ISC High Performance 参加報告(前編)

rep-v2計算科学研究センターの取り組みを紹介する、CCS Reports! 第二弾。今回は、2016年6月19日〜23日にかけて、ドイツ・フランクフルトで開催されたISC High Performance の様子をレポートします。今年12月稼働予定のスーパーコンピュータについてもちょこっとご紹介。後編では、ポスター発表を行ったお二人の研究ミニインタビューもあります!(後編:もうしばらくお待ちください) (2016.7.7)

ISCにブース出展 目玉は12月稼働予定のスパコン!

 ISC (International Supercomputing Conference) は、スーパーコンピュータ(スパコン)とスパコンを使った計算科学の国際学会で、毎年決まって6月にヨーロッパで開催されます(2015年は7月開催)。この分野では、毎年11月にアメリカで開催される”SC”に次ぐ、二番目に大きなイベント。今年の参加者数は3,000人を超え、出展ブース数は約150とのこと。
世界のスパコン性能ランキングであるTOP500や、省エネ性能ランキングGreen500が発表される場でもあります。TOP500は、1993年から毎年6月のISCと11月のSCで発表されてきており、今回のISCでは、第47回目のTOP500リストが公表されました。

rep2-1[写真:ISCエキシビション会場]

 筑波大学計算科学研究センター(CCS)では、毎年アメリカで開催される“SC” (スーパーコンピュータ分野の世界最大の学会)にブースを出展しています。今年は、ヨーロッパ版SCとも言われるISCに東大と合同でブースを出展しました。もう少し正確に言うと、CCSと東京大学情報基盤センター(ITC)が共同で運営する「最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)」という組織としてのブース出展です。(JCAHPCの詳細はこちら

rep2-2 [写真:JCAHPCのブースの様子]

 わたしたちのブースの今回の目玉は、2016年12月に稼働開始するスーパーコンピュータOakforest-PACS(OFP)です。OFPは、JCAHPCが調達・運用をするスパコンで、ピーク性能は25PFLOPS(ペタフロップス)*1。現在日本で最も速いスパコン「京」が10.62PFLOSなので、OFPが稼働を開始すれば、稼働時点で国内最高性能のシステムになると見込まれています。ISC High Performanceでは、このOFPの性能に関するポスターと、実際にOFPに搭載される予定のノード*2の展示を行いました。

*1ペタフロップス:計算機の処理性能の指標として、1秒間に実行可能な浮動小数点数演算回数(実数演算回数)が用いられる。これをFLOPS(Floating-point Operations Per Second)という。PFLOPS (Peta FLOPS, ペタフロップス) = 1015FLOPSであり、1PFLOPSは一秒間に千兆回の計算ができることを意味する。
*2ノード:現在のスーパーコンピュータは、たくさんのコンピュータを高速ネットワークで繋いだ“並列型”が主流。1ノードが1コンピュータに相当。

rep2-3 [写真:OFPのノード]

 上の写真がOFPのノードです。これ1つで、一般的なパソコンの約300倍の計算性能があります。OFPにはこのノードがなんと8,208台も搭載されます。

高密度に配した最新の超高性能メニーコア型プロセッサ&水冷システム

OFPの核とも言えるプロセッサには、米国インテル・コーポレーション社が開発した最新のメニーコア型プロセッサ、次世代 Intel Xeon Phi™ (開発コード名:Knights Landing)が採用されています。このことが、ISC参加者の関心を大いに引きつけていました。というのも、この“最新”のプロセッサ、ISC期間中にその正確な性能情報がようやく公開になったくらい新しいんです。私たちのブースのポスターも、情報解禁になってからデータを追加したほど。

rep2-4 [写真:情報解禁後に追加で貼られたデータ。あとから貼ってありますが、印刷ミスではありません!]

