GPUコンピューティングことはじめ

額田 彰 教授

高性能計算システム研究部門

額田教授は、スーパーコンピュータ等の最先端計算機システムを効果的に活用してさまざまな計算の高速化を実現することを目的とした高性能計算の研究者です。

(2020.11.9 公開)

 

GPUとは

GPU(Graphics Processing Unit)は本来グラフィックス処理専用のデバイスです。計算処理はCPUが担当し、可視化処理などだけがGPUに分担され、そのままディスプレイに出力されるのが一般的でした。パソコン用のゲームが普及していった結果、より高解像度のきれいな画像生成をより高速に行う需要が増え、それに応えるためGPUの処理速度が飛躍的に向上していきました。GPUが行う画像処理は定型的で、画面の各ピクセルの値(色)を計算するために同等の処理を多数、別個のデータに対して行うという性質があります。

CPUとGPUの違い

 

このため演算器の数を増大させることがCPUよりずっと容易なアーキテクチャになっており、いつのまにか32bitの浮動小数演算性能において当時のCPUを上回っていました。また多数の演算器にデータを送る必要があるためGPUは少ない容量ながらも専用のメモリを搭載し、そのデータ転送速度はCPUのメインメモリを超えるようになりました。

GPUによる汎用計算

GPUがCPUより高い演算性能を持つとわかるとGPUを計算に使いたくなるものです。元々GPUはグラフィックス処理しかできない構造でしたが、グラフィックス分野も急激に進歩し、GPUのハードウェアも処理内容を詳細にプログラム可能になってきて、2000年代後半ついに、汎用計算向けのプログラム開発環境がGPUベンダーから提供されるようになりました。

これまで様々な計算がGPUプログラムに移植されて高速化を実現しています。しかしどのような計算でもよいわけではなく、「同等の処理を多数」実行するというハードウェアの基本に合わせなければ意味がありません。CPUは多くても数十コアを搭載しているものが主流ですが、GPUのコア数は数千規模でさらにその何倍もの並列性がなければ演算器をフルに活用することができません。提供されているプログラミング言語もこれを想定したものになっていて、その型にはまるようにうまく記述できるような計算内容であればGPUで高速化できることが多いと言えます。

CPU用のプログラムをGPUに移植すると、今後CPU用とGPU用の2つのコードを管理し続けなければなりません。計算内容がもう変わることがないのであれば問題ありませんが、最先端研究で使用されているソフトウェアは頻繁に更新され続けることが多くなっています。そこで近年需要が高まっているのがOpenACCやOpenMPのような、指示詞(コメント文)によるGPU化の方法です。プログラマはコードの中で並列性が高くGPUで高速化可能な箇所を指示し、コンパイラがGPU用のコードを生成してくれます。コンパイラの負担が非常に大きいのですが、これによってCPU用とGPU用の両方の実行プログラムをコンパイラのオプションの切り替えのみで生成でき、コードの管理が楽になります。

指示詞(コメント文)によるGPU化(OpenACCの場合)

 

今後

現在、世界トップ500のスパコンの中にはCygnusを含め多数のGPU搭載システムがあります。これはGPUがすでに汎用計算用のプロセッサとして広く受け入れられていることを示し、またコストパフォーマンスや電力効率においても優れていることもシステム調達の検討時に大きなポイントになっているようです。

 

さらに詳しく知りたい人へ

 

計算機の顕微鏡で生体分子の「形」と「動き」を解き明かす

harada

原田 隆平 准教授

生命科学研究部門 生命機能情報分野

生体内では、タンパク質や核酸のような生体分子が様々に形を変えながら機能しています。原田准教授は、こうした生体分子の形や動きをシミュレーションするために、効率の良い計算手法の開発研究を行っています。

(2020.11.4 公開)

 

計算機の“顕微鏡”で見える世界

生体内では様々な生体分子が機能しています。生体分子を構成している原子は絶えず振動していて、静電気力や化学結合といった周囲の原子や分子との間に働く力によって相互に作用し、時に構造の変化が起こります。原子の振動はフェムト秒(1000兆分の1秒、フェムトは10の-15乗)のスケールで起きていますが、タンパク質が機能するための構造の変化にはマイクロ秒(100万分の1秒、マイクロは10の-6乗)以上もの時間がかかります。このような原子・分子にとってとても長い時間がかかる現象のことを、「レアイベント」と呼びます。

タンパク質の構造を解明するためには、タンパク質の結晶をX線で観察するX線結晶解析などの方法が使われています。しかしこうした実験的手法では、実際の生体内部での構造変化をリアルタイムに観測することはできません。そこで、実際に構造がどのように変化していくのかを調べるために用いられている方法が、分子動力学シミュレーション(molecular dynamics: MD)です。

MDでは、まず調べたい構造の最初の状態として原子・分子の位置を設定し、それぞれの原子・分子が周辺の原子・分子からどのような力を受けるのか、その結果、どのように運動するのかを計算します。これを繰り返すことで、パラパラ漫画のように分子が動いていく様子を調べることができます(図1)。まさに、計算することで分子の動きを見る“顕微鏡”です。

(図1:一コマが1000兆分の1秒のパラパラ漫画のイメージ。分子の構造が少しずつ変化していく様子を計算で解析する。)

 

MDでは、全ての原子・分子について計算を行う必要があります。当然、調べたい分子の大きさが大きくなって原子数が増えるほど、また、調べたい時間が長くなるほど、計算量や計算にかかる時間は膨大になります。実際にスーパーコンピュータの計算性能があっても、マイクロ秒以上かかるようなレアイベントを一度に計算するのはとても困難です。

そこで、原田准教授は新しい計算手法を考案しました。

 

まれにしか起こらない “レアイベント” を捉えるために

レアイベントは確率的に起こります。シミュレーションで扱う時間を長くしても起きないこともあれば、時間が短くても起きる場合もある、という点に原田准教授は着目しました。

そこで、ピコ秒(1兆分の1秒、ピコは10の-12乗)という非常に短い時間についてのシミュレーションを同時にたくさん、いろいろな条件で動かし、その中でより目的のものに近づいた結果を次のシミュレーションの初期値として、もう一度いろいろな条件で計算をする、というセットを繰り返す方法を開発しました(図2)。こうすることで、計算によるレアイベントの検出にかかる時間を1,000倍以上短くすることが可能になりました。

(図2:たくさんのシミュレーション結果から、より良いものを選んで次のシミュレーションを実行することで、レアイベント抽出の効率を上げることに成功。tは時間を示す添字。)

この計算方法のポイントは、同時にたくさんの同じような計算をするところにあります。こうした計算は並列型のスーパーコンピュータの得意分野です。原田准教授はCygnusなどのスーパーコンピュータを使いながら、着目する生体分子の状況や特性に合わせたいろいろな種類の計算手法を開発し、アプリケーションを進めています。

 

これまでの研究では、計算の効率を格段にあげることに成功してきました。これからは、使う人のニーズに応えながら、より使いやすいアプリケーションとして公開していくための研究を進めてく段階です。

今は、分子の形が目的のものに近付いたかどうかを判定する指標である「反応座標(注1」を、使う人が経験的に決めるしかありません。人が決めることで恣意的になり、エラーや人による違いも出てしまいます。最適な反応座標を自動的に決めることができれば、「完全な構造変化の予測」に繋がるはずです。

