第2回「学際計算科学による新たな知の発見・統合・創出」シンポジウム -PACS-CSによる計算科学の発展と次世代コンピューティングへの展開-

「学際共同利用プログラム」成果報告会/中間報告会のプログラムを掲載しました(9/9)
ポスターを掲載しました(8/24)
参加申込みを開始しました(8/5)。web申込みは締め切りました。

開催案内

主催 筑波大学 計算科学研究センター
日程 平成23年9月12日(月)13日(火)
プログラム こちら
会場 筑波大学大学会館 国際会議室(9月12日)
筑波大学計算科学研究センター ワークショップ室(9月13日)
懇親会 平成23年9月12日(月)18:30~
参加費 シンポジウム参加無料、懇親会4,000円

poster110912[PDF 718KB]

開催時間中はシンポジウムの模様を視聴できます。映像を見るにはリアルプレーヤーが必要です。

 *映像データの提供を終了しました。

開催趣旨

筑波大学計算科学研究センターでは、共同利用・共同研究拠点「先端学際計算科学共同研究拠点」として、諸科学の計算科学の研究者とそれを支える計算機科学の研究者の密接な協力関係のもと、最先端の大規模計算科学を推進してきました。これまで、文部科学省特別教育研究経費による「計算科学による新たな知の発見・統合・創出」事業(平成17年度~19年度)において、2560ノードの超並列計算機「PACS-CS」を開発し、平成18年6月より素粒子物理学や物性物理学をはじめとする様々な大規模計算科学の研究を進めてきました。平成19年度からは、この計算機システムは共同利用・共同研究拠点として実施する学際共同利用プログラムにおいて、共同研究の大規模計算機設備として運用されてきました。

この度、PACS-CSは平成23年9月末をもって、5年3カ月の運用期間を終了することとなりました。文部科学省をはじめとして本システムの開発・運用にご支援いただいた関係者の皆様に感謝するとともに、今回のシンポジウムにおいてはPACS-CSによって支えられた本事業を振り返り、プロジェクトの意義と成果、さらに今後の先進的計算科学の推進のためのシステムとアプリケーションの協業のあり方に関する議論を行います。これからの計算科学と次世代コンピューティングについての展開について、PACS-CSの後継プロジェクトとして、今年度から始まった文部科学省特別経費による「エクサスケール計算技術開拓による先端学際計算科学教育研究拠点の充実」事業(平成23年度~平成25年度)の計画と進捗を報告します。

プログラム

9月12日(月)13:00~18:30 筑波大学大学会館 国際会議室

※プログラムは変更する可能性があります
※当日の模様はRealNetworks社のストリーミング技術である RealMedia形式を用いてライブ中継します。

13:00 開会・学長挨拶
山田信博(筑波大学 学長)
13:05 センター長挨拶
佐藤三久(筑波大学計算科学研究センター センター長)
13:15 来賓挨拶
文部科学省ご来賓
13:25 計算科学研究センター フェロー表彰
13:30 PACS-CSプロジェクトについて
宇川 彰(筑波大学 副学長・理事)
13:50 PACS-CSについて
朴 泰祐(筑波大学計算科学研究センター 副センター長)
14:20 コーヒーブレーク
14:35 PACS-CSシステムハードウェアについて
飯島兆二(日立製作所エンタープライズ事業部 主任技師)
14:50 PACS-CSシステムソフトウェアについて
住元真司(富士通研究所 ITシステム研究所 主管研究員)
15:05 PACS-CSにおける素粒子物理学研究
蔵増嘉伸 (筑波大学計算科学研究センター 准教授 素粒子物理研究部門)
15:30 PACS-CSにおける物性物理学研究
押山 淳(東京大学大学院工学系研究科)
15:55 コーヒーブレーク
16:10 特別招待講演「京速コンピュータ『京』の現状について」
横川三津夫 (理化学研究所 次世代スーパーコンピュータ開発実施本部
       開発グループ グループディレクター)
16:40 招待講演「TSUBAME 2.0 における大規模GPUアプリケーション」
松岡 聡(東京工業大学学術国際情報センター)
17:10 「HA-PACSプロジェクト紹介」
児玉祐悦(筑波大学計算科学研究センター 教授 高性能計算システム研究部門)
17:30 「密結合加速機構研究開発」
塙 敏博(筑波大学計算科学研究センター 准教授 高性能計算システム研究部門)
17:45 「HA-PACSにおける次世代計算科学」
梅村雅之(筑波大学計算科学研究センター 副センター長)
18:05 2011年度素粒子メダル功労賞表彰式
18:15 閉会挨拶
佐藤三久(筑波大学計算科学研究センター センター長)
18:30 閉会
18:30頃 懇親会

9月13日(火)9:30~17:00 筑波大学計算科学研究センター ワークショップ室 

計算科学研究センター「学際共同利用プログラム」平成22年度 成果報告会/平成23年度 中間報告会

※プログラムは変更する可能性があります

●発表10分間+質疑2分間

  座長 朴 泰祐(筑波大学)
9:30 「複雑地形・都市を対象とした並列版LESモデルの開発とWRFモデルによる都市気候シミュレーションに関する進捗報告」
日下博幸(筑波大学)
9:42 「系統樹の新しい信頼性評価法Effective Bootstrap法の開発と現実のデータへの適用」
田邉晶史(京都大学)
9:54 「チャーモニウム原子核の可能性を探る」
佐々木勝一(東京大学)
10:06 「密度汎関数計算による核構造・核反応の研究」
中務 孝(理化学研究所)
10:18 「物質中の光伝播を記述するMaxwell-TDDFTマルチスケール・シミュレータの開発」
矢花一浩(筑波大学)
10:30 「モンテカルロ殻模型によるエキゾチックな核構造研究の中間報告」
清水則孝(東京大学)
  座長 矢花一浩(筑波大学)
10:48 「次世代型大気大循環モデルNICAMを持ちた地球環境研究と予測実験」
田中 博(筑波大学)
11:00 「EMC-MD法による極微細半導体デバイス中のキャリア輸送シミュレーション」
渡邉孝信(早稲田大学)
11:12 「第一世代天体から宇宙大規模構造に至る宇宙史解明」
梅村雅之(筑波大学)
11:24 「金属酵素反応機構解明の為の第一原理分子動力学法超並列コードの開発」
庄司光男(筑波大学)
11:36 「固液界面の大規模第一原理計算」
隅田真人(物質・材料研究機構)
11:48 「マルチコア・マルチレール・クラスタにおける計算科学アプリケーション性能特性について」
朴 泰祐(筑波大学)
12:00
-13:00
昼食
  座長 田中 博(筑波大学)
13:00 「QRPA calculation for use on passively paralleled computers」
寺崎 順(筑波大学)
13:12 「格子ゲージ理論を用いたクォーク・グルオンプラズマ相の研究」
野中千穂(名古屋大学)
13:24 「ナノスケール系の量子伝導シミュレーション」
小林伸彦(筑波大学)
13:36 「格子QCDによる K中間子崩壊振幅の研究」
石塚成人(筑波大学)
13:48 「計算機マテリアルデザイン先端研究事例」
笠井秀明(大阪大学)
14:00 「宇宙論的N体シミュレーション中の暗黒物質ハローの空間分布」
西道啓博(東京大学)
14:12 「2+1フレーバーQCDを用いた軽い原子核の研究」
山崎 剛(名古屋大学)
14:24 「ハイブリッドQM/MM計算および分子動力学計算による生体機能メカニズムの解析」
舘野 賢(兵庫県立大学)
14:36 「実空間差分法に基づく第一原理電子構造・量子輸送特性シミュレーション」
小野倫也(大阪大学)
  座長 梅村雅之(筑波大学)
15:00 「On the phase of quark determinant in lattice QCD with finite chemical potential」
武田真滋(金沢大学)
15:12 「次世代スーパーコンピュータに向けたグランドチャレンジ・アプリケーションの開発」
高橋大介(筑波大学)
15:24 「系統樹探索のための最適化アルゴリズムの構築」
田邉晶史(京都大学)
15:36 「オーダーN法DFT計算プログラムCONQUESTによる大規模並列計算」
宮崎 剛(物質・材料研究機構)
15:48 「大規模固有値問題の並列アルゴリズムとその高性能ソフトウエアの開発」
櫻井鉄也(筑波大学)
16:00 「物理的クォーク質量における1+1+1フレーバー格子QCD」
宇川 彰(筑波大学)
16:12 「格子QCDによる中間子二体系の散乱位相に関する研究」
佐々木 潔(東京工業大学)
16:24 「原子核におけるα粒子凝縮」
船木靖郎(理化学研究所)
16:36 「QCDによるバリオン間相互作用」
井上貴史(日本大学)
16:48 「RSDFTの機能拡張とナノ構造体への応用」
古家真之介(東京大学)

参加申込み

シンポジウムの参加は無料です。
懇親会(会費4,000円)に参加されない場合でも登録をお願いします。

申し込みフォーム締め切り:9月12日 9:00 (これ以降は直接受付で申し込みをお願いします。)

お問合せ

シンポジウムに関するお問い合わせは電子メールにて、
sympo2011 [at] ccs.tsukuba.ac.jp
までお送り下さい。

※[at]を@に置き換えてください

大気科学特別セミナー(2011年9月2日)

演者:Dr. Baek-Min Kim(韓国極地研究所)
演題:Arctic Warming and Cold Winter(北極温暖化と中緯度の寒冬について)

日時:9月2日(金)16:00-17:00
場所:筑波大学計算科学研究センター 会議室A

kim1109 [PDF 293KB]

Abstract(要旨)
A number of extremely cold winters have occurred in recent years over central North America, northwestern Europe, and east Asia and have exerted a severe social and economic impact in spite of the long-term global warming trend. The negative phase of the Arctic Oscillation (AO) has been suggested as a cause of these anomalous mid-latitude cold winters and a clear understanding of the cause for this negative trend in AO index embedded in the global warming becomes central to the debate. This study reviews possible mechanism of the negative AO in recent decades and focuses on the relation between Arctic amplification (warming) and recent abnormal winter variability.

