2023年12月11日
東京大学宇宙線研究所
国立天文台科学研究部
筑波大学
発表のポイント
◆ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の大規模高感度観測データを用い、129 億年から134 億年前の初期の宇宙に3 つ、炭素、酸素に対する窒素の比率が異常に多い銀河があることを発見しました。
◆現在の宇宙の天の川銀河と比較しても3 倍以上の多さで、恒星の内部で元素が作られて超新星爆発で宇宙空間に拡散するというこれまでの理論では説明できない数値です。
◆その比率は恒星の外層にあるガスの成分に近いので、これらのガスだけが恒星から流れ出たか、ブラックホールによって引き剥がされて宇宙空間に放出された可能性があり、初期の宇宙についての新たな謎を提起したと言えます。
発表の概要
東京大学宇宙線研究所の磯部優樹大学院生と大内正己教授らによる研究グループは、129億年から134億年前の宇宙にある3つの銀河で、炭素と酸素に対して窒素が異常に多いことを明らかにしました。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の赤外線観測で得られた非常に高い精度のデータを詳しく解析して測定した酸素、炭素に対する窒素の存在比は、現在の太陽系はもとより、私たちの天の川銀河と比べても3倍以上に及びます。このことは、これまで一般的に考えられていた元素の主な供給メカニズム(恒星の内部で元素が作られて超新星爆発で宇宙空間に拡散すること)とは異なるプロセスが初期の宇宙で起こっていることを意味し、ビッグバン直後の宇宙に新たな謎がもたらされました。
掲載論文
- 【題名】
- JWST Identification of Extremely Low C/N Galaxies with [N/O]≳0.5 at z∼6-10 Evidencing the Early CNO-Cycle Enrichment and a Connection with Globular Cluster Formation
- 【掲載誌】
- The Astrophysical Journal
- 【DOI】
- 10.3847/1538-4357/ad09be