恣意性が入らない完全な構造変化の予測、それが原田准教授の目指す究極のシミュレーションの形です。研究室では、次のステップに向けた研究が始められています。

 


【用語】

1)反応座標:生体分子の構造変化を特徴付ける物理変数で、分子間の距離や結合角度などの情報が使われる。どのような要素を反応座標として用いるのが最適かは取り扱う生体分子によって異なる。

 

さらに詳しく知りたい人へ

 

塩川浩昭准教授の研究課題が「さきがけ」に採択

筑波大学 計算科学研究センターの塩川浩昭准教授(計算情報学研究部門 データ基盤分野)の研究課題が、JSTの戦略的創造研究推進事業「さきがけ」に採択されました。
 
研究領域:IoTが拓く未来
採択課題名:超高速な多モーダルIoTデータ統合処理基盤
 
参考リンク:

【CCSで学ぶ】 吉永 真理さん

吉永真理(Yoshinaga Mari)さん

 

理工情報生命学術院 生命地球科学研究群
生物学学位プログラム
稲垣研究室(微生物分子進化研究室)博士前期課程1年

 

 

(内容は、2020年8月取材当時のものです。)


吉永さんは、筑波大学 生命環境学群 生物学類在籍時に微生物分子進化研究室に入り、稲垣祐司教授の指導のもとで研究を続けています。

今の研究室を選んだ理由

3年生のときに、「分子進化学」という稲垣先生と橋本先生の講義を受けて、とても興味を持ちました。
高校までは、生物というと、マウスやハエなどの生き物を育てたり、実験したりするイメージがとても強かったのですが、稲垣先生たちの講義では、パソコンを使って統計学的な解析をするということで、とても新鮮でした。
それまで、生物の分野でそんな研究ができることも知らなかったので、自分でやってみたいと思いました。

どんな研究をしているの?

卒業研究で行っていた「SMC遺伝子の多様化と二次的喪失」というテーマを続けています。SMC は、染色体構造維持(Structural Maintenance of Chromosomes)の略です。SMCタンパク質は色々な働きを持っています。たとえば、生物が細胞分裂を行うときは、染色体を均等に分ける必要があるのですが、このとき染色体をバラバラにせずコンパクトに圧縮する機能や、複製された二本の姉妹染色分体がバラバラにならないように一緒に束ねておく機能を持っています。


とても重要な機能を担っているので、あらゆる生物が持っていると言われているのですが、本当にすべての生物がSMCタンパク質を持っているのか、そしてその系統について大規模に解析された事例はなかったので、今回私の研究で初めて大規模解析を行いました。
今回推測した系統樹から、真核生物のSMCは単に原核生物(細菌、古細菌)のSMCから進化したのではなく、もっと複雑な進化過程を経て多様化したのではないか、と考察できました。
今は、研究成果を論文として投稿する準備をしています。

 

どんな風に研究をしているの?

まずは色々な種のSMCタンパク質に関する配列を集めてきて、データセットを作ります。データセットをそろえたら、系統解析を行います。
解析には、研究室にある計算機を使います。系統解析の場合、早ければ2−3日で終わりますが、解析に使うモデルが複雑になると1ヶ月近くかかる計算もあります。

大規模解析ではとても複雑な系統樹が推測される


パソコンでの操作は、研究室に入るまでは慣れていなくて、研究室に入ってから勉強したのですが、研究室の先輩が丁寧に教えてくれました。

研究室の先輩たち

CCSで研究するまでにどんな勉強をしたの?

高校の理科は物理と化学を選択していたので、生物はやっていませんでした。でも、生命の不思議について興味があったので、生物の研究環境が整っている筑波大学を受験して入学しました。大学に入ってからは、生物の講義や実習があって、慣れるまでは大変でしたが、周りの人も優しく教えてくれるので、大丈夫でした。

メッセージ

分子進化学は、生物の一般的なイメージとは違って、コンピュータを使った統計解析などをします。生物の分野でも、こんな研究があるということを皆さんにぜひ知ってもらいたいです。

 

【CCSで学ぶ】一覧に戻る

 

【CCSで学ぶ】 秋山 進一郎さん

秋山 進一郎(あきやま しんいちろう)さん

数理物質科学研究科 物理学専攻
素粒子理論研究室 博士後期課程1 年

 

 

(内容は、2019年12月取材当時のものです。)

今の研究室を選んだ理由

国際基督教大学(ICU) 在学中に、筑波大の大学院に進学することを決めました。筑波大の素粒子グループ、特にCCS は格子QCD 計算を行う研究機関としては、世界的にも有名で、ここで格子場の理論の研究をしたいと思いました。
格子場に興味を持ったきっかけは、数学的に厳密に定義された基礎理論から出発して、様々な物理現象に関して実際に数値的な予言を与えられる、というこの分野ならではの特色にあります。

どんな研究をしているの?

テンソル繰り込み群と呼ばれる数値手法を使って、格子場の理論の研究を行っています。格子場を研究する道具といえば、多くの場合がモンテカルロ法であり、これまでに数多くの成果を上げてきた一方、モンテカルロ法だとどうしても計算することができないような状況も実はたくさん存在します。そこで、従来のモンテカルロ法では難しかった問題にテンソル繰り込み群でチャレンジしているところです。テンソル繰り込み群はそのルーツを統計物理学、物性物理学の分野に持ちます。そのため、素粒子の分野だけに留まらず、色々な物理の分野を広く跨ぎながら研究を進めています。また、情報科学分野の方とも協力して計算プログラムの開発を行っています。

テンソル繰り込み群による格子場の研究の進め方

 

CCS で研究するためにはどんな勉強をしたの?

大学院入試を外部受験したので、とにかく過去問を多く解きました。6 月に行われた推薦入試で合格できました。学部の間はプログラミングに一切触れずだったので、とても大変でした。先輩やポスドクの方々にたくさん助けてもらい、修士論文の時には、自分で書いたコードも使って研究を行いました。プログラムは普段はFortran で書いています。格子場の理論の計算物理学的な研究では、大型計算機による並列処理が必要となることが多く、そのためC やFortran を使っている人が多いと思います。スーパーコンピュータは、Oakforest-PACS を使っています。以前はCOMA も使っていました。

メッセージ

物理は、「何か気になったことがあったらずっと考えてしまう」、そんな人に向いてると思います。学校の授業で何か分からないことがあったら、自分なりに腑に落ちるまで、その疑問と向き合いながら先に進んでいく姿勢も大事なことかもしれないですね。

 

【CCSで学ぶ】一覧に戻る

 

【CCSで学ぶ】 阿左美 進也さん

阿左美 進也(あざみ しんや)さん

数理物質科学研究科 物理学専攻
宇宙物理理論研究室 博士後期課程1 年

 

 

(内容は、2019年7月取材当時のものです。)

今の研究室を選んだ理由

小さいころから自然科学に興味はあって、高校の頃には物理の分野を志していたので、物理の研究で有名な筑波大学を選びました。理工学群物理学類入学後、4 年生の時には素粒子物理学の研究室に所属していました。大学院入試(博士課程前期)の時に、宇宙の研究室に決まりました。

CCS で研究するためにはどんな勉強をしたの?

大学入試では、苦手だった数学に一番苦労しました。英語も化学も苦手でした。大学院入試は物理がメインで、数学や英語もあります。宇宙の分野では物理を扱うことが多いことに気付き、研究室に入ってからは必死に勉強しました。

どんな研究をしているの?

