浅野 裕樹 硏究員
地球環境研究部門
浅野さんは、地球環境研究部門の研究者です。都市気候と山岳気象、この2つを主な専門分野にしながら、近年は理科教育の研究にも励んでいます。幅広い興味関心を持つ浅野さんは、多分野において、さまざまな手法を用いた研究を行ってきました。今回は、その中で特に暑熱分野の研究に注目します。
(2026.2.19 公開)
City-LESの利用を、誰でももっと簡単に
当センターの日下研究室で開発された都市街区気象モデル「City-LES*」は、都市街区内の気温や風速、表面温度などを詳細に再現することができます。
*LES(Large Eddy Simulation):乱流の数値シミュレーション手法の1つ。
( 参考:https://www.ccs.tsukuba.ac.jp/research-topic-v17/)
図1:City-LESによってシミュレートされた東京駅周辺の地上気温分布(出典:日下研究室)
しかし、図のような現実の街でCity-LESを利用するには、1つのハードルが存在します。それは、シミュレーションを行う上で必要となる都市の三次元モデルの作成です。具体的には、建物などのデータの取得や処理、LESの実行に至るまでに、GIS(地理情報システム:Geographic Information System)の知識と使用経験が求められ、複雑な工程を踏む必要がありました。
City-LESの利用におけるハードルを下げることは、浅野さんが課題と感じてきた部分でした。その解決の糸口となったのが、竹中技術研究所の藤原邦彦さんが開発した、都市の三次元モデルを生成するPythonパッケージ「VoxCity」です。その大きな特徴は、データの自動取得による利便性と初心者でも扱いやすい操作性の高さにあります。VoxCityの活用により、シミュレーションに必要な土地利用や建物データは、クリック操作で簡単に取り出せるようになりました。都市名や地域を選べば、日本だけでなく世界各国の都市においてもデータ取得が可能となります。
図2:VoxCityによるデータ処理のフロー(出典:Fujiwara et al.(2025))
VoxCityは、現在公開ページから誰でも利用することが可能。https://github.com/kunifujiwara/VoxCity
浅野さんが国際会議で藤原さんの発表を聞いたことをきっかけに、その技術をCity-LESにも応用できるのではないかと思い、声をかけたそうです。その結果、両技術を結びつけ、City-LESの利便性を高める共同開発へと発展しました。今までの複雑な手作業が大幅に削減され、より効率的にシミュレーションを行うことが可能となったのです。浅野さんは、引き続き暑熱環境評価の研究に取り組んでおり、この開発をきっかけにCity-LESのさらなるユーザー拡大を期待しています。
シミュレーションから観測まで…多岐に渡るアプローチ
浅野さんは、City-LESなどの数値モデルを用いた研究だけでなく、観測や被験者実験といった、異なる手法での研究も行っています。Asano et al.(2022)では、筑波大学内における被験者実験を通じて、暑い屋外における歩行時間と知的生産性の低下の関係について示しました。実験の結果、被験者の屋外歩行後のテスト正答率は歩く前に比べて3.6%低下しました。また、女性よりも男性で影響が強く見られることや、睡眠時間が短いほど正答率が下がるといった結果も示されています。
図3:筑波大学内での被験者実験の様子(出典:Asano et al.(2022))
プレスリリース:https://www.ccs.tsukuba.ac.jp/release20220222/
後記
取材を通じて、最先端のシミュレーション実験(モデル)から実証的な実験(観測)まで、浅野さんの取り組む研究アプローチの幅広さが印象的でした。複数の軸を持ちながらも、探究心を持ってそれぞれを極めていこうとする浅野さんの今後の活動に、ますます期待が高まります。
(文・広報サポーター 野本実奈)


