研究Topics

現実世界の課題をコンピュータビジョンで解決!

北原 格 教授

計算情報学研究部門 計算メディア分野

北原教授は、我々人間と同等の視覚機能をコンピュータで実現することを目的としたコンピュータビジョン(Computer Vison)注1)の研究者です。研究成果を使って、内視鏡で撮影した医療画像をもとに手術のナビゲーションを行なったり、観光客の記念撮影写真から世界遺産などの保全状態を把握したりと、様々な場面で人間活動をサポートする応用研究も進めています。

(2020.8.21 公開)

 

知識・経験に基づく画像判定で意味のある情報を引き出す

北原教授は、コンピュータビジョンを用いて現実世界の様々な課題に挑戦しています。ここでは、災害現場での活用例について紹介します。

図1 空撮写真から復元した3次元地図に災害状況をラベル付けしたイメージ

近年の災害現場では、被災状況調査に加え、その場にいる人がスマホで撮影した映像やドローンによる空撮映像など、現場の状況を伝える画像をたくさん得ることが可能となってきました。しかし、何万枚という写真を並べられても、一度に見きれるものではありません。一方、災害現場が3次元的に再現され、被災箇所やその程度がラベルされていたら、救助などにすぐ役立てることができます(図1)。 

たくさんの現場写真からこのような被災地マップを作るには、難しいポイントが二つあります。

一つは、カメラが動きまわりながら、変動する被写体を撮影している点です。固定カメラで静止した被写体を撮る場合とは違い、カメラも被写体も動く場合、画像上のある点が他のカメラから撮影したどの点に対応するのかを解析的に調べて統合する方法では、3次元形状を正確に構築することができません。

もう一つは、画像を観察する人にとって意味のある情報を推定して提示することが求められる点です。先程の例なら、被災地マップに「全壊」「無傷」のようなラベルをつける必要があります。

この二つのポイントを解決するために、北原教授は人工知能処理の一つである深層学習(Deep Learning)注2)によって画像から必要な情報を効率的に獲得する研究を進めています。人間が一枚の写真から奥行きや位置関係、状況などを把握できるように、コンピュータにも知識・経験に基づいて画像を判定してもらおうというものです。

人間の知識も、スパコンも活用

コンピュータによる判定を実現するためには、正解・不正解が分かっているデータ(教師データ)を用いて“学習”する必要があります。北原教授の参加する研究プロジェクト『CRESTサイボーグクラウド』では、教師データを作るためにクラウドソーシング 注3)でたくさんの人に画像判定をしてもらう試みを導入しました。これにより、効率的に多くの「人間の知識・経験に基づく教師データ」を集めることが可能になりました(図2)。

図2スパコンによる人工知能処理(倒壊判定)のイメージ:人間が判定したデータを教師データとして識別パターンを生成し、新たに被災地で収集された画像の状態を判定する。

こうして集めた教師データをもとに、無数の場合わけのパターンに対する適切な判定を学習し、「このデータの場合はこの判定」という識別パターンのセットを作ります。この識別パターンを参照することで、入力データ(画像)に含まれる色や明るさの情報を変換した数字(数値情報)から3次元形状復元や状況判定を高速かつ正確に計算できるようになります。

識別パターンの作成には膨大な計算が必要なため、計算科学研究センターのスーパーコンピュータ(以下、スパコン)Cygnusも活用しています。このCygnusは、メモリ容量が大きく並列処理が得意なため、画像処理の研究にも高いパフォーマンスを発揮するスパコンです。

画像処理に強いCygnusが加わったことで、より多様で大量のデータを高速かつ高精度に検証することが可能になりました。


【用語】
1) コンピュータビジョン(Computer Vision):人間が有する高度な視覚機能をコンピュータ上で実現することを目的とした研究分野。 “ロボットの目”の実現を目指していることからロボットビジョンやマシンビジョンと呼ばれることもある。
2) 深層学習(Deep Learning):生物の神経回路を模した人工ニューラルネットワークを多層(入力層+2つ以上の中間層+出力層)に結合し、学習能力を高めた機械学習の手法の一つ。
3) クラウドソーシング: crowd(群集)+ sourcing(業務委託)= crowdsourcing という造語。インターネットを通じて不特定多数のユーザが手分けして作業した成果を持ち寄ることで、大きなプロジェクトを進めることが可能。

 

さらに詳しく知りたい人へ

  • 北原研究室 研究紹介ページ 
    (防災研究のほか、手術ナビゲーション技術、自由視点映像による児童発達支援などの研究紹介動画を見ることができます)