近年、北極域(特にグリーンランド)の温暖化が進行する一方で、中緯度の多くの地域では毎年のように異常な寒冬に見舞われるようになった。その背後には負に転じた北極振動指数があり、その長期的変動の原因を解明することが地球温暖化研究の最前線的研究として注目されている。本講演では、その原因について考え、北極増幅メカニズム(Arctic Amplification)との関係について最新の研究成果を報告する。

日本が最も暑かった日-2007年8月16日の熊谷猛暑40.9℃の要因解明(新説)

プレスリリース

平成23年7月21日
筑波大学

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概要

ポイント

・2007年8月16日、埼玉県熊谷市で日本の観測史上最高気温となる40.9℃を記録しました。

・この要因は、断熱昇温によるフェーン現象「力学的フェーン」であると一般的には考えられていました。

・しかしながら、筑波大学計算科学研究センターの日下博幸研究室に所属する髙根雄也大学院生(大学院生命環境科学研究科(博士後期課程)地球環境科学専攻2年)が、熊谷猛暑のメカニズム解明に取り組んだ結果、力学的フェーンとは異なる、おもに3つのメカニズムによって記録的な猛暑となったことがわかりました。

  1. フェーンに類似しているが、それとは異なるタイプの山越え気流の現象(foehn-like wind)が発生していた。
  2. 前日までの連続した晴天が、このフェーンに似た現象を強めていた。
  3. このフェーンに似た風が、東京湾や相模湾からの海風と「収束線」を形成していた。

概要

筑波大学の髙根雄也大学院生(大学院生命環境科学研究科(博士後期課程)地球環境科学専攻2年)と、筑波大学計算科学研究センターの日下博幸准教授は、2007年8月16日に熊谷猛暑*1が起こったメカニズムについて新説を提案しました。

2007年8月16日の14時42分、埼玉県熊谷市で日本の観測史上最高気温となる40.9℃を記録しました。この熊谷猛暑は、これまで、上空の空気塊の断熱圧縮によって風下側の地上付近の気温上昇がもたらされる「力学的フェーン」が主な要因と考えられていました。

しかし髙根大学院生らは、この熊谷猛暑を引き起こした主要因は、力学的フェーンではなく、フェーンに類似しているものの、それとは異なる山越え気流の現象(foehn-like wind)であるという、従来とは異なる説を提唱しました。さらには、この猛暑が発生する前に晴天日が続いていたこと、フェーンに似た風が東京湾・相模湾海風と「収束線」を形成していたことも重要な要因となったことをつきとめました。これらは、過去11年間の観測データを用いた統計解析や領域気象モデルと、筑波大学計算科学研究センターのスーパーコンピュータ「T2K-Tsukuba」を使った数値実験によって明らかになりました。

この研究成果は、米国気象学会の学術誌「Journal of Applied Meteorology and Climatology」に受理され、現在、同学会のウエブサイトに掲載されています。

1.研究の背景

2007年8月16日の14時42分、埼玉県熊谷市で日本の観測史上最高気温40.9℃を記録しました。この極端な猛暑の主要因は、上空にある高い温位*2の空気塊が、風下側の地上付近まで下降することにより高温をもたらす「力学的フェーン」であると、複数の先行研究によって指摘されていました。しかしながら、いずれの先行研究においても、状況証拠に基づく定性的な説明しかなされておらず、定量的な証拠は示されていませんでした。そのため、この猛暑のメカニズムについては、仮説の域にとどまっていました。

2.研究手法

気象庁によって観測された過去11年間のデータを用いた統計解析、数値シミュレーション結果の解析;熊谷の昇温要因を定量的に調べる「カラム大気の熱収支解析」、山越え気流のルートを調べる「後方流跡線解析」、山越え気流の水平・鉛直構造を調べる「オイラー・トレーサー実験」、山越え気流の空気塊が保有する熱量の変化を調べる「ラグランジュアン熱収支解析」、山岳表面から供給された熱エネルギーの効果を調べる「土壌水分量の感度実験」など、定量的な解析を行いました。

3.成果の内容

2007年8月16日の熊谷猛暑(図1a)の形成メカニズムを、過去11年間の観測データを用いた統計解析や領域気象モデルと筑波大学計算科学研究センターのスーパーコンピュータ「T2K-Tsukuba」を使った数値実験によって解析しました。その結果、以下のことがわかりました。

  • (i) 8月16日の熊谷の日照時間は過去11年間の7、8月の統計値で72番目に高い値でした。したがって、日射は猛暑発生の必要条件ではありますが十分条件ではありません。
  • (ii) 上空1,500 m付近(850 hPa)の気温は過去11年間の7、8月の統計値で30番目に高い値でした。したがって、日本列島を覆うような大きなスケールでの高温は、熊谷猛暑の必要条件ではありますが十分条件ではありません。
  • (iii) 8月16日の前7日間は晴天日が持続していました。この連続晴天は土壌の乾燥化をもたらします。熊谷の風上の中部山岳域における土壌の乾燥化が、8月16日の熊谷猛暑に寄与していたことが、数値シミュレーションによって確かめられました。
  • (iv) 熊谷猛暑の際に風が通った道筋を調べると、大きく分けて高い高度からのものと低い高度からの2つの流れがあることがわかりました。高い高度の流れは力学的フェーン(図2)と考えられ、それに加えて別のフェーンの存在が考えられました。これを詳しく調査した結果、これは、空気塊が山岳地帯や平野部の大気境界層内を吹走する際に、地表面から加熱されながら、山岳の風下側に高温をもたらす現象(図3)であることがわかりました。通常の力学的フェーンの性格も併せ持ちますが、地面から加熱を受けながら空気塊が吹走する点が異なります。髙根大学院生らはこの現象を「foehn-like wind」と呼んでいます。
  • (v) このフェーンに似た、しかし物理的には異なる山越え気流は東京湾や相模湾からの海風と収束線を形成し(図1b)、相対的に冷たい海風の侵入を阻み、収束線の北側の高温を維持していました(図3)。

以上の要因の組み合わせ、特に、(iii)-(v) によって、2007年8月16日の記録的な猛暑が発生したことがわかりました。

2007年8月16日14時40分における地上気温 2007年8月16日14時40分における地上風の水平分布
図1:2007年8月16日14時40分における(a)地上気温と(b)地上風の水平分布

 

力学的フェーンの概念図
図2:力学的フェーンの概念図

 

foehn-like windの概念図
図3:foehn-like windの概念図

4.今後の予定

高根大学院生らは、現在、2011年6月24日に熊谷市で発生した39.8℃の猛暑(日本の6月の最高気温の記録を更新)についても、観測データの解析や領域気象モデルとT2K-Tsukubaを使用した数値シミュレーションによって、その原因を調査しています。

髙根大学院生を含む日下研究室のメンバーは熊谷市だけでなく、岐阜県多治見市も研究対象としています。2010年5月、筑波大学計算科学研究センターは多治見市と、共同研究の協定を結びました。多治見猛暑の実態と原因を探り、対策につなげるのがねらいです。2010年から継続的な調査を行っており、2年目となる2011年も7月から8月にかけて実地観測を行います。

観測と数値シミュレーションから猛暑のメカニズムを解明することは、暑さに対しての適切な対策を考えるために欠かせない材料となります。

5.関連情報

論文の概要|米国気象学会(AMS)
http://journals.ametsoc.org/doi/abs/10.1175/JAMC-D-10-05032.1?prevSearch=[all%3A+Takane]&searchHistoryKey=
*本文の閲覧には契約が必要です。契約者以外は概要(Abstract)のみ閲覧可能です。

6.用語解説

*1 猛暑:同じ日に岐阜県多治見市でも、日本の観測史上最高気温40.9℃を記録しました。

*2 温位:上空の乾燥空気塊を断熱的に基準圧力(ふつう1気圧)にもってきたときの空気塊の温度。ポテンシャル温度ともいう(日本気象学会編、気象科学事典)

問い合わせ先

筑波大学計算科学研究センター 准教授 日下博幸(Hiroyuki Kusaka)
筑波大学大学院生命環境科学研究科 博士後期課程2年 髙根雄也(Yuya Takane)