宇宙で最初にできた星に対する輻射の影響を調べています。星ができるときには、エネルギーが輻射(光子)として放出されます。その過程で冷却材と呼ばれる原子や分子をどれくらい壊してしまうかを計算しています。

スーパーコンピュータは使っている?

はい。これまでは、COMA を使って輻射の研究をしていました。これからは、Cygnus とOakforest-PACS を使う予定です。大学院からスーパーコンピュータを使うようになってプログラミングの勉強も始めました。
シミュレーションをするためには、基礎方程式をどのように解くか、解法から考える必要があります。スーパーコンピュータをうまく活用するためには、GPU の使い方などを勉強する必要もあります。個人的には、プログラミングに関することはやっていて楽しいです。

メッセージ

物理はとても楽しいです。色んな学問の基礎に物理があるので、物理を知っていると色々世界も広がると思います!

 

【CCSで学ぶ】一覧に戻る

 

[計算情報学研究部門]助教(テニュアトラック)公募(締切:2020年10月20日)

1. 募集人員
助教(テニュアトラック) 1名

2. 専門分野
データベース、データ工学およびビッグデータ基盤技術

3. 職務内容
計算科学研究センター*1 におけるデータベース、データ工学、ビッグデータ基盤技術ならびにそれらを活用したビッグデータ解析・応用に関する研究開発。
計算科学研究センター計算情報学研究部門(データ基盤分野)では、ビッグデータ・AI時代のデータ利活用を目的として、データ工学および関連分野の研究開発を推進するとともに、計算科学を中心として理学・工学・医学等の各分野の専門家と連携したビッグデータ解析・応用に関する研究に取り組んでいます。
本公募では、データベース・データ工学を専門とし、これらの研究に関係者と協力しながら熱意を持って取り組んでいただける方を求めます。なお、着任後は、大学院システム情報工学研究群(情報理工学位プログラム*2)における研究・教育、ならびに、情報学群情報科学類*3(学部に相当)における教育も担当していただきます。

*1 計算科学研究センター https://www.ccs.tsukuba.ac.jp
*2 システム情報工学研究群情報理工学位プログラム http://www.cs.tsukuba.ac.jp
*3 情報学群情報科学類 https://www.coins.tsukuba.ac.jp

4. 任期
任期5年間のテニュアトラック(基本年俸表適用職員)
着任時から原則5年目に学内規定に基づくテニュア審査が行われ、テニュアが取得できた場合は任期なしとなります。

5. 応募資格
博士の学位を有し(着任時期までに取得見込みも可)、専門分野において優れた研究業績をお持ちで、上記職務に熱意を持って取り組んでいただける方。

6.  着任時期
2021年2月1日以降のなるべく早い時期

7. 待遇
本学規定に基づく

8. 提出書類:
以下の (1)-(6) を電子メールの添付ファイルで提出して下さい。

(1) 履歴書(写真貼付,連絡先と電子メールアドレスを明記)
(2) 研究業績一覧(査読付き学術雑誌論文、査読付き国際会議論文、著書、その他の研究発表、特許、受賞、外部資金獲得実績等に分類したリスト。論文等の共著者名はすべて記入。
なお主要論文(5編以内,(6)参照)については、インパクトファクタ、引用数、採択率等の情報を記載することが望ましい。)
(3) これまでの研究・教育実績の概要(1,500字程度。(6)の主要論文を適宜参照すること。)
(4) 着任後の研究計画・教育に対する抱負と自己アピール(1,500字程度)
(5) 意見を求めうる方2名の氏名・所属・連絡先
(6) 主要論文別刷(5編以内(最近5年以内のもの。ただし、1編はそれ以前のものでも可)、コピー可。研究業績一覧中で当該論文にマークをすること。)

9. 応募締切
2020年10月20日(火)必着

10. 照会先
筑波大学 計算科学研究センター計算情報学研究部門 教授 天笠俊之
Tel: 029-853-2330 / E-mail: amagasa _AT_ cs.tsukuba.ac.jp
(_AT_ を @ に置き換えてください。)

11. 応募書類送付先
提出書類の (1)-(5) を一つのPDFファイルにまとめパスワードをかけ、(6) の各論文のPDFファイルとともに電子メールの添付ファイルとして、
  koubo-dcidb _AT_ ccs.tsukuba.ac.jp (_AT_ を @ に置き換えてください。)
までお送りください。PDFファイルのパスワードは、「10. 照会先」までお送りください。
・メールの件名は、「データ基盤分野応募書類」としてください。
・ファイルサイズの合計が10MBを超える場合は、事前に照会先までご相談ください。
・メール送信後、二日以内に受領確認のメールが届かない場合は照会先までご連絡ください。

12. その他
(1) 応募書類に含まれる個人情報は、本人事選考のみに使用し、他の目的には一切使用しません。選考終了後はすべての個人情報を適切に破棄します。
(2) 計算科学研究センターは、文部科学省共同利用・共同研究拠点に認定されており、計算機共同利用を含む学際計算科学を推進しています。筑波大学では男女雇用機会均等法を遵守した人事選考を行っています。

Placing Barthelonids on The Tree of Life

Researchers from the University of Tsukuba have categorized barthelonids, a group of microscopic anaerobic flagellates, as an early branching Metamonada lineage based on their genetic identity and mitochondrial evolutionary history

Tsukuba, Japan – New species of microbial life are continually being identified, but localizing them on a phylogenetic tree is a challenge. Now, researchers at the University of Tsukuba have pinpointed barthelonids, a genus of free-living heterotrophic biflagellates typified by Barthelona vulgaris, and clarified their ancestry as well as evolution of their ATP-generation mechanisms.

A phylogenetic tree portrays species by lineage. The trunk represents a common ancestor and the branches all its evolutionary descendants; together, a monophyletic group or clade. The eukaryotic Tree of Life represents the phylogeny of all organisms with nucleated cells, ranging from unicellular protists to blue whales. Where would the barthelonids fit?

The researchers established five strains of Barthelona species from different parts of the world. Analysis of the transcriptome of one strain (PAP020), its RNA “signature,” localized it on the phylogenetic tree to the base of the Fornicata clade. This indicated that the last common ancestor of the barthelonids evolutionarily diverged very early in the evolution of Metamonada.

Senior author Professor Yuji Inagaki explains: “We analyzed small subunit ribosomal DNA as well as phylogenomic data to confirm the commonality of all Barthelona strains. In order to deduce their phylogenetic position, we matched transcriptome data from PAP020 against a eukaryote-wide dataset containing 148 genes.”

The transcriptome data of PAP020 also indicated the evolutionarily adapted metabolic pathways of ATP generation. The research team suspected that barthelonids, being anaerobic, possessed mitochondrion-related organelles (MROs) instead of full-fledged mitochondria, a suspicion upheld by electron microscopy. Comparison with MROs in fornicates predicted that PAP020 could not generate ATP in the MRO, as no mitochondrial/MRO enzymes involved in substrate-level phosphorylation were detected. However, PAP020 possesses a cytosolic ATP synthase, acetyl-CoA synthetase (ACS), suggesting that PAP020 generated ATP in the cytosol.

“We have furthered current hypotheses around the evolutionary history of ATP-generating mechanisms in the Fornicata clade in light of data from Barthelona strain PAP020,” says Professor Inagaki. “Interestingly, the sequence ACS2 was formerly believed to be acquired at the base of the Fornicata clade, but we propose that this event occurred earlier with the common ancestor of fornicates and barthelonids. Indeed, it may have occurred further back with the last common metamonad ancestor. Loss of substrate-level phosphorylation from the MRO in the clade containing barthelonids with other fornicates could well be two discrete events.”

