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睡眠ステージを自動的に判定する手法を開発 ~マウス4,200匹の睡眠時生体信号を学習・解析~

筑波大学計算科学研究センター 北川博之教授、堀江和正助教、塩川浩昭助教および、国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS) 柳沢正史教授、船戸弘正客員教授らの研究グループは、マウスの脳波や筋電位からその睡眠ステージを自動的に判定する手法を開発しました。本手法は、睡眠の基礎研究の基盤充実や高度化につながると考えられます。

睡眠の基礎研究では、遺伝子や薬品が睡眠にどのような影響を与えるか調査すべく、マウスを用いた実験がよく行われます。マウスの脳波・筋電位からその睡眠ステージ(覚醒・ノンレム睡眠・レム睡眠)を判定する「睡眠ステージ判定」は、 これらの実験における重要な検査の一つです。しかし、本検査は多くの時間と労力を必要とすることから、研究におけるボトルネックの一つとなっていました。

この問題を解決すべく、本研究では睡眠ステージ自動判定手法(MC-SleepNet)を開発しました。これは、脳波・筋電位と睡眠ステージの対応関係を深層学習モデルで学習し、前者から後者を推定するもので、判定に有効な波形の特徴の自動的な発見・利用、 睡眠ステージの変遷法則の獲得といった機能を有しています。これらの機能は、畳み込みニューラルネットや、Long short-terms memory などの手法により実現しています。

また、本研究では、深層学習モデルの訓練や性能評価に、4,200匹ものマウスから計測した生体信号を使用しています。これは従来研究の約40倍に相当する最大規模のデータセットで、高い精度やノイズに対する頑健性を確保しています。また、本データセットを精度検証に利用すると、多種多様な脳波・筋電位データに対して、安定したステージ判定を行えることが示されており、本手法は信頼性が高く、睡眠研究の効率化にも大きく貢献できると考えられます。

図 マウス睡眠ステージと自動判定
一般に、マウスの睡眠は脳波(EEG)や筋電位(EMG)の状態から覚醒(Wake)、ノンレム(Non-REM)、レム(REM)の3ステージに分類されます。これまでは専門家による目視でこれらのステージを判定していましたが、非常に時間がかかっていました。本手法は専門家との判定一致率96.6%を達成、専門家の代替として睡眠ステージを判定することが可能です。

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