プレスリリース

多国間国際研究協力事業(G8RCI)の採択について

プレスリリース

平成23年7月20日
筑波大学

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概要

ポイント

 国際的かつ分野横断的な研究課題をG8の多国間共同で実施するにあたり、各国の学術支援機関が資金を提供する「多国間国際研究協力事業(G8RCI)」が平成23年度から始まり、筑波大学計算科学研究センターの教員を研究代表者とする2つの研究グループが採択されました。

 79件の応募の中から採択されたのはわずか6件であり、このような高倍率の中で2件も採択されたことは、計算科学研究センターが国際的に高く評価されている表れといえます。

多国間国際研究協力事業について

 多国間国際研究協力事業(G8 Research Councils Initiative:G8RCI)は、国際的で分野横断的な研究に対して、G8各国の学術振興機関が協力して研究資金の提供を行い、多国間の共同研究を推進する事業です。3カ国以上の研究プロジェクトからなるコンソーシアム単位で採択するのが特徴です(図1)。

 2008年に京都で開催されたG8の学術支援機関長会議(G8-HORCs)において、多国間共同研究の支援事業の設立について提案があり、日本、カナダ、フランス、ドイツ、ロシア、イギリス、アメリカの7カ国が参加して事業を行うことになりました。各国の学術振興機関、日本学術振興会JSPS(日本)、NSERC(カナダ)、ANR(フランス)、DFG(ドイツ)、RFBR(ロシア)、RCUK(イギリス)、NSF(アメリカ)が協力して、研究資金の提供を行います。

 平成22年度から5年間にわたって3回の公募を実施する予定で、採用期間は2~3年間です。第1回(平成22年度)の公募テーマは「エクサスケール*1・コンピューティングを視野に入れた地球規模課題のための応用ソフトに関する学際的プログラム」で、79件の応募の中から6件の研究コンソーシアムが採択されました。1回の公募あたりの3年間の予算総額は、全参加学術支援機関を合わせて、およそ1000万ユーロ(約11億2000万円)です。

研究コンソーシアムの例

図1 研究コンソーシアムの例(提供:日本学術振興会)

筑波大学計算科学研究センターが関係する研究コンソーシアム

 第1回公募で採択された6件のコンソーシアムのうち2件で、筑波大学計算科学研究センターの教員を研究代表者とするプロジェクトが採択されました。佐藤三久教授(センター長)は「ECS:エクサスケール・コンピューティングによる精緻な気候シミュレーションの実現」において、朴 泰祐教授(副センター長)は「NuFuSE:エクサスケール・コンピューティングにおける核融合シミュレーション」においてです。

○ ECS:Enabling Climate Simulation at Extreme Scale
エクサスケール・コンピューティングによる精緻な気候シミュレーションの実現
研究プロジェクト代表者 佐藤三久教授(筑波大学計算科学研究センター長)

 「ECS」には日本のほか、アメリカ、フランス、ドイツ、スペイン、カナダの6カ国の研究者が参加します。エクサスケール・コンピューティングでは、超高解像度のモデルの導入や、より複雑な計算ができるようになり、より精度の高い気候変動予測が可能になります。このプロジェクトにはアメリカのBlue Waters、スペインの Marenostrum2 、ドイツのJUGENEが使用されます。日本では、京速コンピュータ「京」とTSUBAME2.0のほか、筑波大学計算科学研究センターのT2K-Tsukubaが使用されます。

 また「ECS」の国内研究プロジェクトとしては、佐藤センター長のプロジェクト以外に、東京工業大学学術国際情報センターの松岡 聡教授のプロジェクトも選ばれています。

 「ECS」は3年間で総額約125万ユーロ(約1億4000万円)の研究経費を見込んでおり、佐藤センター長のプロジェクトには日本学術振興会から3年間で約1600万円が提供される予定です。


○ NuFuSE:Nuclear Fusion Simulations at Exascale
エクサスケール・コンピューティングにおける核融合シミュレーション
研究プロジェクト代表者 朴 泰祐教授(筑波大学計算科学研究センター副センター長)

 「NuFuSE」はイギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、ロシアを含めた6カ国の研究者らと協力して研究を行います。核融合反応は恒星のエネルギー源であり、将来のエネルギー資源として期待されています。国際熱核融合実験炉(ITER)などの大規模実験を進める上で重要となる、GT5D、GKV、MEGA、GpicMHD等*2の国内開発核融合シミュレーションコードのエクサスケールに向けた大規模並列化・高性能化を、計算工学と計算機科学の協調と、多国間協力関係の下で進めます。さらに新しい世代の並列言語による核融合シミュレーションコード開発にも挑戦します。

 これらを実現するためには、アプリケーション(計算科学)からシステム(計算機科学)への全領域において国際的な連携が必要です。具体的にはまず、アプリケーション側で各国内のコード開発を進め、システム側はそれをサポートするという国単位のローカルな形で進めます。一方で、アルゴリズム、コード、システムのレベルごとに、国際的に連携しつつ最適化を議論していくことになります。

 このプロジェクトではT2K-Tsukubaのほか、青森県六カ所村のITERマシン、核融合科学研究所のスーパーコンピュータを用います。さらにプロジェクトの後半には、筑波大学計算科学研究センターに導入される次世代スーパーコンピュータにも展開する予定です。

 「NuFuSE」は3年間で総額約175万ユーロ(約1億9600万円)の研究経費を見込んでおり、朴副センター長のプロジェクトには日本学術振興会から3年間で約2600万円が提供される予定です。

用語解説

*1 エクサスケール:エクサは1018を表し、エクサスケールのスーパーコンピュータでは1秒間に1018回の演算が可能になります。これは京速コンピュータ「京」の100倍の速さに相当します。

*2 GT5D, GKV, MEGA, GpicMHD等:核融合シミュレーションでは、磁気流体力学に基づく場のシミュレーションと粒子シミュレーションを複合的に行う必要があり、様々な手法が研究されています。これらのシミュレーションプログラムは、日本国内で研究開発が進められている国際的にも認知されているもので、どのような計算手法を用いるかがそれぞれ異なります。いずれも高精度・大規模なシミュレーションを行うべく開発が進められています。

関連情報

  日本学術振興会(JSPS)ホームページ
事業概要:http://www.jsps.go.jp/j-bottom/01_b_gaiyo.html
申請・採用状況:http://www.jsps.go.jp/j-bottom/04_b_jyoukyou.html
DFG(第1回公募事務局)ホームページ
http://www.dfg.de/en/research_funding/international_cooperation/research_collaboration/g8-initiative/
「ECS」研究課題概要:
http://www.dfg.de/download/pdf/foerderung/internationale_kooperation/g8-initiative/enabling_climate_simulation.pdf
「NuFuSE」研究課題概要:
http://www.dfg.de/download/pdf/foerderung/internationale_kooperation/g8-initiative/nuclear_fusion.pdf
「ECS」フランス研究代表者所属機関(INRIA)発表資料
http://en.inria.fr/news/news-from-inria/g8-enabling-climate-simulation
 

問い合わせ先

担当者:
佐藤三久(筑波大学計算科学研究センター教授/センター長)
朴 泰祐(筑波大学計算科学研究センター教授/副センター長)

報道担当:
筑波大学計算科学研究センター広報室
電話 029-853-6487 FAX 029-853-6406 E-mail:pr [at] ccs.tsukuba.ac.jp
筑波大学広報室
電話 029-853-2040 FAX 029-853-2014