【受賞】原田准教授が永田学長より令和3年度筑波大学若手教員特別奨励賞を授与されました

筑波大学計算科学研究センターの原田隆平准教授が、令和3年度筑波大学若手教員特別奨励賞を受賞しました。原田准教授が、令和3年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞した功績を称えたものです。
授賞式が6月9日に行われ、永田学長から筑波大学若手教員特別奨励賞の表彰楯が授与されました。

有機固体電解質中のプロトン伝導メカニズムを解明 〜高効率な燃料電池の設計指針に〜

2021年6月8日

国立大学法人 筑波大学
 国立大学法人 金沢大学

概要

水素エネルギーを利用する燃料電池は、電解質上をプロトン(H+)が伝導することにより動作するもので、効率的なクリーンエネルギーシステムとして注目されています。しかしプロトンは非常に小さく軽いため、位置や動きを実験的に観測するのが難しく、伝導メカニズムはよく分かっていませんでした。

本研究では、水分子を含まない無水プロトン伝導物質として、コハク酸とイミダゾールから成るプロトン伝導性有機結晶(コハク酸イミダゾリウム)を対象に、分子中のプロトンの位置や動きを可視化し、分子レベルでのプロトン伝導メカニズムを解明することに成功しました。理論計算と実験を組み合わせ、結晶内のプロトン伝導が関わる「分子構造変化」、「分子運動」、「プロトン移動」の関係性を調べたところ、結晶内での整列された分子構造中で、イミダゾール分子の回転運動とイミダゾール–コハク酸間のプロトン移動が連動することによって、結晶内で効率的にプロトンが輸送していく様子が明らかになりました。

今回の結果から、燃料電池の固体電解質材料として、高いプロトン伝導性を示す無水プロトン伝導物質を設計するためには、分子の回転運動やプロトン移動を効率的に引き起こす材料の探索が重要であることが示唆されました。

 

ポテンシャルエネルギーダイアグラム
ポテンシャルエネルギーダイアグラム(グラフ部分)および、イミダゾール分子の回転とプロトン移動の関係

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計算メディカルサイエンス 第1回全体ミーティング

筑波大学計算科学研究センターでは、これらの最先端の計算科学を医学と連携させる新たな取組みとして「医計連携」を創出する「計算メディカルサイエンス事業」を推進します。本事業は、物理学、生命科学およびデータ基盤,情報メディア分野の計算科学と医学、産業界が連携し、最新の計算手法、画像処理技術ならびに機械学習、ディープラーニングを用いて、計算科学による医療技術を開拓することを目的とします。この目的のため、(1) 計算生体分子医科学、(2) 睡眠ビッグデータ解析・自動診断、(3) 3DCG バーチャル手術、(4) 計算光バイオイメージングのプロジェクトチームを設置し、学内外の連携とチーム間連携を図り研究を推進します。

計算メディカルサイエンス 第1回全体ミーティング

日時:2021年6月7日(月) 13:00~17:00
会場:Zoom 

プログラム

グループ   時刻 発表者 タイトル
  挨拶 13:00-13:01 梅村雅之 事業部長より挨拶
計算生体分子 発表 13:01-13:11 重田育照 計算分子医科学分野の共同研究・プロジェクトの現状
司会:高水 質問議論 13:11-13:26    
  発表 13:26-13:36 原田隆平 創薬研究を加速する分子シミュレーション技術の創出
  質問議論 13:36-13:56    
  休憩 13:56-14:00    
         
睡眠ビッグデータ 発表 14:00-14:20 堀江和正 深層学習による睡眠の自動解析
司会:関谷 質問議論 14:20-14:55    
  休憩 14:55-15:00    
         
         
3DCG手術 発表 15:00-15:10 北原格 3DCGバーチャル手術の活動報告と3D Surgical Vision への展開
司会:高水 質問議論 15:10-15:25    
  発表 15:25-15:35 Pragyan SHRESTHA Tomographic Reconstruction of Bone from Multi-View X-Ray Images Using Planar Markers
  質問議論 15:35-15:55    
  休憩 15:55-16:00    
         