報道担当:
筑波大学広報室
電話029-853-2040 FAX 029-853-2014
筑波大学計算科学研究センター広報室
電話029-853-6487 FAX 029-853-6406 E-MAIL:pr [at] ccs.tsukuba.ac.jp

多国間国際研究協力事業(G8RCI)の採択について

プレスリリース

平成23年7月20日
筑波大学

印刷用PDF[195KB]

概要

ポイント

 国際的かつ分野横断的な研究課題をG8の多国間共同で実施するにあたり、各国の学術支援機関が資金を提供する「多国間国際研究協力事業(G8RCI)」が平成23年度から始まり、筑波大学計算科学研究センターの教員を研究代表者とする2つの研究グループが採択されました。

 79件の応募の中から採択されたのはわずか6件であり、このような高倍率の中で2件も採択されたことは、計算科学研究センターが国際的に高く評価されている表れといえます。

多国間国際研究協力事業について

 多国間国際研究協力事業(G8 Research Councils Initiative:G8RCI)は、国際的で分野横断的な研究に対して、G8各国の学術振興機関が協力して研究資金の提供を行い、多国間の共同研究を推進する事業です。3カ国以上の研究プロジェクトからなるコンソーシアム単位で採択するのが特徴です(図1)。

 2008年に京都で開催されたG8の学術支援機関長会議(G8-HORCs)において、多国間共同研究の支援事業の設立について提案があり、日本、カナダ、フランス、ドイツ、ロシア、イギリス、アメリカの7カ国が参加して事業を行うことになりました。各国の学術振興機関、日本学術振興会JSPS(日本)、NSERC(カナダ)、ANR(フランス)、DFG(ドイツ)、RFBR(ロシア)、RCUK(イギリス)、NSF(アメリカ)が協力して、研究資金の提供を行います。

 平成22年度から5年間にわたって3回の公募を実施する予定で、採用期間は2~3年間です。第1回(平成22年度)の公募テーマは「エクサスケール*1・コンピューティングを視野に入れた地球規模課題のための応用ソフトに関する学際的プログラム」で、79件の応募の中から6件の研究コンソーシアムが採択されました。1回の公募あたりの3年間の予算総額は、全参加学術支援機関を合わせて、およそ1000万ユーロ(約11億2000万円)です。

研究コンソーシアムの例

図1 研究コンソーシアムの例(提供:日本学術振興会)

筑波大学計算科学研究センターが関係する研究コンソーシアム

 第1回公募で採択された6件のコンソーシアムのうち2件で、筑波大学計算科学研究センターの教員を研究代表者とするプロジェクトが採択されました。佐藤三久教授(センター長)は「ECS:エクサスケール・コンピューティングによる精緻な気候シミュレーションの実現」において、朴 泰祐教授(副センター長)は「NuFuSE:エクサスケール・コンピューティングにおける核融合シミュレーション」においてです。

○ ECS:Enabling Climate Simulation at Extreme Scale
エクサスケール・コンピューティングによる精緻な気候シミュレーションの実現
研究プロジェクト代表者 佐藤三久教授(筑波大学計算科学研究センター長)

 「ECS」には日本のほか、アメリカ、フランス、ドイツ、スペイン、カナダの6カ国の研究者が参加します。エクサスケール・コンピューティングでは、超高解像度のモデルの導入や、より複雑な計算ができるようになり、より精度の高い気候変動予測が可能になります。このプロジェクトにはアメリカのBlue Waters、スペインの Marenostrum2 、ドイツのJUGENEが使用されます。日本では、京速コンピュータ「京」とTSUBAME2.0のほか、筑波大学計算科学研究センターのT2K-Tsukubaが使用されます。

 また「ECS」の国内研究プロジェクトとしては、佐藤センター長のプロジェクト以外に、東京工業大学学術国際情報センターの松岡 聡教授のプロジェクトも選ばれています。

 「ECS」は3年間で総額約125万ユーロ(約1億4000万円)の研究経費を見込んでおり、佐藤センター長のプロジェクトには日本学術振興会から3年間で約1600万円が提供される予定です。


○ NuFuSE:Nuclear Fusion Simulations at Exascale
エクサスケール・コンピューティングにおける核融合シミュレーション
研究プロジェクト代表者 朴 泰祐教授(筑波大学計算科学研究センター副センター長)

 「NuFuSE」はイギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、ロシアを含めた6カ国の研究者らと協力して研究を行います。核融合反応は恒星のエネルギー源であり、将来のエネルギー資源として期待されています。国際熱核融合実験炉(ITER)などの大規模実験を進める上で重要となる、GT5D、GKV、MEGA、GpicMHD等*2の国内開発核融合シミュレーションコードのエクサスケールに向けた大規模並列化・高性能化を、計算工学と計算機科学の協調と、多国間協力関係の下で進めます。さらに新しい世代の並列言語による核融合シミュレーションコード開発にも挑戦します。

 これらを実現するためには、アプリケーション(計算科学)からシステム(計算機科学)への全領域において国際的な連携が必要です。具体的にはまず、アプリケーション側で各国内のコード開発を進め、システム側はそれをサポートするという国単位のローカルな形で進めます。一方で、アルゴリズム、コード、システムのレベルごとに、国際的に連携しつつ最適化を議論していくことになります。

 このプロジェクトではT2K-Tsukubaのほか、青森県六カ所村のITERマシン、核融合科学研究所のスーパーコンピュータを用います。さらにプロジェクトの後半には、筑波大学計算科学研究センターに導入される次世代スーパーコンピュータにも展開する予定です。

 「NuFuSE」は3年間で総額約175万ユーロ(約1億9600万円)の研究経費を見込んでおり、朴副センター長のプロジェクトには日本学術振興会から3年間で約2600万円が提供される予定です。

用語解説

*1 エクサスケール:エクサは1018を表し、エクサスケールのスーパーコンピュータでは1秒間に1018回の演算が可能になります。これは京速コンピュータ「京」の100倍の速さに相当します。

*2 GT5D, GKV, MEGA, GpicMHD等:核融合シミュレーションでは、磁気流体力学に基づく場のシミュレーションと粒子シミュレーションを複合的に行う必要があり、様々な手法が研究されています。これらのシミュレーションプログラムは、日本国内で研究開発が進められている国際的にも認知されているもので、どのような計算手法を用いるかがそれぞれ異なります。いずれも高精度・大規模なシミュレーションを行うべく開発が進められています。

関連情報

  日本学術振興会(JSPS)ホームページ
事業概要:http://www.jsps.go.jp/j-bottom/01_b_gaiyo.html
申請・採用状況:http://www.jsps.go.jp/j-bottom/04_b_jyoukyou.html
DFG(第1回公募事務局)ホームページ
http://www.dfg.de/en/research_funding/international_cooperation/research_collaboration/g8-initiative/
「ECS」研究課題概要:
http://www.dfg.de/download/pdf/foerderung/internationale_kooperation/g8-initiative/enabling_climate_simulation.pdf
「NuFuSE」研究課題概要:
http://www.dfg.de/download/pdf/foerderung/internationale_kooperation/g8-initiative/nuclear_fusion.pdf
「ECS」フランス研究代表者所属機関(INRIA)発表資料
http://en.inria.fr/news/news-from-inria/g8-enabling-climate-simulation
 

問い合わせ先

担当者:
佐藤三久(筑波大学計算科学研究センター教授/センター長)
朴 泰祐(筑波大学計算科学研究センター教授/副センター長)

報道担当:
筑波大学計算科学研究センター広報室
電話 029-853-6487 FAX 029-853-6406 E-mail:pr [at] ccs.tsukuba.ac.jp
筑波大学広報室
電話 029-853-2040 FAX 029-853-2014

「三好甫先生記念 計算科学シンポジウム」9/10(土)開催

三好甫先生記念 計算科学シンポジウム

初代地球シミュレータの生みの親である三好甫先生の、没後10周年を記念した計算科学シンポジウムが開催されます。スーパーコンピュータの開発あるいはユーザーとして携わった方々による講演、さらに、会場を交えた議論の場も準備されています。
これからのスーパーコンピュータの高度利用、研究開発の担い手となる若手の方々を含め、多くの皆さまのご来場をお待ちしています。

詳しくはこちらをご覧ください。

日時:2011年9月10日(土)10:00~17:20
場所:工学院大学新宿キャンパス高層棟3F アーバンテックホール

参加:8月10日(水)までに、こちらから事前申込みをお願いします。参加費は無料です。
 ※ シンポジウム終了後に、懇親会が用意されています(会費\3,000)

主催:三好甫先生記念計算科学シンポジウム実行委員会
協賛(順不同):
 (独)宇宙航空研究開発機構 研究開発本部
 筑波大学計算科学研究センター
 (独)海洋研究開発機構 地球シミュレータセンター
 (独)日本原子力研究開発機構 システム計算科学センター
 HPF推進協議会
 日本電気株式会社
 株式会社日立製作所
 富士通株式会社

