プレスリリース

真核生物の新たな系統分類群「パンクリプチスタ」と「CAMクレード」を提唱

2022年4月15日

国立研究開発法人海洋研究開発機構
国立大学法人筑波大学

発表のポイント

  • 分類不明であった原生生物などの大規模分子系統解析から、真核生物の新規巨大生物群“パンクリプチスタ”を提唱した。
  • パンクリプチスタは、二重膜の葉緑体を持つ巨大生物群(=一次植物*1)の姉妹群であり、これら2つの生物群を合わせてメガ生物群“CAMクレード”と呼称することを提唱した。
  • 過去の研究で一次植物が単系統*2群を形成しなかった原因は、一部のパンクリプチスタが持つ特異な進化シグナルにあることを分子系統学的に解明した。


2.概要

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和 裕幸、以下「JAMSTEC」という。)地球環境部門 海洋生物環境影響研究センター 深海生物多様性研究グループの矢吹 彬憲 主任研究員は、理化学研究所 矢﨑 裕規 特別研究員・筑波大学 稲垣 祐司 教授らと共同で、分類不明であった原生生物などの大規模分子系統解析を行い、真核生物の新たな巨大生物群を提唱しました。
 真核生物は細胞内に核やミトコンドリアなどの構造を有する生物で、我々ヒト(=多細胞性の真核生物)などを含む超巨大生物群です。真核生物はおよそ21億年前に誕生し、多様な系統へと枝分かれ進化してきました。この真核生物の進化、特に初期にどのようなグループが誕生・形成されたのか、については未だ多くの謎が残っており、それを解明するためのアプローチの1つとして真核生物進化の比較的初期に独立・分岐した生物に着目した研究が行われています。
 本研究では、2012年に新種記載されながらも真核生物内での系統学的位置がわかっておらず、真核生物の初期進化に関する重要な知見を持つと考えられていたMicroheliella marisに着目し、その系統学的位置の解明と近縁系統との関係の理解を目的とした解析を実施しました。
 その結果、M. marisクリプチスタと呼ばれる分類群の派生初期に分岐した近縁種であることが明らかとなり、これらをまとめて新規巨大生物群“パンクリプチスタ”と呼称することを提唱しました。また、M. marisや他の初期分岐系統が持つ系統シグナルを正しく評価し解析することで、これまで様々な知見から単一起源と考えられながらも分子系統学的にはその単系統が復元されていなかった一次植物が、単系統であることも世界で初めて確認しました。
 本研究で示された真核生物の系統分岐関係は、様々な地球環境変動の中で真核生物がどのように分岐し進化してきたのかを理解するための基盤的情報として活用されることが期待されます。
 本成果は、「Open Biology」に4月13日付け(日本時間)で掲載される予定です。

タイトル:The closest lineage of Archaeplastida is revealed by phylogenomics analyses that include Microheliella maris.

著者: 矢﨑 裕規1, 矢吹 彬憲2, 今泉 彩香3, 久米 慶太郎4, 橋本 哲男5, 6, 稲垣 祐司6, 7.

  1. 国立研究開発法人 理化学研究所 数理創造プログラム
  2. 国立研究開発法人 海洋研究開発機構 地球環境部門
  3. 筑波大学 生命環境学群 生物学類
  4. 筑波大学 医学医療系
  5. 筑波大学 生命環境系
  6. 筑波大学 生命環境科学研究科 生物科学専攻
  7. 筑波大学 計算科学研究センター
図:今回の解析で明らかとなった真核生物系統の概要

 

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