         
計算光バイオ 発表 16:00-16:10 矢島秀伸 時間依存輻射輸送計算による生体光イメージング:大規模データベースの構築に向けて
司会:関谷 質問議論 16:10-16-25    
  発表 16:25-16:35 高水裕一 機械学習によるガン細胞の位置・形状の判定手法
  質問議論 16:35-16:55    
  休憩 16:55-17:00    

フェーン現象は通説と異なるメカニズムで生じていることを解明

2021年5月17日

国立大学法人 筑波大学

概要

フェーン現象は、風が山を越える際に、暖かくて乾燥した下降気流となり、ふもとの気温が上昇する 気象現象で、中学や高校でも学ぶものです。フェーン現象の発生メカニズムは、気象条件などに応じて 「熱力学メカニズム」と「力学メカニズム」の2つに大別され、一般によく知られているのは熱力学メ カニズムです。

本研究では、フェーン現象発生地域として世界的にも有名な北陸地方において、過去 15 年間に発生 したフェーン現象 198 事例を対象に、気象モデルとスーパーコンピュータを用いて、そのメカニズム を解析しました。その結果、日本のフェーン現象は、熱力学メカニズムではなく、主に力学メカニズム で生じていることを明らかにしました。また、純粋な熱力学メカニズムによる現象は、実はほとんど発 生していないことが示唆されました。

今回の解析によると、対象としたフェーン現象の 80%以上は力学メカニズムで発生しており、これ までの通説であった熱力学メカニズムは 20%以下しかありませんでした。しかも、それらのほとんど も純粋な熱力学メカニズムではなく、力学メカニズムと熱力学メカニズムの両方の性格を含んだマル チメカニズムであることが示されました。さらに、フェーン現象は低気圧や台風接近時に発生するも のと考えられていましたが、解析対象のうち約 20%は高気圧下で発生しており、また、日中よりも夜 間に発生しやすいことも分かりました。

図1 フェーン現象のメカニズムと発生割合。 左が力学メカニズム、中央が純粋な熱力学メカニズム、右がマルチメカニズム。太字の数値は、それぞれ のメカニズムで説明できるフェーンの割合。矢印は、フェーン現象発生時の主な大気の流れ。

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ムカデ寄生虫に葉緑体の痕跡を発見!進化過程で失われた光合成機能〜

2021年5月10日

国立大学法人 筑波大学

概要

マラリア原虫やトキソプラズマ原虫などのアピコンプレクサ門に属する病原寄生虫は、葉緑体を持ち、光合成を行っていた藻類の仲間から進化したと考えられています。実際、アピコンプレクサ門寄生虫の多くは、その細胞内に、光合成能を欠失した痕跡的葉緑体を持っています。無脊椎動物に感染するグレガリナもアピコンプレクサ門に属し、痕跡的葉緑体を持つ可能性が指摘されていました。しかし、実験室内での培養ができないため、ゲノムのトランスクリプトーム解析を行うことが難しく、その葉緑体進化はよく分かっていませんでした。

本研究では、筑波大学構内にてセスジアカムカデ、長野県にてキシャヤスデ、パラオ共和国にてヤケヤスデを採取し、それぞれの消化管中からグレガリナを単離してトランスクリプトームデータを取得しました。これを用いて、系統的位置を高精度に推測するための大規模分子系統解析と、葉緑体内部で機能すると考えられる酵素の探索を行いました。

その結果、ムカデ寄生グレガリナのトランスクリプトームデータ中に、葉緑体内部で働く酵素の塩基配列を発見しました。一方、2種のヤスデ寄生グレガリナからは、葉緑体機能に関わる酵素の塩基配列は一切検出されませんでした。また、大規模分子系統解析では、痕跡的葉緑体が残存する複数のグレガリナ系統が、葉緑体構造が欠失したと考えられる系統の中で、バラバラに位置しました。このことから、グレガリナの進化過程において、痕跡的葉緑体の欠失は、独立に複数回(少なくとも3回)起こったことが示唆されました。

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第10回 JCAHPCセミナー(Wisteria/BDEC-01運用開始記念)「JCAHPC 次の一手:Oakforest-PACSの先にあるもの」