(Source: https://doi.org/10.1098/rspb.2020.1538)

 

Original Paper

The article, “Barthelonids represent a deep-branching metamonad clade with mitochondrion related organelles predicted to generate no ATP” was published in Proceedings of the Royal Society B at DOI: http://doi.org/10.1098/rspb.2020.1538

12th symposium on Discovery, Fusion, Creation of New Knowledge by Multidisciplinary Computational Sciences: Program of Parallel sessions

CCS International Symposium 2020 Parallel Sessions

Session 1: Particle physics, Convenor: Hiroshi Ohno    【Zoom】

Time
(5 + 2 min. each)

Speaker
(Affiliation)

Title

16:20-16:27

Naoya Ukita
(Univ. of Tsukuba)

2+1 Flavor Lattice QCD with the Physical Quark Masses

16:27-16:34

Naoya Ukita
(Univ. of Tsukuba)

QCD hadron spectrum on very large volume lattice

16:34-16:41

Naruhito Ishizuka
(Univ. of Tsukuba)

Calculation of K meson decay amplitudes

16:41-16:48

Takeshi Yamazaki
(Univ. of Tsukuba)

Meson form factors in Nf=2+1 lattice QCD at the physical point

16:48-16:55

Eigo Shintani
(Univ. of Tsukuba)

Determination of HVP muon g-2 in lattice QCD

16:55-17:02

Norikazu Yamada
(KEK)

Is N=2 large?

17:02-17:09

Takashi Kaneko
(KEK)

Test of new physics models through B meson semileptonic decays

17:09-17:16

Hideo Matsufuru
(KEK)

Implementation of Lattice QCD common code to large scale parallel supercomputer with manycore and GPU architecture

17:16-17:23

Akihiro Shibata
(KEK)

Study of confinement mechanism based on the dual superconductivity

17:23-17:30

Shinichiro Akiyama
(Univ. of Tsukuba)

Particle Physics with Tensor Network Scheme

17:30-17:37

Hidenori Fukaya
(Osaka Univ.)

Topological excitation in high temperature phase of Quantum Chromodynamics

17:37-17:44

Kazuyuki Kanaya
(Univ. of Tsukuba)

Thermodynamic observables in (2+1)-flavor QCD applying the gradient-flow method

17:44-17:51

Yoshifumi Nakamura
(RIKEN)

Study of QCD with finite temperature

17:51-17:58

Hiroshi Ohno
(Univ. of Tsukuba)

Critical endpoint of 4-flavor QCD at finite temperature

Session 2: Astrophysics, Convenor: Kohji Yoshikawa    【Zoom】

Time
(5 + 2 min. each)

Speaker
(Affiliation)

Title

16:20-16:27

Ataru Tanikawa
(The Univ. of Tokyo)

Study of thermonuclear explosions of white dwarfs

16:27-16:34

Ken Ohsuga
(Univ. of Tsukuba)

Structure Formation in the Universe using Radiation Hydrodynamic Simulations

16:34-16:41

Kenta Kiuchi
(Max Planck Institute for Gravitational Physics)

Gravitational waveform modeling for a black hole-neutron star binary mergers

16:41-16:48

Yuta Asahina
(Univ. of Tsukuba)

GR-RMHD simulations of black hole accretion flows

16:48-16:55

Hidenobu Yajima
(Univ. of Tsukuba)

Time-dependent radiative transfer simulations for in-vivo bioimaging

16:55-17:02

Masao Mori
(Univ. of Tsukuba)

Formation and evolution of local galaxies

17:02-17:09

Takashi Okamoto (Hokkaido University)

Effects of feedback from supermassive black holes on the properties of bulges

17:09-17:16

Satoshi Tanaka
(Kyoto University)

Effect of recombination radiation of the first star formation

Session 3: Nuclear physics,  Convenor: Nobuo Hinohara    【Zoom】

Time
(5 + 2 min. each)

Speaker
(Affiliation)

Title

16:20-16:27 Takumi Doi (RIKEN) First-principles Lattice QCD calculation of Hadron interactions
16:27-16:34 Eigo Shintani (Univ. of Tsukuba) Non-perturbative renormalization of nucleon tensor and scalar couplings in lattice QCD
16:34-16:41 Ryutaro Tsuji  (Tohoku Univ.) Nucleon structure from 2+1 flavor lattice QCD at the physical point
16:41-16:48 Shigeyoshi Aoyama (Niigata Univ.) Ab initio calculation of nuclear clusters
16:48-16:55 Yasutaka Taniguchi (NIT Kagawa College) Deep sub-barrier 12C+12C molecular resonance states
16:55-17:02 Takashi Nakatsukasa (Univ. of Tsukuba) Quantum dynamics in nuclei and neutron stars
17:02-17:09 Kazuyuki Sekizawa (Niigata Univ.) Stochastic Mean-Field Approach for Low-Energy Nuclear Reactions
17:09-17:16 Noritaka Shimizu (Univ. of Tokyo) Microscopic description of the collective motions of medium-heavy nuclei based on shell-model calculations
17:16-17:23 Yusuke Tsunoda (Univ. of Tokyo) Nuclear shapes and collective motions in the region of Sm
17:23-17:30 Jun Terasaki (Czech Tech. Univ.) Improvement of reliability of nuclear matrix element of neutrinoless double-β decay
17:30-17:37 Nobuo Hinohara
(Univ. of Tsukuba)
Calculation of double-beta decay nuclear matrix elements using QRPA

Session 4: Material science, Convenor: Atsushi Yamada    【Zoom】

Time
(5 + 2 min.)

Speaker
(Affiliation)

Title

16:20-16:27

Mitsuharu Uemoto (Kobe Univ.)

First-principles electron-dynamics calculation for the interaction between the metasurface and extreme laser pulse

16:27-16:34

Tomoya    Ono
(Kobe Univ.)

Development of large scale multi-scale simulation platform and its applications

16:34-16:41

Yu-ichiro Matsushita
(Tokyo Inst. Tech.)

Novel formation of SiC/SiO2 interfaces without thermal oxidation processes

16:41-16:48

XiaoMin   Tong
(Univ. of Tsukuba)

Unification of the excitation and ionization of atoms in a strong elliptical laser field

16:48-16:55

Kenji Iida
(Hokkaido Univ.)

Photoexcited Electron Dynamics in Nanostructures

16:55-17:02

Takuya    Sekikawa
(Niigata Univ.)