講演者

◆基調講演
 山本卓眞氏:富士通(株)顧問

◆ユーザーサイドから見たこれまでの経験と将来像
 数値風洞NWT 松尾裕一氏:元 科学技術庁航空宇宙技術研究所(現 JAXA)
 計算物理学計算機CP-PACS 金谷和至氏:元 筑波大学計算物理学研究センター(現 筑波大学)
 地球シミュレータES 谷 啓二氏:元 地球シミュレータ研究開発センター(現 日本アドバンストテクノロジー(株))

◆システムサイドから見たこれまでの経験と将来像
 数値風洞NWT 北村俊明氏:元 富士通(株)(現 広島市立大)
 計算物理学計算機CP-PACS 河辺 峻氏:元 (株)日立製作所(現明星大学)
 地球シミュレータES 平野 哲氏:元 日本電気(株)(現 JAMSTEC)

展示コーナー

三好先生に関わる想い出の品、関連ハードウェア・モジュール、ポスター、設計資料、成果事例などの展示を行います。

記者会見「合体で巨大化するブラックホール」(6月13日、日本天文学会)

東日本大震災のために延期となっていた(社)日本天文学会・春季年会における記者会見が6月13日に国立天文台にて行われ、当センター所属の研究者が発表を行いました。

「合体で巨大化するブラックホール -高精度シミュレーションが解き明かす巨大ブラックホールの謎-」

記者会見出席者:
梅村雅之・筑波大学計算科学研究センター教授
谷川 衝・筑波大学計算科学研究センター研究員

概 要:
様々な銀河の中心部に巨大なブラックホールが観測されているが、まだその起源は明らかにされていない。標準銀河形成論では、多数の銀河の合体によって、より大きな銀河が生まれると考えられている。元の銀河がブラックホールを持っていれば、合体後の銀河の中に多数のブラックホールが浮かんでいることになるが、これでは観測事実を説明できない。我々は宇宙シミュレータFIRST(筑波大学)を用い、銀河内の多数のブラックホールについて、一般相対論の効果を入れた高精度重力計算を世界で初めて実現した。10個のブラックホールと50万個の星について、1億年にわたる進化を追跡した結果、ブラックホールが銀河の中心部で連続的な合体を起して巨大化することが明らかとなった。これは、銀河中心の巨大ブラックホールの起源を解き明かす上で、マイルストーンとなる発見である。この成果は、Astrophysical Journal Letters に掲載された。

研究の解説はこちらをご覧ください。

問い合わせ先:
梅村雅之 umemura[at] ccs.tsukuba.ac.jp([at]を@に変えてください)

メディア掲載情報

日本経済新聞(6/14)、毎日新聞(6/14)AstroArts(6/15)

研究紹介:地球環境研究部門紹介に火山灰拡散の動画を掲載しました

「火山灰追跡モデルPUFFを用いた2010年4月のアイスランド火山灰の輸送拡散数値実験」の動画(作成:邉見萌乃、天笠俊之、田中 博)を掲載しました。これは、2010 年4 月にアイスランド南部に位置するEyjafjallajokull (エイヤフィヤトラヨークトル)火山が噴火した際の火山灰の広がりを再現したものです。地球環境研究部門と計算情報学研究部門データ基盤分野の共同研究成果です。

動画はこちらからご覧いただけます。

アメリカからの計算資源提供について-素粒子理論研究者らの国際協力が実現-

プレスリリース

平成23年5月24日
国立大学法人 筑波大学
大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構

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概要

ポイント

○ 平成23年3月11日に発生した東日本大震災に伴う電力不足により、各研究機関においてスーパーコンピュータの運用が今も制限されています。
○ このような状況の中、アメリカの素粒子理論研究者らで構成される「USQCD Collaboration*1」から日本の同分野の「格子場理論*2フォーラム」に対し、計算資源提供による国際協力の提案がありました。
○ この提案に対し両者間で調整を重ねた結果、今般合意に至り、5月19日からフェルミ国立加速器研究所(FNAL)トーマス・ジェファーソン国立加速器施設(Jefferson Lab)ブルックヘブン国立研究所(BNL)のスーパーコンピュータの利用を開始することとなりました。

概要

 日本の素粒子理論研究者らが構成する「格子場理論フォーラム」(代表:宇川 彰・筑波大学副学長・理事)は、アメリカの研究機関から計算資源(スーパーコンピュータ)の提供を受ける形での国際協力について、USQCD Collaboration(代表:Paul Mackenzie・フェルミ国立加速器研究所)と合意し、5月19日に利用を開始しました。国際協力が実現したのは、素粒子理論分野の中でも、計算機シミュレーションにより量子色力学*3(QCD:Quantum Chromodynamics)の研究を行う「格子QCD」のコミュニティです。

 2011年3月11日に起こった東日本大震災に伴う電力不足により、東日本にある研究機関のスーパーコンピュータの運用は大きく制限され、格子QCDの研究にも影響が出ています。そのような中、同分野の世界的な研究コミュニティの一員であり、従来は研究上の激しい競争相手でもあったUSQCD Collaborationから日本を支援する声があがりました。交渉を進めた結果、アメリカの3つの研究機関(FNAL・Jefferson Lab・BNL)が計算資源の一部を無償で提供する形で、国際協力が実現しました。

 格子場理論フォーラムは、FNAL、Jefferson Labに設置されたスーパーコンピュータのおよそ1割、22TFlopsを上回る計算資源を約半年間にわたり使用します。これは、当該研究コミュニティが従来使用していた計算資源のおよそ1割に相当する量です。その他BNLからも、計算資源の一部が提供されます。なお、日本側研究者は、インターネットを通じて日本からこれら米国研究機関のスーパーコンピュータを使用することとなります。
今回の協力実現は、格子QCDコミュニティの国際的な結びつきの強さを示すもので、日米の研究者らは、これを機に国際共同研究など研究上の協力関係が深まることを期待しています。

用語解説

*1 USQCD Collaboration:アメリカの格子QCD研究コミュニティの組織。研究計画の推進、計算資源の整備、配分等に関する協議を行っている。
USQCDウエブサイト http://www.usqcd.org/collaboration.html

*2 格子場理論:素粒子の基礎理論はゲージ場の理論と呼ばれる、空間のあらゆる点に物理的自由度をもつ理論を基にしている。連続空間を格子で近似し、自由度を格子点上に限定することで、理論について計算機シミュレーションを用いて解析することが可能になる。量子色力学の研究等で広く用いられている。同フォーラムは、これらについて討論している日本の格子QCD研究コミュニティ。

*3 量子色力学:自然界の4つの基本相互作用の一つ、「強い相互作用」の基礎理論。相互作用が強いという特質をもち、クォークの閉じ込めや自発的対称性の破れといった現象を起こす。理論計算が非常に難しく、スーパーコンピュータを用いた大規模シミュレーションによる計算で、その性質が研究されている。

参考

イギリスの工学・物理科学研究会議(EPSRC)からは、科学技術振興機構(JST)を通じて、震災の影響を受けた研究者への計算資源提供の申し出がなされ、ヨーロッパからも支援の声があがっています。

問い合わせ先

「格子場理論フォーラム」代表
宇川 彰(筑波大学副学長・理事)
青木慎也(筑波大学計算科学研究センター教授)
橋本省二(高エネルギー加速器研究機構教授)

<取材に関する窓口>
筑波大学計算科学研究センター広報室 吉戸智明
電話 029-853-6487 FAX 029-853-6406 E-mail:yoshito [at] ccs.tsukuba.ac.jp
筑波大学広報室
電話 029-853-2040 FAX 029-853-2014
高エネルギー加速器研究機構 広報室長 森田洋平
電話 029-879-6047 Fax 029-879-6049 E-mail:press [at] kek.jp

スーパーコンピュータがとらえたクォーク6個からなる粒子「H-ダイバリオン」

プレスリリース

2011年4月21日
学校法人日本大学
国立大学法人筑波大学

印刷用PDF[288KB]

概要

ポイント

・30年以上にわたり存在が確認できなかったクォーク6個からなる粒子「H-ダイバリオン」が、スーパーコンピュータを用いた大規模シミュレーションにより捉えられました。

・H-ダイバリオンの解明をきっかけに、天然には存在しない原子核の研究が進展すると期待されます。

・中性子星の内部構造や超新星爆発など宇宙の物理現象に関する新たな知見の獲得にもつながります。

概要

日本大学生物資源科学部の井上貴史助教、筑波大学計算科学研究センターの青木慎也教授、石井理修准教授、東京大学大学院理学系研究科の初田哲男教授をはじめとする研究グループ(HAL QCD Collaboration)は、クォーク6つからなる粒子「H-ダイバリオン」の解明への端緒を開きました。この成果は、筑波大学計算科学センターのスーパーコンピュータT2K-Tsukubaを用いた大規模数値シミュレーションによるものです。

H-ダイバリオンは、1977年にロバート・ヤッフェ博士により存在を予言された粒子です。ところが、長年の理論的研究や粒子加速器を用いた実験的探査にも関わらず、現在に至るまでその存在は確認できていません。H-ダイバリオンはクォーク6つがコンパクトにまとまった粒子で、通常の原子核とは全く異なった性質を持ちます。