最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC: Joint Center for Advanced High Performance Computing)筑波大学計算科学研究センター東京大学情報基盤センターとが共同で2013年に設立した組織です。 JCAHPCでは国内最大級の計算性能を有するOakforest-PACSシステム(OFP)を設計、導入し、2016年10月より共同で運用を開始して以来、最先端の計算科学を推進し、我が国と世界の学術及び科学技術の振興に寄与してまいりました。 現在、人類と地球は新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) という未曾有の危機に直面していますが、JCAHPCはHPCIシステム構成機関として「新型コロナウイルス感染症対応HPCI臨時公募課題」 に計算資源を提供し、新型コロナウイルス感染症に関する研究推進に貢献しております。

さて,OFPの運用も最終年度に突入し,2022年3月末にはサービスを終了する予定です。 第10回となるJCAHPCセミナーでは「JCAHPC 次の一手:Oakforest-PACSの先にあるもの」と題して,今後のJCAHPCのアクティビティの展望について紹介いたします。

まず、東京大学情報基盤センターが Society 5.0 実現へ向けて導入した『「計算・データ・学習」融合スーパーコンピュータシステム(Wisteria/BDEC-01)』 が2021年5月14日に運用を開始します。Wisteria/BDEC-01は、「シミュレーションノード群(Odyssey)」、「データ・学習ノード群(Aquarius)」の2つのノード群、合計ピーク性能33.1 PFLOPSを有するヘテロジニアスなシステムです。 第10回JCAHPCセミナーはWisteria/BDEC-01の運用開始に合わせて、システム紹介、地球科学分野を中心とした大規模ユーザによる招待講演とともに、類似したシステムをすでに運用している機関(理化学研究所、名古屋大学)からも招待講演をお願いしております。 また筑波大学で導入を進めている次期システム「Cygnus-BD」、更にOFPの後継機でありJCAHPCとしての2号機である「次期Oakforest-PACS」計画についても紹介いたします。

「計算・データ・学習」融合、Society5.0実現へ向けた議論の場とできればと考えております。
オンラインではありますが、是非とも多くの皆様にご参加いただきたく、よろしくお願いいたします。

第10回JCAHPCセミナー

日時:2021 年 5 月 25 日(火)(13 : 15 〜 17 : 50)
形態:完全オンライン
主催:最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)
共催:筑波大学計算科学研究センター,東京大学情報基盤センター
参加費:無料,「事前参加登録」をお願いいたします。

参加申込

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※必ず事前登録をお願いいたします(セミナーの前日まで受け付けます)

プログラム

【第1部】座長:高橋大介(筑波大学計算科学研究センター/JCAHPC)

13:15 – 13:20 開会挨拶
13:20 – 13:45 中島研吾(東京大学情報基盤センター/JCAHPC)
Wisteria/BDEC-01がもたらす新しい科学の夜明け
13:45 – 14:10 塙敏博(東京大学情報基盤センター/JCAHPC)
次期Oakforest-PACS計画とその周辺
14:10 – 14:35 朴泰祐/建部修見(筑波大学計算科学研究センター/JCAHPC)
筑波大学CCSにおける次期スーパーコンピュータCygnus-BD

【第2部】座長:下川辺隆史(東京大学情報基盤センター/JCAHPC)

14:45- 15:10 羽角博康(東京大学大気海洋研究所)
エクサスケール時代の大気海洋シミュレーション
15:10 – 15:35 市村強
(東京大学地震研究所計算地球科学研究センター/工学系研究科社会基盤学専攻)

スーパーコンピューティングによる大規模地震シミュレーション
15:35 – 16:00 中島耕太(富士通株式会社 ICTシステム研究所)
計算・データ・AIを融合するコンピューティング技術

【第3部】座長:塙敏博(東京大学情報基盤センター/JCAHPC)

16:15 – 16:40 澤田洋平(東京大学大学院工学系研究科 附属総合研究機構)
極端水文気象現象に対する予測の不確実性定量化
16:40 – 17:05 庄司文由(理化学研究所計算科学研究センター運用技術部門)
富岳の利用サービスと運用について
17:05 – 17:30 片桐孝洋(名古屋大学)
スーパーコンピュータ「不老」導入とWisteria/BDEC-01への期待
17:30 – 17:50 総合討論・閉会

