio Light-Matter simulator for Optics and Nanoscience)の開発を、計算機科学者やセンター外の研究者と協力して進めています。SALMONはオープンソースソフトウェアとして開発しており、ウェブページhttps://salmon-tddft.jpからダウンロードが可能です。

●強相関物質、トポロジカル物質

電子の相関が強い物質や、物質の形状が性質に反映するトポロジカル物質は、バンド理論では理解できない様々な性質を示します。我々はそのような物質に対し、電子状態や相転移、光応答などの計算の手法の開発、および量子情報デバイスへの応用に関わる研究を行っています。

関連リンク:矢花グループ 小泉研究室 仝研究室 日野・前島 <光物性理論> 研究室

(最終更新日:2019.12.10)