 最新のプロセッサを搭載したOFPがどんな作りになっているのか、どんな研究に使われるのか、参加者からの質問は尽きることがありません。中には、今回展示したOFPのノードを見て、その小ささに驚く方も。実際、非常に高密度に設計されていることもOFPの特徴の1つなのです。

rep2-5rep2-6rep2-7rep2-8 [様々な国の研究者や企業関係者が、OFPの詳しい説明を聞くために足を止めます。]

 ところで、今こうしてネットを見ている皆さんのパソコンは、使っているうちに熱くなること、ありませんか? スパコンも、非常に高密度に回路が組まれているため、電源を入れるととても熱くなります。スパコンを冷やすためには、大型の空調システムを入れたり水を循環させたり、非電導性の液体に基板ごと浸けてしまったりと、様々な冷却方法が使われますが、OFPでは水を循環させてCPUを冷やすシステムと冷気を通してメモリなどを冷やすシステムの二つを採用しています。ノードの写真に見える黒くて太い二本のチューブが、水の循環用パイプ。写真の左側で、二本のチューブそれぞれに青と赤のラインが入っているのがわかるでしょうか?

rep2-3 [写真:OFPのノード(上と同じ画像です)]

 青いラインの入った方から水が入り、右側の丸いオレンジ色のロゴが入ったあたりで熱を受け取り、赤いラインの入ったチューブから熱くなった水が出て行く仕組みです。まさに、スパコンの心臓部のための“動脈・静脈”のようですよね。

今回のISCでは、3日間に亘るエキシビションの期間中に100人を超える方がJCAHPCのブースに立ち寄ってくれました。今年の12月には本格的に稼働開始するOFP。この最新スパコンからどんな研究成果がでてくるのか、これからも目が離せません! CCS広報でもOFP関連の記事を予定していますので、どうぞお楽しみに。

HPC in Asia

ISCで行われるのはエキシビションだけではありません。多くの学会で行われるような研究発表・ポスター発表も含め、様々な情報交流の場が設けられています。
その1つに、HPC in Asia (ハイパフォーマンス・コンピューティング in アジア)という集まりがあります。アジアで行われているスパコンの研究や取り組みを世界の人々に紹介し、情報交換や共同研究のきっかけ作りなどを行う会合で、今年で6年目を迎えます。CCSの朴教授は、このHPC in Asia で6年間(最初からずっと!)、主催者を務めてきました。今年でその大役に一区切りをつけ、次のオーガナイザーにバトンタッチするとのこと。お疲れ様です。

rep2-9 [写真:開会の挨拶をする朴教授]

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[写真:HPC in Asia セッション会場とポスター発表会場]

 HPC in Asia では、オーストラリア、日本、韓国、台湾、中国、シンガポール、インド(発表順)のスパコンの状況について、各国の研究者から紹介がありました。今年のTop500の一位にランクインした「神威 太湖之光(中国)」や、韓国が次に導入予定のスパコンについて、シンガポールに新設された国立スーパーコンピューティング・センターについて、日本のポスト「京」コンピュータや先述のOFPについてなど、興味深い話題が次々紹介され、参加者はスライドの写真を撮ったりメモを取ったりと、熱心に聞き入っていました。

所変わってHPC in Asia のポスター会場では、コーヒー片手にポスターを介してあちこちで議論が飛び交っていました。どんな研究の話をしていたのか、計算科学研究センターからISCに参加した藤田研究員と廣川さん(博士後期課程1年)にミニインタビューをしてきたので、後編ではインタビューを中心に研究の内容をお届けします!(後編:もうしばらくお待ちください)

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[写真:ポスターの説明をする藤田研究員と博士課程1年の廣川さん]

取材協力

  • ・朴泰祐(ぼく たいすけ)教授
  • ・高橋大介(たかはし だいすけ)教授
  • ・藤田典久(ふじた のりひさ)研究員
  • ・廣川祐太(ひろかわ ゆうた)さん(博士課程1年)

後編はこちらからどうぞ

「ISC High Performance 参加報告(後編)HA-PACS/TCA と COMA それぞれの研究を紹介します!」

関連リンク

ISC2016 
最先端HPC基盤施設(JCAHPC)
プレスリリース「最先端共同HPC基盤施設の活動を開始 筑波大学と東京大学によるスーパーコンピュータ共同開発、共同運営・管理」
プレスリリース「最先端共同HPC基盤施設がスーパーコンピュータ システム(ピーク性能25PFLOPS)の導入を決定 ―次世代メニーコア型プロセッサを搭載―」