研究グループは、クォークの基礎理論である量子色力学(QCD)を大規模数値シミュレーションで解く「格子QCD」という手法に、計算上の様々な困難を打破する独自の工夫を加えて、SU(3)極限とよばれる理想的状況におけるH-ダイバリオンの質量や空間的大きさなどを明らかにしました。

今回の研究は、H-ダイバリオンだけでなく、粒子加速器でしか作れないストレンジクォークやチャームクォークを含む新しい原子核の研究にもつながります。それらは、中性子星の内部構造や超新星爆発を理解する鍵となるだけでなく、茨城県東海村で稼働を始めた大強度陽子加速器施設J-PARC における実験的研究とも密接に関係しています。

この研究成果は、米国物理学会の『フィジカル・レビュー・レター』誌2011 年4月22日号およびオンライン版(4月20日更新)に掲載されます。また、本研究は4月22日号のハイライトに選定されました。冒頭に、エディターによる概要が掲載されます。

1.背景

原子核を構成する陽子や中性子を総称してバリオン1とよびます。1964年、マレー・ゲルマン博士(1969年ノーベル物理学賞受賞)は、このバリオンが3つのクォーク2で構成されるとするクォーク模型を提唱しました。

さらに、小林 誠博士、益川敏英博士(2008年ノーベル物理学賞受賞)は、クォークが全部で6種類あることを予言しました。質量の軽い順に、アップ、ダウン、ストレンジ、チャーム、ボトム、トップとよびます。また、クォークを支配する理論は量子色力学3であることもわかりました。しかし、量子色力学は、クォーク間の相互作用を媒介するグルーオン4が互いに複雑な相互作用をするために、解くことが極めて難しく、バリオンの性質を理論的に導くことができませんでした。

そこで、量子色力学の重要な特徴を備えつつも扱いやすい理論を作り、バリオンなどの性質を調べる研究が盛んに行われました。これを有効模型といいます。1977年、ロバート・ヤッフェ博士は、バッグ模型とよばれる有効模型を用いて、6つのクォークがコンパクトにまとまった粒子が存在する可能性に気づきました(図1)。この粒子は2つのストレンジクォーク2を含みます。これは、バリオンの一種であるラムダ粒子2が2つあるのと同じ構成です。そのため、バリオン2つぶんという意味でH–ダイバリオンとよばれています。

H–ダイバリオンの存在には、クォークの持つ軌道、スピン、フレーバー2、カラーの自由度とフェルミ統計性5が本質的に重要です。他の有効模型を用いた研究からもその存在は示唆されています。H–ダイバリオンは、バリオンにもメソン6にも分類されない“エキゾチックな”ハドロン6で、存在が確定した場合の物理学へのインパクトは非常に大きなものです。そのため、粒子加速器を用いた探査実験が数多く行われましたが、残念ながら現在まで発見されていません。また、H–ダイバリオンが、有効模型から予想されるにすぎない粒子であるとして、その存在に否定的な研究者も少なくありませんでした。
h-dibaryon1

図1 バリオン、メソン、H-ダイバリオンの模式図。u:アップクォーク、d:ダウンクォーク、s:ストレンジクォーク。バー(-)は反クォークを、矢印(↑)はスピンを表している。

2.研究方法1:格子ゲージ理論と高性能スーパーコンピュータ

量子色力学の複雑な計算を可能にする方法として、ケン・ウィルソン博士(1982年ノーベル物理学賞受賞)により提唱されたのが、格子ゲージ理論7です。これは量子色力学を連続的な4次元時空間ではなく、離散的な4次元格子空間上に構築するもので、スーパーコンピュータを使った大規模数値シミュレーションに適しています。近年、陽子や中性子の質量の精密計算が、この手法で可能になりました。日本はアメリカやヨーロッパにならび、格子ゲージ理論研究を世界的にリードしています。特に筑波大学計算科学研究センターは、多くの世界的な研究成果をあげています。

今回、日本大学、筑波大学をはじめとする研究チームは、この格子ゲージ理論をバリオン2個、すなわちクォーク6個の系に適用し、8種類のバリオンの組み合わせやスピンによる相互作用の違いを調べ、同時にH–ダイバリオンの存在を探りました。数値シミュレーションの第一段階に必要な数値データについてはPACS-CS Collaboration*8の協力を得ると同時に、高性能スーパーコンピュータT2K-Tsukuba*9を用いることで、膨大な計算を実行しました。

3.研究方法2:従来にない独自の手法

従来は、格子ゲージ理論を用いたとしても、H–ダイバリオンの存在を判定することは困難でした。それは次の理由によります。
(a) クォーク6 個の伝播を計算すると、数値データがノイズで占められてしまう。
(b) クォーク6 個を格子空間に収めるために、極めて大きな空間体積が必要となる。
(c) 空間体積を大きくするとエネルギー固有状態10の分離が難しくなる。

この中で、(a)と(b)は計算時間の問題ですが、(c)は原理的な困難です。なぜなら、従来の方法では、さまざまな物理量はエネルギー固有状態を通して導かれていたからです。それに対し、我々は数値シミュレーションからバリオン同士にはたらく相互作用ポテンシャルを導き、そのポテンシャルを用いて物理量を計算するという独自の手法を用いました。この手法では空間体積を必要最小限に抑えることができ、かつ、エネルギー固有状態を分離する必要がないため、(b)と同時に原理的な困難(c)を解決することができました。

これに加えて、フレーバーSU(3)極限とよばれる理想的世界を調べたことも、H–ダイバリオンの存在を判定するのに役立ちました。SU(3)極限は、3種類のクォーク(アップ、ダウン、ストレンジ)の質量を共通に設定することで実現できます。現実世界からそれほどかけ離れてはいないこの極限では、H–ダイバリオンが現れるチャンネル11(フレーバー1重項チャンネル)があらかじめわかっているので、計算時間が大幅に少なくて済むのです。

4.主な結果

図2は、格子ゲージ理論の大規模数値シミュレーションで得られた結果の一例です。赤い点は、フレーバー1重項チャンネルのポテンシャルをさまざまな距離に対してプロットしています。ポテンシャルは距離によらず右上がりになっていることがわかります。右上がりは引き合う力を意味するので、このポテンシャルは、「どんなに近づいても引き合う力がはたらく」ことを表しています。

距離によらず右上がりのポテンシャルは、バリオンの世界ではこのチャンネルだけに見られる特別な性質です。他のチャンネル、たとえば陽子と中性子では、ポテンシャルは図3のように至近距離では右下がりになります。これは近づき過ぎると斥け合う力がはたらくことを意味し、「斥力芯」とよばれています。フレーバー1重項チャンネルには斥力芯が存在せず、逆に「引力芯」が存在しているのです。この近づいても引き合う性質から、2つのバリオンが1つに融合している可能性が予想されます。

計算結果をさらに詳細に調べることで、フレーバー1重項チャンネルでは、クォーク6つがコンパクトにまとまった粒子「H-ダイバリオン」が存在していることが明らかになりました。図2の緑の線は、数値シミュレーションで得られたポテンシャルから求めた波動関数12とよばれる量です。波動関数はバリオンの存在確率に関係する指標なので、この結果は2つのバリオンが非常に狭い領域に集まって存在していることを示しています。
h-dibaryon2

図2 フレーバー1重項のポテンシャル(赤い点)とH–ダイバリオンの波動関数(緑の線)。格子ゲージ理論とスーパーコンピュータを用いて、世界で初めて明らかになった。

h-dibaryon3

図3 図2と同じ手法で得られた陽子と中性子の間のポテンシャル。これは実験的に確認されている核力のさまざまな性質と、定性的に良く一致している。

5.意義

今回明らかになった、フレーバー1重項チャンネルにおける斥力芯の消失とH–ダイバリオンの存在は、クォークの持つスピン、フレーバー、カラーの自由度とフェルミ統計性を合わせると定性的に理解できます。今回の成果は、物質世界におけるクォークの重要性を端的に表しています。つまり、クォークはハドロンの中に閉じ込められていて単独では存在できないにもかかわらず、物質世界のあり方に大きな影響を及ぼしていることが、今回の研究成果で明らかにされたわけです。

また、ストレンジクォークを複数含む系では、斥力芯の消失やH-ダイバリオンの出現など、通常では見られない現象が起きることがわかりました。これらの事実は、より多くのストレンジクォークを含む中性子星13の中心部などを理解する上で重要な鍵となります。

今回は計算量を抑えるためSU(3)極限という理想的世界を調べましたが、その結果から、現実世界でも比較的長い寿命を持ったH–ダイバリオンが存在する可能性が強く推察されます。これは、茨城県東海村で稼働を始めた大強度陽子加速器施設J-PARC*14を用いた、今後のH–ダイバリオン探査実験やストレンジネス15核物理の理論的支柱を与えることにもなります。今後、我々は京速コンピュータ「京」16を用いてこの研究を継続し、現実世界におけるH–ダイバリオンの質量や寿命について詳細な計算を行う予定です。

6.論文

米国物理学会『フィジカル・レビュー・レター』誌4月22日号:
Takashi Inoue, Noriyoshi Ishii, Sinya Aoki, Takumi Doi, Tetsuo Hatsuda, Yoichi Ikeda, Keiko Murano, Hidekatsu Nemura, Kenji Sasaki, “Bound H-dibaryon in Flavor SU(3) Limit of Lattice QCD” Physical Review Letters (2011)