Superconductivity in WO3 nanowire based on first principles calculations and Tomonaga-Luttinger theory

17:02-17:09

Hiroyasu Koizumi
(Univ. of Tsukuba)

Electronic state calculation for supreconducting cuprates using a two-layer model

17:09-17:16

Toshiaki  Hayashi
(NTT)

Effective medium approximation for variable range hopping

17:16-17:23

Nobuhiko Kobayashi
(Univ. of Tsukuba)

Theory of organic devices by large-scale first-principles charge transport calculations

17:23-17:30

Kota Honda
(Univ. of Tsukuba)

Molecular dynamics simulation for the elucidation of the molecular diffusion behavior in the CO2 hydrate

17:30-17:37

Atsushi    Yamada
(Univ. of Tsukuba)

Maxwell + MD multiscale simulation for vibrational spectroscopy

Session 5: Life science, Chemistry, Convenor: Mitsuo Shoji    【Zoom】

Time
(5 + 2 min. each)

Speaker
(Affiliation)

Title

16:20-16:27 Ryuhei Harada
 (Univ. of Tsukuba)
Developments of Computational Methods for Drug Design Based on PaCS-MD
16:27-16:34 Hiroaki Saito
(Hokuriku University) 
In silico molecular design of transmembrane peptide induces lipid flipping
16:34-16:41 Norifumi Yamamoto
(Chiba Institute of Technology)
Theoretical Study on the Aggregation-Induced Emission
16:41-16:48 Kazutomo Kawaguchi
(Kanazawa University)
Resting membrane potential and ion distribution by all-atom molecular dynamics simulations
16:48-16:55 Hiroaki Kumada
(Univ. of Tsukuba)
Development of a core technologies for multi-modal treatment planning system with the high-speed and high-precision Monte Carlo dose calculation engine
16:55-17:02 Mitsuo Shoji 

(Univ. of Tsukuba)
Theoretical elucidations of chemical reactions by using large-scale molecular simulations
17:02-17:09 Yuki Nagata
(Max Planck Institute for Polymer Research)
Accessing the accuracy of density functional theory through structure and dynamics of the water–air interface
17:09-17:16 Megumi Oya
(Juntendo University)
Automatic target segmentation for whole breast irradiation using the 3D-UNet and its gradient-weighted class activation mapping analysis
17:16-17:23 Yasuteru Shigeta (Univ. of Tsukuba) Theoretical studies on membrane permeability using molecular dynamics simulations
17:23-17:30 Hiroko Kondo
(Kitami Institute of Technology)
Molecular dynamics study of an effect of mutations on the structure of the anti-HIV neutralizing antibody PG16
17:30-17:37 Hiromitsu Shimoyama (Kitasato University) Atomistic Detailed Free-energy Landscape of Intrinsically Disordered Protein studied by Multi-scale Divide-and-conquer Molecular Dynamics Simulation

Session 6: Biology, Global environment, Numerical analysis, Computational informatics, Convenor: Yuji Inagaki    【Zoom】

Time
(5 + 2 min. each)

Speaker
(Affiliation)

Title

16:20-16:27

Hiroaki Shiokawa

(Univ. of Tsukuba)

DSCAN: Distributed Structural Graph Clustering for Billion-edge Graphs

16:27-16:34

Kazumasa Horie

(Univ. of Tsukuba)

Development of Automated Sleep Stage Scoring Method Using Deep Neural Networks

16:34-16:41

Hiroyuki Kusaka

(Univ. of Tsukuba)

Numerical Simulation of Cap and Tsurushi Clouds over Mt. Fuji

16:41-16:48

Takuto Sato

(Univ. of Tsukuba)

Development and Application of Large Eddy Simulation Model Written in the Parallel Computational Code for Urban Areas

16:48-16:55

Takuya Kurihara

(Univ. of Tsukuba)

Analysis of Cloud Formation of Arctic Cyclone with and without Merging Process in the Non-hydrostatic Icosahedral Grid Model

16:55-17:02

Kiyoshi Osawa

(Univ. of Tsukuba)

Evaluation of Baseball Players with Big Data

17:02-17:09

Tetsuya Sakurai

(Univ. of Tsukuba)

Development of Next Generation Parallel Algorithms and Software for Solving Large-scale Eigenvalue Problems

17:09-17:16

Zhiming Shao

(Univ. of Tokyo)

Electron Transfer via Quinone in Photosystem II

17:16-17:23

Yuji Inagaki

(Univ. of Tsukuba)

Phylogenetic Position of Microheliella marins Deduced from a Phylogenomic Alignment Comprising 338 Gene Data.

Session 7: HPC systems, Convenor: Daisuke Takahashi    【Zoom】

Time
(5 + 2 min. each)

Speaker
(Affiliation)

Title

16:20-16:27

Daisuke Takahashi
(University of Tsukuba)

Implementation of Parallel 3-D Real FFT with 2-D Decomposition on Intel Xeon Phi Clusters

16:27-16:34

Masahiro Nakao
(RIKEN Center for Computational Science)

Development of parallel language XcalableMP 2.0 with high performance portability

16:34-16:41

Taisuke Boku
(University of Tsukuba)

Computation and communication unified supercomputing with GPU+FPGA multi-accelerator

16:41-16:48

Miwako Tsuji
(RIKEN Center for Computational Science)

Scalable communication performance prediction for exascale-codesign

16:48-16:55

Toshiyuki Imamura
(RIKEN Center for Computational Science)

Reduced/extended/Mixed-precision matrix computations on FPGAs and GPGPUs

16:55-17:02

Naohito Nakasato
(The University of Aizu)

Performance Evaluation of Various Floating-point Units

17:02-17:09

Kentaro Sano
(RIKEN Center for Computational Science)

Development of Communication Subsystem for Inter-FPGA Networks

17:09-17:16

Shunta Kikuchi
(The University of Tokyo)

Network Intrusion Detection System based on Hybrid FPGA/GPU Pattern Matching

17:16-17:23

Toshihiro Hanawa
(The University of Tokyo)

Investigation of offloading with transprecision on FPGA and GPU

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【受賞】天笠教授がSQiP Best Paper Effective Award を受賞

計算科学研究センターの天笠俊之教授は、2020年9月10-11日にオンライン開催された「ソフトウェア品質シンポジウム2020(SQiP2020)」において、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)ならびに名古屋大学との共同研究の成果を発表しました。

その内容が評価され SQiP Best Paper Effective Award を受賞しました(受賞:2020年9月10日)。
これは、一般発表の中で内容の優れた経験論文に与えられるものです。

発表論文:
波平晃佑、梅田浩貴、大久保梨思子、植田泰士、片平真史(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)、森崎修司(名古屋大学)、天笠俊之(筑波大学)、
自然言語処理による情報検索を用いた故障発想支援の提案

プレスリリース(一般財団法人日本科学技術連盟): 
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000027520.html
開催レポート(ソフトウェア品質シンポジウム2020):
https://www.juse.jp/sqip/symposium/report/

【受賞】北川教授が情報処理学会コンピュータサイエンス領域功績賞受賞

計算科学研究センターの北川博之教授が情報処理学会2019年度コンピュータサイエンス領域功績賞を受賞いたしました(授賞式:2020年9月5日)。

コンピュータサイエンス領域功績賞は、同領域の研究会分野において、優秀な研究・技術開発、人材育成、および研究会・研究会運営に貢献したなど、顕著な功績のあった研究者に対して贈られるものです。

学会HPはこちら
https://www.ipsj.or.jp/award/cs-koseki-award-2019.html

Superconductors are Super Resilient to Magnetic Fields

A new mechanism is proposed by the University of Tsukuba to explain the resilience of superconductors after temporary exposure to a magnetic field, providing a potential route to lossless electricity transmission

Tsukuba, Japan – A researcher at the University of Tsukuba has offered a new explanation for how superconductors exposed to a magnetic field can recover – without loss of energy – to their previous state after the field is removed. This work may lead to a new theory of superconductivity and a more eco-friendly electrical distribution system.

Superconductors are a class of materials with the amazing property of being able to conduct electricity with zero resistance. In fact, an electrical current can circle around a loop of superconducting wire indefinitely. The catch is that these materials must be kept very cold, and even so, a strong magnetic field can cause a superconductor to revert back to normal.

