プレスリリース

紫外線で壊れたDNAをどう直す?光で働く修復酵素のしくみを解明 ~DNA修復に不可欠な”光の第一ステップ”を捉えることに成功~

2025 8 27
兵庫県立大学
大阪大学
筑波大学

概要

兵庫県立大学大学院理学研究科の久保稔教授の研究グループは、大阪大学大学院基礎工学研究科の山元淳平准教授、筑波大学計算科学研究センターの重田育照教授らと共同で、DNAの損傷を光で修復する酵素の反応過程を詳しく解析しました。そして独自開発の分光計測技術を用いて、修復反応の途中で一時的に現れる「オキセタン中間体」を世界で初めて実験的に捉え、その存在を裏付けることに成功しました。

DNAは紫外線を浴びると特定部位に化学反応が起こり、「(6-4)光産物」という損傷構造が形成されます。このDNA損傷は細胞にとって有害であるため、多くの生物は「(6-4)光回復酵素」と呼ばれる酵素を使って修復を行います。この酵素は青色光のエネルギーを利用してDNAを修復しますが、修復には2回の光吸収が必要であり、特に最初の光によって生成される反応中間体の正体は長らく不明でした。

今回、研究グループは、紫外線や赤外線を用いた分光測定を駆使して、第一の光で生成される反応中間体を捉えることに成功しました。この中間体では、損傷した2つのDNA塩基が「オキセタン」と呼ばれる特殊な環状構造を形成しており、さらに第二の光の作用によってこの環構造が切断されることで、DNAは正常な形に戻ることがわかりました。

この成果は、光によって損傷DNAを段階的に修復するという酵素反応の核心を分子レベルで解明するものであり、光誘導型DNA修復ツールの設計に向けた基盤的な知見を提供するものです。本研究成果は、国際科学雑誌「Communications Chemistry」に2025年8月29日午後6時(日本時間)に掲載される予定です。

 

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掲載論文

【題名】 Infrared and ultraviolet spectroscopic characterization of a key intermediate during DNA repair by (6-4) photolyase
((6-4)光回復酵素によるDNA修復中間体の赤外および紫外分光学的解析)
【掲載誌】 Communications Chemistry
 
【DOI】10.1038/S42004-025-01625-9