参考文献

基礎物理学研究所と日本物理学会『プログレス・オブ・セオレティカル・フィジクス』誌:
Takashi Inoue, Noriyoshi Ishii, Sinya Aoki, Takumi Doi, Tetsuo Hatsuda, Yoichi Ikeda, Keiko Murano, Hidekatsu Nemura, Kenji Sasaki “Baryon-Baryon Interactions in the Flavor SU(3) Limit from Full QCD Simulations on the Lattice” , Progress of Theoretical Physics, Vol. 124, No. 4, October 2010, pp.591-603

7.用語解説

*1 バリオン:3つのクォークから構成される粒子。陽子、中性子のほか、ラムダ粒子、デルタ粒子などがあります。

*2 クォーク:物質を構成する基本要素。軌道とスピンに加え6種類のフレーバー(アップ、ダウン、ストレンジ、チャーム、ボトム、トップ)と3種類のカラー(赤、青、緑)を持ちます。陽子はアップクォーク2つとダウンクォーク1つ、中性子はアップクォーク1つとダウンクォーク2つ、ラムダ粒子はアップクォーク、ダウンクォーク、ストレンジクォーク1つずつからなります。

*3 量子色力学(Quantum Chromodynamics):クォークおよび、クォーク間の相互作用を媒介するグルーオンを支配する基本理論。ゲージ理論の一種。南部陽一郎博士(2008 年ノーベル物理学賞受賞)がその原型を提唱しました。グロス博士、ウィルチェック博士、ポリツァー博士らが量子色力学の重要な性質である漸近自由性(高エネルギーになるほど相互作用が弱くなる現象)を理論的に発見し、2004年ノーベル物理学賞を受賞しました。

*4 グルーオン:クォーク間の強い相互作用を媒介します。グルーオン同士にも相互作用がはたらきます。

*5 フェルミ統計性:量子力学における粒子の統計的性質。フェルミ・ディラック統計とボーズ・アインシュタイン統計があり、クォークは前者に従います。フェルミ・ディラック統計には「2つの粒子は同一の状態を占められない」などの特徴があります。

*6 ハドロン:強い相互作用をする粒子の総称。バリオンやメソン(クォーク1つと反クォーク1つからなる粒子)がこれに含まれます。

*7 格子ゲージ理論:量子色力学などのゲージ理論を、時空に超立方格子を導入して定式化する理論。モンテカルロ法などを使ったゲージ理論の大規模数値シミュレーションに適しています。

*8 PACS-CS collaboration:筑波大学のスーパーコンピュータPACS-CSを利用して格子ゲージ理論の研究をするグループ。

*9 T2K-Tsukuba:筑波大学・東京大学・京都大学の3大学間で結ばれたT2Kオープンスーパーコンピュータ提携に基づき、2008年6月、筑波大学に導入された大規模PCクラスタ。2011年現在、国内トップクラスの性能を持ちます。

*10 エネルギー固有状態:量子力学においてエネルギーが定まった状態。

*11 チャンネル:散乱する2粒子の状態を、粒子の種類、合計スピン、相対軌道角運動量などで分類したときの呼称。

*12 波動関数:量子力学において粒子の波動的状態を表すのに用いられる関数。その絶対値二乗が粒子の存在確率を表します。

*13 中性子星:半径が約10 km、重さは太陽質量の1~2倍の高密度天体で、中心部は主として中性子やハイペロンの液体になっています。大質量星が超新星爆発を起こした後に残ると考えられています。

*14 J-PARC:高エネルギー加速器研究機構と日本原子力開発研究機構が共同で茨城県那珂郡東海村に建設した、大強度陽子加速器を中心とする施設。2009 年から稼働を開始し、理工学のさまざまな研究に使用されています。

*15 ストレンジネス:ストレンジクォークが持つフレーバー量子数。ストレンジクォークを含むバリオンをハイペロンとよび、ハイペロンを含む原子核はハイパー核とよばれます。

*16 京速コンピュータ「京」:理化学研究所を中心に開発が進められている次世代スーパーコンピュータシステム。

問合せ先

担当者:
日本大学生物資源科学部助教 井上貴史(Takashi Inoue)
筑波大学計算科学研究センター教授 青木慎也(Sinya Aoki)
筑波大学計算科学研究センター准教授 石井理修(Noriyoshi Ishii)

報道担当:
日本大学生物資源科学部庶務課
電話 0466-84-3800 FAX 0466-84-3805
筑波大学計算科学研究センター広報室
電話 029-853-6487 FAX 029-853-6406 E-MAIL:yoshito [at] ccs.tsukuba.ac.jp

今後のスーパーコンピュータ利用者に対する情報基盤センターからの利用支援について

電力需給逼迫に伴い、本センターのスーパーコンピュータ利用者は、中長期的に利用制限せざるえない可能性があります。これに呼応して、北海道大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の各情報基盤センターから可能な範囲での計算資源提供の申し出を頂いております。今後、利用者の皆様に具体的にどのように提供していくか検討した後、皆様にアナウンスする予定です。

この支援計画は、「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ (HPCI) 」構築の準備段階の活動として実施する予定です。

なお、5大学の計算資源提供の取り組みは、東北大学、東京大学、東京工業大学にも行われます。

2011年3月25日
計算科学研究センター長 佐藤三久

新たな分割型イントロンを寄生性真核生物ゲノムで発見 ―イントロンの切り出し機構を使って分断遺伝子を合体―

 プレスリリース
 

2011年2月11日
国立大学法人筑波大学

印刷用PDF[181KB]

概要

筑波大学計算科学研究センターの稲垣祐司准教授橋本哲男教授の研究グループは、Giardia intestinalisと呼ばれる寄生性真核生物が、分断された遺伝子コピーをタンパク質合成直前に結合させる「分割イントロン」領域を持つことを発見しました。この研究は金沢大学、ダルハウジー大学(カナダ)の協力を得て行われ、2011年2月10日発行の米論文誌『Current Biology』オンライン版で発表されました。

すべての生物は、ゲノムと呼ばれる生命活動を行うための設計図を持っています。ここには、生命活動に必要な道具であるタンパク質やRNAを作り出すための遺伝子と呼ばれる領域があります。イントロンは、我々ヒトを含む真核生物が遺伝子内に持っており、タンパク質合成において使用されない領域です。

今回、Giardia intestinalisがある種の遺伝子をイントロンごと断片化し、イントロン部分を“のりしろ”として断片化された遺伝子を完全なものに組み立てることがわかりました。このタイプのイントロンはヒトでは見つかっておらず、副作用の無い薬剤開発に役立つ可能性があります。

 

1.背景

我々ヒトを含めた真核生物のゲノムは核膜に覆われており、生物の「基本設計図」として多数の遺伝子と、遺伝子の調節領域を含みます。生物種ごとにゲノムの大きさや構造は多様ですが、真核生物ゲノムに共通する特徴の一つは、その遺伝子中にスプライセオソーマルイントロン(以下イントロンと記述する)が存在することです。

たとえば、ヒトでは全遺伝子の85%、陸上植物シロイズナズナでは79%がイントロンを含んでいることがわかっています。遺伝子からタンパク質が合成される過程で、遺伝子のDNA配列はまず伝達RNA(mRNA)と呼ばれる中間物質にコピーされます。この際、mRNA中のイントロンはスプライセオソームと呼ばれるRNA-タンパク質複合体により取り除かれ(スプライシング)、残りの領域(エキソン)が互いに結合することにより成熟したmRNAとなります(通常型、図1左)。mRNAはイントロンの除去などが行われた後、タンパク質合成に使用されます。一般に、真核生物の遺伝子には多数のイントロンが存在するので、遺伝子→mRNA→タンパク質という遺伝情報のスムーズな伝達のために、イントロンを効率的に除去しています。

最近、多数の真核生物種のゲノムが解析されています。この過程では遺伝子の種類や数をまず理解する必要がありますが、そのためには遺伝子中のイントロンを正確に同定しなければなりません。


図1 通常型イントロン(左)と分割イントロン(右)のスプライシング

2.研究手法

単細胞真核生物Giardia intestinalis(図2)は、ヒトなどの腸管内に寄生し、血便を伴わない激しい下痢症状を引き起こします。また、この生物が最も祖先的真核生物の一つであるとの説もあり、公衆衛生上だけでなく基礎生物学において極めて重要な生物です。

我々は、Giardiaのゲノムデータと網羅的発現RNAデータを比較することで、ゲノム中の極めて遠く離れた領域に分割してコードされているタンパク質遺伝子を同定しました。その断片化した遺伝子から発現したRNAに、標識したDNA断片(DNAプローブ)を結合させ、その大きさを調べました。また、RNAを一本鎖DNAに変換した後PCR増幅すること(逆転写PCR)で、目的遺伝子のRNA塩基配列や高次構造を推定しました。これらの実験は、金沢大およびダルハウジー大から提供された材料および情報をもとに、筑波大において行われました。