It was once assumed that the superconducting-to-normal transition caused by a magnetic field could not be reversed easily, since the energy would be dissipated by the usual process of Joule heating. This mechanism, by which the resistance in normal wires converts electrical energy into heat, is what allows us to use an electric stovetop or space heater.

“Joule heating is usually considered negatively, because it wastes energy and can even cause overloaded wires to melt,” explains Professor Hiroyasu Koizumi of the Division of Quantum Condensed Matter Physics, the Center for Computational Sciences at the University of Tsukuba. “However, it has been known for a long time from experiments that, if you remove the magnetic field, a current-carrying superconductor can, in fact, be returned to its previous state without loss of energy,”

Now, Professor Koizumi has proposed a new explanation for this phenomenon. In the superconducting state, elections pair up and move in sync, but the true cause of this synchronized motion is the presence of so-called “Berry connection,” characterized by the topological quantum number. It is an integer and if it is nonzero, current flows. Thus, this supercurrent can be switched off abruptly by changing this number to zero without Joule heating.

The founder of modern electromagnetic theory, James Clerk Maxwell, once postulated a similar molecular vortex model that imagined space being filled with the rotation of currents in tiny circles. Since everything was spinning the same way, it reminded Maxwell of “idle wheels,” which were gears used in machines for this purpose.

“The surprising thing is that a model from the early days of electromagnetism, like Maxwell’s idle wheels, can help us resolve questions arising today,” Professor Koizumi says. “This research may help lead to a future in which energy can be delivered from power plants to homes with perfect efficiency.”

Original Paper

The work is published in EPL as “Reversible superconducting-normal phase transition in a magnetic field and the existence of topologically protected loop currents that appear and disappear without Joule heating.” (DOI:10.1209/0295-5075/131/37001)

 

ミトコンドリアのATP産生能力は、真核生物の進化中に複数回失われた

筑波大学 生命環境系 矢﨑裕規研究員(現 理化学研究所 iTHEMS 特別研究員)と計算科学研究センター 稲垣祐司教授を中心とした研究グループは、単細胞真核生物バルセロナ類(Barthelona spp.)の系統的位置とミトコンドリア代謝機能を、トランスクリプトームデータを基盤とする各種解析により解明しました。

バルセロナ類は低酸素環境中に生息する、系統的位置がはっきりとしない、いわゆる「みなしご生物」の1系統であり、これまで遺伝子配列データは全く報告されていませんでした。本研究では、まずバルセロナ類の実験室内培養株5株を確立し、そのうち1種についてトランスクリプトームデータを取得しました。これをもとに大規模分子系統解析を行ったところ、バルセロナ類はフォルニカータ生物群の原始系統であることが分かりました。好気呼吸を行う真核生物と、低酸素環境に生息するフォルニカータ生物のミトコンドリアとでは、ATP産生機構が大きく異なることが報告されており、フォルニカータ生物群におけるミトコンドリア機能の進化を理解する上で、その原始系統であるバルセロナ類のミトコンドリア代謝機能を解明することは重要です。

次にバルセロナ類のミトコンドリア代謝機能を推測したところ、ミトコンドリアにおけるATP産生に関わるタンパク質群は見つかりませんでした。これは、バルセロナ類のミトコンドリアではATPが産生されず、生存に必要なATPは細胞質で産生していることを示唆します。これまでにATP産生能力が欠失したミトコンドリアは、フォルニカータ生物群に属するランブル鞭毛虫とその近縁種で発見されています。しかしバルセロナ類はそのいずれとも系統的に近縁ではなく、両者のATP産生能力が欠失したミトコンドリアは、フォルニカータ生物群の進化中で独立に確立したと考えられます。本研究の成果は、低酸素環境に適応したミトコンドリア機能の進化が我々の予想以上に複雑であることを示唆します。

図.148遺伝子データにもとづき推測されたバルセロナ類の系統的位置。PAP020株をふくむフォルニカータ生物の系統関係については、該当する枝の上と下に、最尤法ブートストラップ値とベイズ法事後確率(いずれも系統樹の各枝が形成する系統群の確からしさを示す値)のをそれぞれ表示した。PAP020株とランブル鞭毛虫はフォルニカータ生物だが、互いに近縁とはならない。写真左:PAP020株の光学顕微鏡像。2本の鞭毛を矢じりで示した。写真右:PAP020株の細胞内微細構造。ミトコンドリア関連オルガネラ(MRO)を星印で示した。

プレスリリース全文

CCS HPCサマーセミナー2020(オンライン開催)

開催主旨

計算科学を支える大規模シミュレーション,超高速数値処理のためのスーパーコンピュータの主力プラットフォームはクラスタ型の並列計算機となってきました.ところが,大規模なクラスタ型並列計算機は,高い理論ピーク性能を示す一方で,実際のアプリケーションを高速に実行することは容易なことではありません.

本セミナーはそのようなクラスタ型並列計算機の高い性能を十二分に活用するために必要な知識,プログラミングを学ぶことを目的としています.超高速数値処理を必要とする大学院生が主な対象ですが,興味をお持ちの方はどなたでもご参加下さい.

開催日時・会場

日程: 2020年9月14日(月) – 9月15日(火)
会場: Zoom によるオンライン開催

参加申し込み

参加申込: こちら から参加登録をお願い致します.
締め切り: 2020年9月13日(日)
参加費: 無料
問い合わせ先: hpc-seminar [at] ccs.tsukuba.ac.jp

参加登録いただいた方に,後日別途 Zoom のアクセス URL をご連絡致します.

プログラム

  9月14日 (月) 9月15日 (火)
09:00 – 10:30 並列処理の基礎 並列数値アルゴリズムI
10:45 – 12:15 並列システム 並列数値アルゴリズムII
13:30 – 15:00 OpenMP 最適化I
15:15 – 16:45 MPI 最適化II

セミナー内容

  セミナー名 セミナー内容 講師
1 並列処理の基礎 アムダールの法則,並列化手法(EP,データ並列,パイプライン並列),通信,同期,並列化効率,負荷バランスなど並列処理に関する基礎事項を学ぶ. 朴 泰祐
2 並列システム SMP,NUMA,クラスタ,グリッドなどの並列計算機システムと,並列計算機システムの性能に大きく関わる事項(メモリ階層,メモリバンド幅,ネットワーク,通信バンド幅,遅延など)を学ぶ. 朴 泰祐
3 OpenMP 並列プログラミングモデル,並列プログラミング言語OpenMPを学ぶ. 李 珍泌
(理化学研究所R-CCS)
4 MPI 並列プログラミング言語MPI2を学ぶ. 建部 修見
5 並列数値アルゴリズムI 代表的な並列数値アルゴリズムである連立一次方程式の解法を学ぶ. 多田野 寛人
6 並列数値アルゴリズムII 代表的な並列数値アルゴリズムである高速フーリエ変換(FFT)を学ぶ. 高橋 大介
7 最適化I 並列計算機システムの計算ノード単体におけるプログラムの最適化手法(レジスタブロック,キャッシュブロック,メモリ割当など)と性能評価に関して学ぶ. 高橋 大介
8 最適化II 並列計算機システム全体における並列プログラムの最適化手法と性能評価に関して学ぶ. 建部 修見

本セミナーを授業として受講する方へ(筑波大生向け)

本セミナーは,筑波大学理工情報生命学術院共通専門基盤科目「計算科学のための高性能並列計算技術」と共通です. 大学院共通科目として本セミナーを受講する方は,TWINS で履修登録して下さい.このページからの参加申し込みは不要です.