 

本セミナーの問い合わせ先

〒113-8658 東京都文京区弥生2−11−16
東京大学 情報基盤センター

中島研吾(幹事)
E-mail:nakajima[at]cc.u-tokyo.ac.jp
([at]を@にしてからお送りください。)

科学技術週間に合わせた動画公開 [4/18まで]

筑波大学では、例年「キッズユニバーシティ」と題した一般公開を行なっておりますが、本年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、対面での一般公開は行わず、動画の配信を行います。
本学の様々な研究を紹介しておりますので、ぜひご覧ください。計算科学研究センターからも動画を掲載しています。


録画配信期間:令和3年4月12日(月)~4月18日(日)[期間限定配信です]

https://scpj.tsukuba.ac.jp/news/210315.php

 

Associate Professor Harada Ryuhei receives the Young Scientists’ Prize

The “Commendation for Science and Technology by the Minister of Education, Culture, Sports, Science and Technology”, from the science ministry MEXT, recognizes individuals who have produced outstanding results in research, development, and promotion of public understanding of science and technology.

This year’s awardees were announced on 6 April, and Associate Professor HARADA Ryuhei, belonging to CCS was selected for the Young Scientists’ Prize.

The award ceremony will take place on 14 April at MEXT and online.

 

【受賞】原田准教授が文部科学大臣表彰 科学技術分野の若手科学者賞を受賞

生命科学研究部門の原田隆平准教授が、令和三年度 文部科学大臣表彰 科学技術分野の若手科学者賞を受賞しました。

受賞業績名:生体機能に重要な分子ダイナミクスを抽出する計算技術の研究

表彰式は4月14日に文部科学省3階 講堂及びオンラインで開催され、後日その様子がYouTubeに掲載される予定です。

関連URL(文科省発表ページ):https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00547.html

 

研究紹介動画を公開

計算科学研究センターで進められている研究の中から、「都市気象シミュレーション」と「総合的創薬計算」について、研究を紹介する動画を作成しYouTubeチャンネルに公開しました。

動画は以下でも見ることができます。

 

 

 

 

Our new videos are now available!

New videos introducing our researches are now available on YouTube.

In these videos, we introduce an urban climate simulation model called “City-LES” and comprehensive drug discovery research using multiple computational methods.  

 

 

 

 

凝集したタンパク質を元に戻す分子Hsp104の構造を解明

令和3年3月24日

国立大学法人 東京農工大学
国立大学法人 京都大学
国立大学法人 熊本大学
国立大学法人 大阪大学
国立大学法人 筑波大学

概要

国立大学法人東京農工大学工学府生命工学専攻 井上耀介氏(博士前期課程・当時)、東京農工大学工学研究院生命機能科学部門 篠原恭介准教授、養王田正文教授、野口恵一教授、国立大学法人京都大学大学院理学研究科 花園祐矢研究員(現・国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構)、竹田一旗准教授、三木邦夫教授、国立大学法人熊本大学発生医学研究所 野井健太郎研究員(現・大阪大学ナノサイエンスデザイン教育研究センター 特任助教(常勤))、小椋光教授(現・熊本大学大学院生命科学研究部)、国立大学法人大阪大学大学院生命機能研究科 川本晃大特任助教(常勤)(現・大阪大学蛋白質研究所 助教)、難波啓一特任教授(理化学研究所生命機能科学研究センター超分子システム動態研究チーム チームリーダー、放射光科学研究センター 副センター長・兼任)、国立大学法人筑波大学計算科学研究センター 重田育照教授らのグループは、細胞内で凝集したタンパク質を再生する分子Hsp104の構造を明らかにしました。X線結晶構造解析・クライオ電子顕微鏡解析・高速原子間力顕微鏡(高速AFM)の技術を用いてこれまでに知られていなかったHsp104の構造を決定しました。この成果により今後、タンパク質の異常凝集が引き起こすと考えられている神経変性疾患など病気の基礎的な理解へ向けた貢献が期待されます。

 
 
 