図2 Giardia intestinalis光学顕微鏡写真

3.研究成果

これまでGiardiaゲノム中にイントロンを探索した研究では、わずか4つのイントロンしか見つかっていません。このイントロン数は他の真核生物のイントロン数と比べ驚異的に少なく、イントロンと真核生物ゲノムの進化を考える上で非常に重要な生物といえます。

Giardiaゲノムでは、タンパク質の立体構造調整に関わる遺伝子(HSP90)および細胞運動に関わる遺伝子(OAD)が2つもしくは3つの断片に分断され、互いに離れた領域にコードされています。標識DNAプローブを用いて目的mRNAを調べた結果、この分割化された遺伝子断片は、まず未成熟mRNAとして別々にコピーされ、その後未成熟mRNAが正確な並び順で結合し、最終的に一つの成熟したmRNAとなることがわかりました(図1右)。

ではどのように2つの未成熟mRNAが成熟mRNAに結合されるのでしょうか。逆転写PCRにより、未成熟mRNA配列から除去される領域の塩基配列を決定したところ、これまで同定されたGiardiaの通常型イントロンと同じ配列モチーフがあることがわかりました。また、この領域の塩基配列には、結合すべき未成熟mRNA同士の特異的結合を補助する役割を持つと考えられる部位も存在しました。

また、未成熟mRNAから切り出された分割イントロンの構造を調べた結果、スプライセオソームにより削除されたイントロン断片に特異的な高次構造を取ることがわかりました。この実験データとイントロンの塩基配列情報から、確かにこの分割イントロンはスプライセオソームによって切り出されると考えられます。

4.今後への期待

Giardiaゲノムには通常型と分割のイントロンがほぼ同数存在することから、Giardiaのスプライセオソームは通常型と分割を両方認識するための特殊な構造である可能性があります。分割イントロンの削除に直接関与するスプライセオソームの構成因子を標的にすることで、ヒトや家畜に感染したGiardiaを体内から選択的に駆除できる薬剤開発も可能となるでしょう。

今回Giardiaで発見された分割イントロンに似た構造を持つイントロンは、線虫Caenorhabditis elegansでたった一例の報告があります。線虫と進化的に遠縁であるGiardiaが共通して構造的に似た分割イントロンを持つという事実により、他の真核生物ゲノム中でも分割イントロンが存在することを否定できなくなりました。Giardiaにおける分割イントロンの発見を契機に、これまで想像していなかった真核生物ゲノムの複雑性が明らかになるかもしれません。

問合せ先

担当者:

筑波大学計算科学研究センター准教授 稲垣祐司(Yuji Inagaki)

筑波大学大学院生命環境科学研究科教授 橋本哲男(Tetsuo Hashimoto)

報道担当:

筑波大学広報室
TEL:029-853-2040   FAX:029-853-2014
E-MAIL:kohositu [at] un.tsukuba.ac.jp (@を[at]と表示しています)

筑波大学計算科学研究センター広報室
TEL:029-853-6487   FAX:029-853-6406
E-MAIL:yoshito [at] ccs.tsukuba.ac.jp

平成22年度 年次報告会

平成22年度 年次報告会

日時:2月28日(月)9:15~17:45(開始時間が変更になりました

会場:計算科学研究センター1F 国際ワークショップ室

計算科学研究センター平成22年度年次報告会を行います。 研究員が、今年度の報告とこれからの計画について発表します。どなたでもご参加いただける公開の報告会ですので、ご興味のある方はご参加ください。

プログラム(仮)※確定しだい順次更新します

セッション1(9:15-10:15 座長:高橋 大介

9:15 佐藤 三久 (高性能計算システム研究部門)

9:30 藏増 嘉伸 (素粒子物理研究部門)

9:45 館野 賢(生命科学研究部門)

10:00 白石 賢二 (量子物性研究部門)

休憩 (10:15 – 10:30)

セッション2 (10:30-11:45 座長:白石 賢二

10:30 日下 博幸 (地球環境研究部門)

「都市気候研究に関する2010年度の取り組み」

10:45 仝 暁民 (量子物性研究部門)
「赤外線レーザーで原子電離過程の制御」

11:00 高橋大介(高性能計算システム研究部門)
「超高速計算システムにおける大規模科学技術計算」

11:15 北原 格 (計算情報学研究部門)

昼食 (11:45 – 13:30)

セッション3 (13:30-14:45 座長:谷口 祐介

13:30 吉川 耕司 (宇宙・原子核物理研究部門)

13:45 石塚 成人 (素粒子物理研究部門)

14:00 塙 敏博 (高性能計算システム研究部門)
「省電力・高信頼・高性能通信機構PEARL」

14:15 前島 展也 (量子物性研究部門)

14:30 梅村 雅之(宇宙・原子核物理研究部門)

休憩 (14:45 – 15:00)

セッション4 (15:00-16:00 座長:塙 敏博

15:00 朴 泰祐(高性能計算システム研究部門)

15:15 田中 博 (地球環境研究部門)
「次世代型大気大循環モデルNICAMを用いた地球環境研究と予測実験」

15:30 橋本 幸男 (宇宙・原子核物理研究部門)

15:45 谷口 裕介(素粒子物理研究部門)

休憩 (16:00 – 16:15)

セッション5 (16:15-17:15 座長:橋本 幸男

16:15 建部修見(高性能計算システム研究部門)

16:30 岩田 潤一(量子物性研究部門)
「実空間密度汎関数法の開発とナノ構造物質への応用」

16:45 矢花一浩(宇宙・原子核物理研究部門)
「マクスウェル・TDDFTマルチスケールシミュレータの開発」

17:00 多田野 寛人 (高性能計算システム研究部門)
「Block Krylov 部分空間反復法の収束性向上・高精度化とその応用」

17:15 総括・閉会挨拶

筑波大学‐エジンバラ大学合同シンポジウムおよびEPCC‐CCS合同ワークショップ(2010年12月7日-8日)

筑波大学‐エジンバラ大学合同シンポジウム
 ―筑波大学‐エジンバラ大学連携協定による国際展開―

日時:12月7日(火)14:00~17:30
会場:総合研究棟B棟110公開講義室

後援:計算科学研究センター、最先端サイバニクス研究拠点

2010年度、本学と英国エジンバラ大学との間で、大学間連携の協定が締結されました。これを受けて本シンポジウムでは、エジンバラ大学から副学長のリチャード・ケンウェイ教授をはじめとする方々を迎えて、連携が進められている分野を中心とした講演と議論を行います。

[ポスター]

プログラム

14:00-14:10 開会

14:10-14:30 ご挨拶
 筑波大学学長 山田信博教授
 エジンバラ大学副学長 Richard Kenway教授
 筑波大学副学長 塩尻和子教授

14:30-15:10 Introduction to Scientific computing at the University of Edinburgh
 エジンバラ大学 Richard Kenway教授

15:10-15:30 Research and Collaboration on Computational Sciences between CCS and EPCC
 筑波大学計算科学研究センター長 佐藤三久教授

15:30-16:00 Academic exchanges and cooperation in medical fields between the University of Tsukuba and the University of Edinburgh
 筑波大学大学院人間総合科学研究科/生命科学動物資源センター長 高橋智教授

16:00-16:30 Leading Edge of Cybernics and Promotion of Tsukuba-Edinburgh Project for the Future Challenges
 筑波大学大学院システム情報工学研究科/サイバニクス研究コア研究統括 山海嘉之教授

16:30-17:00 Variable Impedance Action: Implications for exoskeletons
 エジンバラ大学 Sethu Vijayakumar教授

17:00-17:30 The Software Sustainability institute
 エジンバラ大学 Neil Chue Hong教授

17:30-17:40 閉会

 

EPCC (Edinburgh Parallel Computing Centre)‐CCS合同ワークショップ

日時:12月8日(水)10:30-17:00
会場:計算科学研究センター棟1F 国際ワークショップ室

懇親会 ワークショップ終了後に懇親会を行います。参加を希望される方は登録フォームよりご登録ください。

プログラム

10:30-12:00 Session 1

New Supercomputer at CCS and Status of K-Computer
  Prof. Taisuke Boku, University of Tsukuba

Computing at Exascale
  Prof. Chris Maynard, University of Edinburgh

Numerical Study on Urban Climate in the CCS
  Prof. Hiroyuki Kusaka, University of Tsukuba

12:00-13:30 Lunch break

13:30-15:00 Session 2

The HPC MSc
  Prof. David Henty, University of Edinburgh

Numerical Algorithms and Intelligent software: NAIS
  Prof. George Beckett, University of Edinburgh

Computational Science Dual Degree Program
  Prof. Tetsuya Sakurai, University of Tsukuba

15:00-15:30 Coffee break

15:30-17:00 Session 3

Lattice QCD on K Computer
  Prof. Yoshinobu Kuramashi, University of Tsukuba

Machines for QCD
  Prof. Peter Boyle, University of Edinburgh

DiGS / Metadata capture
  Prof. James Perry, University of Edinburgh
  Prof. Toshiyuki Amagasa , University of Tsukuba

2010年以前の開催履歴(セミナー・ワークショップ)

 

