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最も基本的な素粒子であるクォークは、通常の温度では陽子や中性子などのハドロンの中に閉じこめられており、有限のエネルギーでクォークを単離させることはできない。しかしビッグバン直後の高温宇宙(約1兆度以上、宇宙の創生から数十マイクロ秒以内)では、真空そのものが変化し、クォークやグルオンがハドロンから開放されたプラズマ状態となっているだろうと考えられている。この現象の理解は初期宇宙の進化や重イオン同志の衝突を調べるうえで重要だが、相互作用が極めて強いため、信頼できる予言の多くは、空間を格子点で代表させた格子ゲージ理論を用いた数値的研究によってのみ得られている。
上の動画は、高温の平衡状態からゆっくり温度を下げ、また元の温度まで上げていった場合に、系が高温のクォーク・グルオン・プラズマ状態から低温のハドロン状態に移行し、再びクォーク・グルオン・プラズマ状態に戻る様子を示す。ここでは相転移温度の上下約100億度の範囲を動かす。空間を120×90×10の格子で代表させ、温度軸方向の格子サイズは4に固定してある。 系の状態はポリアコフ・ループと呼ばれる量の期待値によって調べられる。これはクォークを単離させる為に要求されるエネルギーを計る量で、その大きさを、赤・黄・白・青・緑・紫・黒で示す。赤はクォークが自由化した状態で、色が黒くなる程クォークの単離エネルギーが大きくなる。 最初の高温の状態では殆ど全域で赤のクォーク・グルオン・プラズマ状態であるが、温度を下げるにつれ、黒のハドロン状態の領域が大きくなる。相転移点近傍(動画写真の6枚目)で両者の割合が急激な変化を示す。後半の再び温度を上げた後のプラズマ状態に見られる泡のような構造は、この系が高温側に3種類の真空を持ちうる事と対応している。急に冷やされた金属が単結晶にならずに方向の異る小さな結晶のくっつき合ったものとなる現象と同じで、対称性の自発的破れを伴う相転移に共通した特長である。実際、各々の点がどの真空に属するか区別する量を調べてみると、泡の表面で別の真空に移り変わっている事が確認される。これは1辺が100というような大きな格子でシミュレーションをして初めて観測できた現象である。 |