2021年度一般利用の募集

筑波大学計算科学研究センターでは、高性能メニーコアクラスタOakforest-PACS(Intel Xeon Phi、ピーク性能25 PFLOPS)及びCygnus(GPU+FPGA混合搭載型アクセラレータクラスタ、ピーク性能2.5 PFLOPS)の2台のスーパーコンピュータを運用しております。

Oakforest-PACSは最先端共同HPC基盤施設として東京大学情報基盤センターと共同運用するIntel Xeon Phi(Knights Landing, Intel Xeon Phi 7250P)をメインプロセッサとする超並列メニーコアクラスタです。

また、CygnusはGPUに加えFPGAを演算加速・通信加 速用デバイスとして搭載した初めての共用大規模複合型演算加速クラスタです。

筑波大学計算科学研究センターでは全国共同利用機関として、各システムにおいて全ノードの20%(Oakforest-PACSについては筑波大割り当てリソース分の20%)を目安とした計算機資源を、有償の一般利用に供することと致します。2021年度(2021年4月1日から2022 年3月31日まで)の一般利用を募集しますので、希望される方は以下のページを確認の上、ご応募下さい。

一般利用

【受賞】朴教授が情報処理学会コンピュータサイエンス領域功績賞受賞

計算科学研究センターの朴泰祐教授が情報処理学会2020年度コンピュータサイエンス領域功績賞を受賞いたしました(授賞式:2021年3月15日)。

コンピュータサイエンス領域功績賞は、同領域の研究会分野において、優秀な研究・技術開発、人材育成、および研究会・研究会運営に貢献したなど、顕著な功績のあった研究者に対して贈られるものです。

学会HPはこちら
https://www.ipsj.or.jp/award/cs-koseki-award-2020.html

 

朴教授が「富岳」共用開始記念式典に登壇

計算科学研究センターの朴泰祐教授が、3月9日にオンラインで開催された『スーパーコンピュータ「富岳」共用開始記念イベント  HPCIフォーラム – スーパーコンピュータ「富岳」への期待 -』に登壇しました。

朴教授はHPCIコンソーシアム理事長として、祝辞講演『「富岳」共用開始および「富岳」を中核とするHPCI』を行いました。

また、これに先立ちテープカットに登壇するとともに、パネルディスカッションのモデレータも務めました。

参考URL:https://fugaku100kei.jp/events/20210309/

 

北川博之先生最終講義

計算情報学研究部門の部門主任をはじめ,情報科学類長,コンピュータサイエンス専攻長,システム情報工学研究科長等を歴任されました北川博之先生(計算科学研究センター/人工知能科学センター教授)が,令和3年末日をもちまして定年を迎えられることとなり,最終講義を開催することとなりました.

なお,COVID-19 感染の状況を踏まえまして,オンラインにて開催いたします.参加を希望される方は,下記フォームよりお申込ください.

 

日時:令和3年3月5日(金)16:00-17:30
場所:オンライン
主催:筑波大学計算科学研究センター・人工知能科学センター・
   システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻・情報学群情報科学類

参加登録フォーム
https://forms.gle/3BsPsC3yWnnjX9HN8

申込締切:令和3年3月3日(水)

Getting Excited About Excitons

An international research team involving a researcher at Tsukuba University uses attosecond laser pulses to study electronic excitations in a dielectric crystal, which may open the way for novel computer logical elements and optical devices

Light-induced ultrafast exciton dynamics in MgF2 were investigated with attosecond transient reflection spectroscopy and microscopic theoretical simulations. © Matteo Lucchini, Politecnico di Milano 

 

The international research team has analyzed the ultrafast electronic response inside magnesium fluoride (MgF2) crystals caused by very short laser bursts. They found that the electron behavior at attosecond timescales was similar to that seen in both atoms and solids. This work may lead to better control of the electronic activity in previously overlooked materials.

In the past decade, light-induced ultrafast electron dynamics in solids in the femtosecond (10-15 second) and the attosecond (10-18 second) regimes have been intensively studied towards the realization of future ultrafast electronics, optics, and optoelectronics. However, the fundamental understanding of many-body effects, which emerge from the interaction of many particles, in such ultrafast electron dynamics has been missing due to their complexity.