多治見の猛暑解明へ

岐阜県多治見市と連携して行う猛暑解明の取り組みが、報道各社に取り上げられています。7月23日朝日新聞8月2日読売新聞8月15日朝日新聞など。7月30日岐阜放送で放送された動画ニュースが、岐阜新聞ホームページにアップされています(「大学が多治見の暑さを調査」)。担当する日下博幸研究室のウエブページはこちら。5月27日に行われた協定締結式の模様はこちら

第1回「学際計算科学による新たな知の発見・統合・創出」シンポジウム -ポストペタスケールコンピューティングへの学際計算科学の展開-

開催案内

主催 筑波大学 計算科学研究センター
日程 平成22年5月6日(木) ~ 7日(金)
プログラム プログラム(PDF)
会場 筑波大学 大学会館 国際会議場
懇親会 平成22年5月6日(木)18:45~
筑波大学 大学会館レストラン
参加費 シンポジウム参加無料、懇親会4,000円

Web上での参加登録は締め切りました。

当日参加も受け付けますので受付に直接お越しください。

時間中はシンポジウムの模様を視聴できます。映像を見るにはリアルプレーヤーが必要です。

開催趣旨

平成22年度から国立大学法人の第2次中期目標・中期計画期間が始まり、筑波大学計算科学研究センターでは、共同利用・共同研究拠点「先端学際計算科学共同研究拠点」として、新たに活動を開始します。「共同利用・共同研究拠点」は、全国の関連研究者が共同で利用することにより、我が国の学術の発展に特に資する施設を、文部科学大臣が拠点として認定し、国全体の学術の発展を図ることを目的として2008年度から文部科学省が行っている事業で、当センターは計算科学と計算機科学の協働により計算科学の先端を切り拓く学際計算科学を推進する「先端学際計算科学共同研究拠点」として認定されました。

現在、わが国においては十数ペタフロップスの性能を持つ次世代スーパーコンピュータの開発・構築が進められており、計算科学の研究体制の構築が進む中、新たな学術研究を目指し、わが国の計算科学の長期的ビジョンが必要となってきております。このような状況に鑑み、「先端学際計算科学共同研究拠点」のキックオフを機会に、拠点の基本コンセプトである学際計算科学とこれからの計算科学を議論するシンポジウムを開催することにしました。

共同利用・共同研究拠点「先端学際計算科学共同研究拠点」のキックオフを機会に、拠点の基本コンセプトである、計算科学と計算機科学の協働により計算科学の先端を切り拓く学際計算科学の課題と、国の次世代スパコンの構築・研究体制の整備が進む中、これを踏まえて、新たな学術研究を目指した最先端の学際計算科学の長期的ビジョンについて議論したいと考えます。本シンポジウムにおいて、「先端学際計算科学共同研究拠点」の概要について明らかにするとともに、次世代スパコン研究開発機関、および次世代スパコン戦略分野の主要戦略機関からの招待講演を通し、これからの展開・展望について議論を行いたいと思います。また、併せて当拠点で行われている学際計算科学の取組みについても報告します。

プログラム

5月6日(木)

【第1セッション司会】朴 泰祐(計算科学研究センター)

13:00 開会挨拶 

 

佐藤 三久(筑波大学・計算科学研究センター センター長)
13:15 学長挨拶 

 

山田信博(筑波大学・学長)
13:25 来賓挨拶 

 

文部科学省ご来賓
13:35 
 
計算科学研究センター名誉フェロー表彰式
13:50 記念講演
「計算科学研究拠点の形成 ~センター設立の頃を回顧して~」
 

 

岩崎洋一(高エネルギー加速器研究機構監事/前筑波大学学長)
14:20 招待講演
「ナノ分野における『グランドチャレンジ』課題への挑戦と計算科学」
 

 

平田文男(自然科学研究機構・岡崎共通施設・計算科学研究センター長/
文科省「次世代スパコン」プロジェクト「ナノ統合」拠点長)
14:50 休憩

【第2セッション司会】北川 博之(計算科学研究センター)

15:05 招待講演
「次*世代スパコン開発に向けて」
 

 

石川裕(東京大学・情報基盤センター長)
15:35 招待講演
「計算科学が推進する学際融合 — 素粒子・原子核・宇宙分野の取り組み」
 

 

橋本省二(高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所・准教授)
16:05 招待講演
「ポストペタスケールの計算機システム 
~ ヘテロ,マルチコア,加速器,超並列,大規模ストレージ ~」
 

 

松岡聡(東京工業大学・学術国際情報センター・教授)
16:35 休憩

【第3セッション司会】佐藤 三久(計算科学研究センター)

16:50 計算科学研究センター・新研究部門紹介

 

(計算科学研究センター・各研究部門主任)
18:35 閉会挨拶 

 

宇川彰(筑波大学・副学長)
18:45 懇親会

5月7日(金)

<計算科学研究センター平成21年度学際共同研究成果発表>

発表10分、質疑3分

【座長】 朴 泰祐(計算科学研究センター)

10:00 「configuration interactionによるQMC全エネルギー評価の改善」 

 

木野日織 (物質・材料研究機構)
10:13 「大気大循環モデルNICAMによる台風の再現計算と領域気候モデルWRFによる都市気候の将来予測」 

 

日下博幸 (筑波大学)
10:26 「格子QCDによるバリオン間相互作用の研究」 

 

石井理修 (東京大学)
10:39 「格子 QCD による pi-K 散乱長の研究」 

 

佐々木 潔 (東京工業大学)
10:52 「テラヘルツ波駆動半導体超格子における動的ファノ効果」 

 

前島展也 (筑波大学)
11:05 「中重質量領域における光核反応断面積のTDDFT線形応答計算」 

 

中務 孝(理化学研究所)
11:18 「実空間密度汎関数法によるSiナノ構造体の大規模電子構造計算」 

 

岩田潤一 (筑波大学)
11:31 休憩

【座長】 白石 賢二(計算科学研究センター)

11:45 「生体高分子機能の動力学的解析」 

 

舘野 賢 (筑波大学)
11:58 「半導体デバイスにおけるキャリア輸送の大規模分子動力学シミュレーション」 

 

神岡武文(早稲田大学)
12:11 「パルスレーザーが誘起する電子・フォノンダイナミクスの第一原理計算」 

 

矢花一浩 (筑波大学)
12:24 「不均質な系における粒子コードの効率的並列化」 

 

坂上仁志 (核融合科学研究所)
12:37 「オーダーN法第一原理計算プログラムCONQUESTによる大規模計算」 

 

宮崎剛 (物質・材料研究機構)
12:50 「多成分自己重力系の緩和過程」 

 

梅村雅之 (筑波大学)
13:03 「格子QCDを用いたチャーモニウム核子間相互作用の研究」 

 

佐々木勝一 (東京大学)
13:16 昼食

【座長】 田中 博(計算科学研究センター)

14:15 「ヒューリステイックな樹形探索効率評価」 

 

稲垣祐司 (筑波大学)
14:28 「最尤系統樹の信頼性に対する樹形探索労力量と初期樹形の影響」 

 

田辺晶史 (筑波大学)
14:41 「HIV-1プロテアーゼ複合体における相互作用エネルギーのDFT計算」 

 

岩瀬智行 (筑波大学)
14:54 「実空間差分法に基づく第一原理電子構造・量子輸送特性計算コードとそのアプリケーション」

 

小野倫也(大阪大学)
15:07 「マルチコア/マルチレーン・クラスタにおける性能評価及び最適化」 

 

朴 泰祐 (筑波大学)
15:20 「並列固有値解法のILC加速器設計への応用」 

 

櫻井鉄也 (筑波大学)
15:33 「格子ゲージ理論を用いたクォーク・グルオンプラズマ相の研究
– 高エネルギー重イオン衝突におけるチャーモニウム」
 

 

野中千穂 (名古屋大学)
15:46 休憩

【座長】 梅村 雅之(計算科学研究センター)

16:00 「ナノスケール系の量子伝導シミュレーション」 

 

小林伸彦 (筑波大学)
16:13 「物理的クォーク質量における2+1フレーバー格子QCD」 

 

蔵増嘉伸 (筑波大学)
16:26 「回転球殻熱対流系における帯状流の形成」 

 

陰山 聡 (神戸大学)
16:39 「次世代スーパーコンピュータに向けたグランドチャレンジ・アプリケーションの開発」

 

高橋大介 (筑波大学)
16:52 「DFTベースOn The Fly MD計算の実証と応用」 

 

館山佳尚 (物質・材料研究機構)
17:05 「強レーザー場における分子過程に関する時間発展計算法」 

 

仝 暁民 (筑波大学)

※当日の模様はRealNetworks社のストリーミング技術である RealMedia形式を用いてライブ中継します。

参加申し込み

シンポジウムの参加は無料です。
懇親会(会費4,000円)に参加されない場合でも登録をお願いします。

Web上での参加登録は締め切りました。
当日参加も受け付けますので直接受付までお越しください。

お問い合わせ

シンポジウムに関するお問い合わせは電子メールにて、 
sympo2010[at]ccs.tsukuba.ac.jp 
までお送り下さい。

※スパム防止のためアットマークを[at]と表記しています。