 

 

[Oakforest-PACS] ゲリラ豪雨予報実証実験に伴う縮退運転について

現在、Oakforest-PACSシステムについては、「ゲリラ豪雨予報」実証実験のため縮退運転をしております。ユーザーの皆様にはご協力に感謝申し上げます。

昨晩より、1,000ノード程度の計算ノードが運用に組み込めない障害が発生しておりますが、実証実験継続中のため復旧作業を見送っております。従って、約6,000ノードでの縮退運転となっております。ユーザーの皆様には、ご不便をおかけしますが、ご理解いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

第9回 JCAHPCセミナー(第4回OFP利活用報告会)「人類と地球を護るスーパーコンピューティング」

現在,人類と地球は新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) という未曾有の危機に直面しています。
問題解決に向けては「防疫」,「治療」,「創薬」など広範囲にわたり様々な手法による研究開発が急務であり,スーパーコンピュータの有する高速な計算能力,データ処理能力の貢献が期待されております。 このような状況の下,HPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ (*1) ) においては,関係機関の協力のもと,関連する研究が必要とする計算資源を提供する臨時の課題募集 「新型コロナウイルス感染症対応HPCI臨時公募課題(*2)」 がおこなわれています。

最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC: Joint Center for Advanced High Performance Computing)筑波大学計算科学研究センター東京大学情報基盤センターとが共同で設立した組織です。 JCAHPCでは国内最大級の計算性能を有するOakforest-PACSシステム(OFP)を設計,導入し,2016年10月より共同で運用を開始して以来,最先端の計算科学を推進し,我が国と世界の学術及び科学技術の振興に寄与してまいりました。

筑波大学・東京大学の両センターとJCAHPCは,HPCIシステム構成機関として「新型コロナウイルス感染症対応HPCI臨時公募課題」に計算資源を提供し、新型コロナウイルス感染症に関する研究を支援しています。 2020年8月20日現在,合計13課題が採択されていますが,そのうち3課題が最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)のOakforest-PACSを使用したものであり,2課題が筑波大学計算科学研究センターのCygnus,3課題が東大情報基盤センターのOakbridge-CX(OBCX)となっており,60%以上の課題が筑波大・東大関連のシステムを利用して実施されています。

JCAHPCでは,2017年から毎年10月に「OFP利活用報告会」として利用者,JCAHPC教員により,OFPにおける研究開発事例の紹介を実施してまいりました。 第4回目となる今回は「人類と地球を護るスーパーコンピューティング」として,「新型コロナウイルス感染症対応HPCI臨時公募課題」の事例の他,OFPによるゲリラ豪雨予測リアルタイム実証実験について紹介します。 また,「新型コロナウイルス感染症対応HPCI臨時公募課題」についてはOFPだけでなく,Cygnus(筑波大,1件),OBCX(東大,2件)を利用した課題についても紹介いたします。

(*1)HPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)
文部科学省が整備した日本が誇る強力な研究基盤。国立大学・国立研究開発法人に設置されているスーパーコンピュータ等を高速ネットワークで結び、多様なユーザーニーズに応える革新的な共用計算環境を提供している。
(*2)HPCIシステム構成機関の協力により実現した文部科学省主導プロジェクト。新型コロナウイルス感染症対策の研究のために 学術界、産業界を問わず、新型コロナウイルス感染症対策を行っている研究者に合計114PFLOPSの性能を有する多様なスーパーコンピュータ資源を無償で提供する臨時の公募。詳細は https://www.hpci-office.jp/


本利用活用報告会はオンラインにて開催予定です。

第9回JCAHPCセミナー(第4回OFP利活用報告会)
「人類と地球を護るスーパーコンピューティング」

日時:2020 年 10 月 15 日(木)(13 : 00 ~ 17 : 10)
主催:最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)
共催:東京大学情報基盤センター,筑波大学計算科学研究センター
   HPCIコンソーシアム
参加費:無料,「事前参加登録」をお願いいたします。

参加申込

申込フォーム

※必ず事前登録をお願いいたします(セミナーの前日まで受け付けます)

プログラム

時 間 講演者/表題 利 用
システム*
13:00 – 13:15 中島研吾(東京大学 JCAHPC)
Opening
13:15 – 13:45 三好建正(理化学研究所)
ゲリラ豪雨予測のリアルタイム実証実験
OFP
13:45 – 14:15 Marco Edoardo Rosti(OIST)
Spreading of polydisperse droplets
in a turbulent puff of saturated exhaled air
OBCX
14:15 – 14:45 岡田純一(UT Heart 研究所)
COVID-19治療の候補薬:
chloroquine、hydroxychloroquine、azithromycinの
催不整脈リスクの評価ならびにその低減策に関する研究
OFP
14:45 – 15:00 休憩
15:00 – 15:30 杉田有治(理化学研究所)
新型コロナウイルス表面のタンパク質動的構造予測
OFP
15:30 – 16:00 望月祐志(立教大学)
新型コロナウイルスの主要プロテアーゼに関する
フラグメント分子軌道計算
OFP
16:00 – 16:30 重田育照(筑波大学)
Covid-19 関連タンパクに対する統合的インシリコリポジショニング
Cygnus
16:30 – 17:00 星野忠次(千葉大学)
計算機解析によるSARS-CoV-2増殖阻害化合物の探索
OBCX
17:00 – 17:10 朴泰祐(筑波大学 JCAHPC)
Closing
* OFP:Oakforest-PACS、OBCX:Oakbridge-CX

本セミナーの問い合わせ先

〒113-8658 東京都文京区弥生2-11-16
東京大学 情報基盤センター

中島研吾(幹事)
E-mail:nakajima@cc.u-tokyo.ac.jp
(”@”を半角にしてからお送りください。)

なぜ、超伝導電流は電気抵抗なしで消えるのか? 〜磁場中での超伝導-常伝導相転移を説明する新理論〜

概要

国立大学法人筑波大学計算科学研究センター 小泉裕康准教授は、現在、広く適用されている超伝導理論では説明ができなかった、超伝導体が磁場中で超伝導状態から通常の金属状態(常伝道状態)に相転移する際、超伝導電流がジュール熱を発生せずに消失するという現象の、理論的解明に成功しました。

本研究が提唱する新理論では、「超伝導電流はベリー接続」によって生じる集団モードが作るループ電流の集まりである」と考えるべきであることが示されました。また、ベリー接続の生成にはラシュバ型スピン軌道相互作用が重要である可能性を明らかにしました。

現在の超伝導の標準理論は、超伝導電流の説明の点で問題があることが度々指摘されてきました。今回の成果は、この問題点を解消するために、標準理論をどのように変更していくべきかについての一つの指針を提示したことになります。標準理論が変更されることにより、長い間、メカニズムが不明のままになっている、銅酸化物高温超伝導の機構解明が達成される可能性もあります。さらに、超伝導体を量子ビットとして使うエラー訂正機能を備えた量子コンピュータの実現に関しても、重要な貢献になり得ると考えられます。

プレスリリース全文

研究トピックス「現実世界の課題をコンピュータビジョンで解決!」公開

計算科学研究センター(CCS)に所属する教員・研究員の研究をわかりやす句紹介する「研究者に聞く− 研究トピックス」に「Vol.2 現実世界の課題をコンピュータビジョンで解決!」を公開しました。