The emergence of excitons is a typical case of these many-body effects, which are among the most important quasi-particles in solids from both fundamental and technological points of view. Therefore, the development of a microscopic understanding of ultrafast exciton dynamics is an important milestone towards the science of nonequilibrium electron dynamics.

Now, a research team involving a researcher at Tsukuba University has used attosecond transient reflection spectroscopy to study core-level excitons in magnesium fluoride crystals.

“Thanks to the utilization of independent calibration experiments, we were able to achieve results that matched with theoretical simulations,” says author Professor Shunsuke Sato.

An important finding was that the exciton acted like a hybrid between an electron orbiting a single atom, and an electron delocalized over a bulk material. The researchers propose methods such as adding an external electric field or mechanical strain to the crystal to precisely control this response.

 “Exploring solutions beyond classical electronics, is becoming increasingly important if we want to move beyond current technological computing limits,” Professor Sato says. “The results of our research may lead to new materials for performing computations faster and more efficiently than current systems.”

Original Paper

The work is published in Advanced Functional Materials as “Unravelling the intertwined atomic and bulk nature of localised excitons by attosecond spectroscopy” (DOI:10.1038/s41467-021-21345-7).

Correspondence

Assistant Professor SATO Shunsuke
Center for Computational Sciences, University of Tsukuba

光が引き起こす励起子の超高速ダイナミクスの機構を解明

令和3年2月15日

国立大学法人 筑波大学

 

概要

半導体や絶縁体などの固体物質の中では、負の電荷を持つ電子と正の電荷を持つ正孔が互いの引力によって結びつき束縛された励起子と呼ばれる状態が生成されることがあります。本研究では、アト秒(10の18乗分の1秒)時間分解ポンプ・プローブ分光実験をフッ化マグネシウム(MgF2)単結晶に適用し、光が引き起こす励起子の超高速なダイナミクスを高い時間分解能で観測することに成功しました。

これにより、光が誘起する励起子のダイナミクスには二つの時間スケールの現象が共存していることが明らかとなりました。一つは励起子ダイナミクスを駆動する光の周期よりも長い時間スケールで生じる現象で、もう一つは光の周期よりも短い時間スケールの現象です。

微視的な数値シミュレーションにより解析を進めたところ、励起子は、長い時間スケールでみると、電子と正孔が結びついた「原子」のような振る舞いを示す一方、短い時間スケールにおいては、電子と正孔がそれぞれ空間内を自由に移動する「固体物質」的に振る舞うことが分かりました。

本研究で明らかとなった、超高速励起子ダイナミクスにおける励起子の二面性(原子的性質と固体的性質の共存)は、励起子を光制御することで物質の様々な性質を得るための、新しい方法論の可能性を示唆しています。

図1 本研究に用いたポンプ・プローブ分光実験の模式図。図左には実験に用いられる二つの光パルス(赤と青の波形)が示されており、光のパルスがフッ化マグネシウム(MgF2)の単結晶の表面で反射されている様子が描かれている。©Matteo Lucchini, Politecnico di Milano

 

プレスリリース全文

日下教授がアメリカ気象学会 (AMS) ヘルムート・ランズベルグ賞を受賞

地球環境部門の日下博幸教授が、アメリカ気象学会(AMS)ヘルムート・ランズベルグ賞 (The Helmut E. Landsberg Award) を受賞しました。同賞は都市気象学・気候学・水文学で国際的に顕著な成果をあげたグループもしくは個人に与えられる賞で、この都市気象分野では世界最高峰の賞として知られています。 アメリカ気象学会の賞を日本人が受賞することは大変めずらしいことです。

 

受賞理由は以下の通りです。

国際的な研究コミュニティーによって採用された都市キャノピーモデリングの進歩と過去・現在・未来の都市気候へのダウンスケーリングへの先駆的な貢献 (For advancements in urban canopy modeling, adopted by international research communities, and pioneering contributions to downscaling past, current, and future urban climates)

AMS HP(https://www.ametsoc.org/index.cfm/ams/about-ams/ams-awards-honors/2021-awards-and-honors-recipients/