プレスリリース

海洋微生物と共生するシアノバクテリアは広く海洋に分布する「見逃された」系統だった  単細胞ゲノム解析により判明

発表のポイント

  • 光合成を行う微生物シアノバクテリア(藍色細菌)は生態系において重要な生物であり、その多様性はこれまで網羅的に調べられてきた。
  • 本研究において、別の微生物の細胞に共生する海洋シアノバクテリアのゲノム配列を解読したところ、このシアノバクテリアは世界の海洋に広く分布するが、共生関係にあるがゆえにこれまで「見逃されて」いた系統であることが示された。
  • このシアノバクテリアは長い期間、他の生物と密接に共生することで独自の進化を遂げたと考えられる。
  • この成果は、未だに見逃されているシアノバクテリア系統がさらに存在する可能性も示唆している。
 

概要

 シアノバクテリアは水中に生育する重要な光合成性細菌のグループであり、地球上にどのような種類のシアノバクテリアが存在するのか、これまで活発に調べられてきました。シアノバクテリアは単独で生育する以外に、他の生物と共生する事も知られていますが、このようなシアノバクテリアについては調査があまり進んでいません。東北大学大学院生命科学研究科の中山卓郎助教・河田雅圭教授らの研究グループは、筑波大学計算科学研究センター稲垣祐司教授・筑波大学生命環境系(下田臨海実験センター)稲葉一男教授・柴小菊助教・野村真未博士研究員らと共同で、渦鞭毛藻と呼ばれる微生物の一種に共生するシアノバクテリアを数細胞採取し、ゲノム解析を行いました。その結果、このシアノバクテリアは海洋に広く分布するが、共生関係にあるがゆえにこれまで「見逃されて」いた系統であることが示されました。
 この結果は、未だに見逃されているシアノバクテリア系統がさらに存在する可能性を示唆する重要な報告です。本研究成果は、米国科学アカデミー紀要(米国東部時間6月24~28日付の電子版)に掲載されます。
 
図 共生シアノバクテリアゲノム解析の概要

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