計算情報学研究部門 計算メディア分野 の北原教授の研究を紹介しています。

「研究者に聞く− 研究トピックス」

「Vol.2 現実世界の課題をコンピュータビジョンで解決!」

30秒ごとに更新するゲリラ豪雨予報 -首都圏でのリアルタイム実証実験を開始-

理化学研究所(理研) 計算科学研究センターデータ同化研究チームの三好建正チームリーダー、情報通信研究機構 電磁波研究所リモートセンシング研究室の佐藤晋介研究マネージャー、大阪大学 大学院工学研究科の牛尾知雄教授、株式会社エムティーアイ ライフ事業部気象サービス部の小池佳奈部長、筑波大学 計算科学研究センターの朴泰祐教授、東京大学 情報基盤センターの中島研吾教授らの共同研究グループは、2020年8月25日から9月5日まで、首都圏において30秒ごとに更新する30分後までの超高速降水予報のリアルタイム実証実験を行います。

本研究成果は、近年増大する突発的なゲリラ豪雨[1]などの降水リスクに対して、コンピュータ上の仮想世界と現実世界をリンクさせることで、超スマート社会Society 5.0[2]の実現に貢献すると期待できます。

共同研究グループは、2016年にスーパーコンピュータ「京」[3]とフェーズドアレイ気象レーダ(PAWR)[4]を生かした「ゲリラ豪雨予測手法」を開発しました注1)。今回、この手法を高度化し、さいたま市に設置されている情報通信研究機構が運用する最新鋭のマルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP-PAWR)[5] による30秒ごとの雨雲の詳細な観測データと、筑波大学と東京大学が共同で運営する最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)のスーパーコンピュータOakforest-PACS[6]を用いて、リアルタイムで30秒ごとに新しいデータを取り込んで更新し、30分後まで予測する超高速降水予報システムを開発しました。この予測データを、理研の天気予報研究のウェブページでは30秒ごとに分割して連続的に表示します。これまでの天気予報と比べて桁違いに速い速度で更新することにより、わずか数分の間に急激に発達するゲリラ豪雨を予測できます。このリアルタイム予報は世界初かつ唯一の取り組みで、研究開発に着手した2013年10月から継続してきたさまざまな成果の集大成です。

実証実験で得る予報データは、気象業務法に基づく予報業務許可のもと、理研の天気予報研究のウェブページ(https://weather.riken.jp/)および株式会社エムティーアイのスマートフォンアプリ「3D雨雲ウォッチ」(https://pawr.life-ranger.jp/)で8月25日午後2時から公開します。

ただし、この予報は試験的に行うものであり、実用に供する気象予報に十分な精度や安定した配信環境が保証されたものではなく、利用者の安全や利益に関わる意思決定のための利用には適したものではありません。

 

プレスリリース全文

現実世界の課題をコンピュータビジョンで解決!

北原 格 教授

計算情報学研究部門 計算メディア分野

北原教授は、我々人間と同等の視覚機能をコンピュータで実現することを目的としたコンピュータビジョン(Computer Vison)注1)の研究者です。研究成果を使って、内視鏡で撮影した医療画像をもとに手術のナビゲーションを行なったり、観光客の記念撮影写真から世界遺産などの保全状態を把握したりと、様々な場面で人間活動をサポートする応用研究も進めています。

(2020.8.21 公開)

 

知識・経験に基づく画像判定で意味のある情報を引き出す

北原教授は、コンピュータビジョンを用いて現実世界の様々な課題に挑戦しています。ここでは、災害現場での活用例について紹介します。

図1 空撮写真から復元した3次元地図に災害状況をラベル付けしたイメージ

近年の災害現場では、被災状況調査に加え、その場にいる人がスマホで撮影した映像やドローンによる空撮映像など、現場の状況を伝える画像をたくさん得ることが可能となってきました。しかし、何万枚という写真を並べられても、一度に見きれるものではありません。一方、災害現場が3次元的に再現され、被災箇所やその程度がラベルされていたら、救助などにすぐ役立てることができます(図1)。 

たくさんの現場写真からこのような被災地マップを作るには、難しいポイントが二つあります。

一つは、カメラが動きまわりながら、変動する被写体を撮影している点です。固定カメラで静止した被写体を撮る場合とは違い、カメラも被写体も動く場合、画像上のある点が他のカメラから撮影したどの点に対応するのかを解析的に調べて統合する方法では、3次元形状を正確に構築することができません。

もう一つは、画像を観察する人にとって意味のある情報を推定して提示することが求められる点です。先程の例なら、被災地マップに「全壊」「無傷」のようなラベルをつける必要があります。

この二つのポイントを解決するために、北原教授は人工知能処理の一つである深層学習(Deep Learning)注2)によって画像から必要な情報を効率的に獲得する研究を進めています。人間が一枚の写真から奥行きや位置関係、状況などを把握できるように、コンピュータにも知識・経験に基づいて画像を判定してもらおうというものです。

人間の知識も、スパコンも活用

コンピュータによる判定を実現するためには、正解・不正解が分かっているデータ(教師データ)を用いて“学習”する必要があります。北原教授の参加する研究プロジェクト『CRESTサイボーグクラウド』では、教師データを作るためにクラウドソーシング 注3)でたくさんの人に画像判定をしてもらう試みを導入しました。これにより、効率的に多くの「人間の知識・経験に基づく教師データ」を集めることが可能になりました(図2)。

図2スパコンによる人工知能処理(倒壊判定)のイメージ:人間が判定したデータを教師データとして識別パターンを生成し、新たに被災地で収集された画像の状態を判定する。

こうして集めた教師データをもとに、無数の場合わけのパターンに対する適切な判定を学習し、「このデータの場合はこの判定」という識別パターンのセットを作ります。この識別パターンを参照することで、入力データ(画像)に含まれる色や明るさの情報を変換した数字(数値情報)から3次元形状復元や状況判定を高速かつ正確に計算できるようになります。

識別パターンの作成には膨大な計算が必要なため、計算科学研究センターのスーパーコンピュータ(以下、スパコン)Cygnusも活用しています。このCygnusは、メモリ容量が大きく並列処理が得意なため、画像処理の研究にも高いパフォーマンスを発揮するスパコンです。

画像処理に強いCygnusが加わったことで、より多様で大量のデータを高速かつ高精度に検証することが可能になりました。


【用語】
1) コンピュータビジョン(Computer Vision):人間が有する高度な視覚機能をコンピュータ上で実現することを目的とした研究分野。 “ロボットの目”の実現を目指していることからロボットビジョンやマシンビジョンと呼ばれることもある。
2) 深層学習(Deep Learning):生物の神経回路を模した人工ニューラルネットワークを多層(入力層+2つ以上の中間層+出力層)に結合し、学習能力を高めた機械学習の手法の一つ。
3) クラウドソーシング: crowd(群集)+ sourcing(業務委託)= crowdsourcing という造語。インターネットを通じて不特定多数のユーザが手分けして作業した成果を持ち寄ることで、大きなプロジェクトを進めることが可能。

 

さらに詳しく知りたい人へ

  • 北原研究室 研究紹介ページ (2021.12.15 リンク更新)
    (防災研究のほか、手術ナビゲーション技術、自由視点映像による児童発達支援などの研究紹介動画を見ることができます)